最後まで泣きっぱなしの大会が、ついに完結した。女流による早指し団体戦「第2回女流ABEMAトーナメント」の本戦トーナメント決勝、チーム西山とチーム加藤の対戦が12月6日に放送された。チーム西山の山口恵梨子女流二段は、3局指して悔しい全敗。それでもチームを盛り上げるべく、決勝でも応援グッズを持ち込み、仲間の対局を一生懸命に応援した。少しでも仲間の力になろうと、対局前から気持ちが昂り涙する様子にファンからは「ずっと泣いてるw」「泣いて強くなるならどんどん泣け」といった声も寄せられるほど。仲間の絆を感じて戦い続けた“泣き虫えりりん”の戦いは、悔しさと仲間への愛情で幕を下ろした。
放送対局や各種イベントでは明るく振る舞い、また絶妙な軽さを持つトークでも人気の女流棋士。ただ、この大会は女流棋士が感じる対局前のプレッシャー、さらに未体験の団体戦による責任の重さを一番強く表現する者となった。「チームが本当に大好きなので、自分の役目を果たしたいです」と、リーダーの西山朋佳女流三冠、上田初美女流四段に続き、1つでも勝利を挙げて全員で優勝に近づきたいと誓って決勝に臨んだ。その感情は、自身の初戦となった第4局の前に、早くも最初のピークを迎え「朋佳ちゃんの笑顔を見るために頑張る」とコメントすると、既に目元は涙でいっぱいになった。
この第4局、野原未蘭女流初段を相手に、詰み筋があったところを勝ち切れず、痛い惜敗となった。すると、その悔しさを原動力に、第5局で強気に連投。ただ、ここでも香川愛生女流四段に途中からペースを握られると、そのまま巻き返しがきかずに完敗し、自身2連敗になった。悔しさと申し訳なさを引きずって第6局を見守っていたが、ここでリーダー西山女流三冠が踏ん張り、一時はスコアを3-3のタイに戻す勝利を挙げると、うれしさの笑いと泣きが混ざった声を出し、上田女流四段から「1日、何回泣くんですか」と突っ込まれるほどに。それだけこの大会、さらにはチームメイトへの思いが強い証しが、何度も「泣く」という表現で出続けた。
スコア3-3で迎えた第7局。自身3局目で、なんとか初勝利を手にしたいという対局前には、もう感情が抑えきれなかった。対戦相手を告げられると「ダメだぁ。次、野原さんって名前だけで涙出てきた。胃が本気でやばい。落ち着けてからやります」とまで語ると、ファンからは「自信持って」「涙腺壊れてるw」「誰が来ても泣くw」といった声も。なんとか気持ちを落ち着けて盤には向かったが、健闘むなしく敗れ、決勝では個人3連敗となった。最終局、上田女流四段が加藤桃子清麗に敗れ、チームの敗退が決まった瞬間、「ごめんね、朋佳ちゃん…。本当に申し訳ない」と、西山女流三冠に詫びたのも、心の底からの申し訳なさだっただろう。
大会前まで、ろくに話したこともなかった西山女流三冠に対し、大会期間中に「恋しそうです」とまで言うようになった山口女流二段。もともと親交がある上田女流四段には弱気になったところで発破をかけられ、なんとかチームに貢献したいと監督である藤井猛九段とは作戦を練り続け、練習も重ねた。「藤井先生に師匠かなっていうぐらい教えてもらいました。西山さんもフォローをしてくださっていて、監督が2人いるみたいな感じでやってきた。本当に感謝していますし、みんなが大好きになりました」。決勝は、優勝を果たしてのうれし涙で終えることはできなかったが、この先も続く女流棋士人生において、山口女流二段は大切な仲間と、貴重な経験という2つの大きなものを手に入れた。
◆第2回女流ABEMAトーナメント 第1回は個人戦として開催され、第2回から団体戦に。ドラフト会議で6人のリーダー棋士が2人ずつ指名し、3人1組のチームを作る。各チームには監督棋士がつき、対局の合間にアドバイスをもらうことができる。3チームずつ2つのリーグに分かれ総当たり戦を行い、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。チームの対戦は予選、本戦通じて、5本先取の9本勝負で行われる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)