「いつもどおりに出勤して仕事をしていると、“なんだか唇と手先が痺れるな”と感じた。“なんだろう”と思いながらもパソコンに入力していると、今度は頭が痛くなって来た。次第に骨が痛くなり、耳を箸で突かれたような痛さを感じてきた。“これはやばくないか?”と思った時、目の前がチカチカとして暗くなり、脱力して倒れてしまった」。
【映像】「香害」って何?倒れても"病名"わからず募る不安...
FMラジオなどで活動する上岡みやえさんは8年前のある日、急激な体調の悪化を経験した。原因は、職場で隣の席の男性がつけていた香水に含まれていた化学物質。柔軟剤や洗剤などに使われる“香り成分”によって身体が反応する化学物質過敏症の一種「香害」になってしまっていたのだ。頭痛や咳、鼻の痛み、めまい、吐き気などの症状が出て、重くなると寝込んだり、仕事や外出ができなくなったりすることもあるという。
「最初は原因が分からなかったが、男性に近づくと具合が悪くなるということで、香水かなと思うようになった。それまでにテレビ番組で化学物質過敏症という病気の特集で見たことがあって、“これだけはなりたくない”と心に引っかかっていたので、“まさか自分が”と思った。前日まではなんともなかったのに、それ以降はダメだった」。
住まいのある沖縄県では診断書を書いてもらえる病院が見つからず、しばらく放置してしまっていたという上岡さん。しかし次第に症状が悪化、タクシーに5分ほど乗っているだけで、何らかの化学物質に反応して倒れてしまったリ、パーマをかけた直後の人が入室してきただけで倒れてしまったりしたこともあったという。
「自然由来の成分は大丈夫だが、アロマの中には有害物質から抽出しているものあるので、“自然”とパッケージに書かれていたとしてもダメなこともある。ただ、隣の席の男性に“香水をやめてほしい”とは言えなかった。それでも元気に仕事をしていた私が苦しんでいる様子を見て“おかしい”ということになり、上司や同僚がすごく気を使ってくれて、話を聞いてくれた。“実は…”と説明したところ、男性に働きかけてくれて事なきを得た。本当に感謝している」。
ところが職場のビルで工事が行われた時には倒れたはずみで背中を打ち付け、退職して治療に専念せざるを得なくなってしまった。しかしそれが奏功したのか、元気を取り戻すことができたのだという。「なかなか良くならない病気だと言われているが、私自身は2年前にほぼ完治した。ただ、香りの成分はものすごく小さいものなので、マスクをしていても吸収されてしまうし、皮膚から吸収されてしまうことで症状がでる場合もある。今は環境汚染から身を守る暮らし方をネットやラジオ、講演会などで伝え続けている」。
こうした「香害」による健康被害は日本でも近年クローズアップされており、2019年には社民党の福島みずほ党首が参院消費者問題特別委員会で「私の周りにもこの香りの害、化学物質の問題で本当に困っている人、深刻な被害を訴えている人がたくさんいる」と指摘。
これに対し消費者庁担当者は「全国消費者センターから寄せられる相談情報や情報提供を注視し、必要に応じて対応を検討してまいりたいと考えている」と答弁。今年8月には消費者庁、文部科学省、厚生労働省など5つの省庁が連名でポスターを作成、注意喚起を行っている。
自身も同様の症状に苦しんだ経験から「香害外来」を開設し、相談に応じている典子エンジェルクリニックの舩越典子医師によると、「香水などの匂いが“臭い”“嫌だ”といったこととは関係がないということをご理解いただきたい」と訴える。
「花粉症と似ているが、病気のメカニズムとしては全く違う。ただ、人それぞれ持っている一定の許容量を超えると急に発症するというところは似ていて、それまでは全く気が付かず、症状もない。お風呂にお湯を溜めているときに、溢れて初めて“溢れた”と気づくのと同じで、そこからは微量でも症状が出てしまうことが続く。(合成香料を閉じ込めた)マイクロカプセルで発症する患者も多く、そうしたマイクロカプセルは“無香料”でない限り、ほとんどの製品に含まれているし、消臭成分のある製品も、むしろ香りは感じないものの強い症状が出てしまうこともある。私の見たところ、軽症の方や自身では気づいていない潜在患者の方も含めると全人口の1割ほどが該当するのではないか」。
香害について初めて知ったというAKB48の柏木由紀は「握手会をしていると、ファンの方が手につけていた香水の匂いが私にも移る。その後、別のファンの方と握手した時に、私の匂いだと思われたことがあって、それがきっかけで香水には気をつけなきゃと思った。私自身は香水をつけていないが、それでも洗剤や柔軟剤は使っているので、こういう症状があることを知って驚いた」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
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