羨望と嫉妬が紡ぐ「タワマン文学」 Twitterで描かれる人間模様に「一般人が楽しめるフィクション」
【映像】「タワマン文学」大賞の作品
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「『私、とても幸せ』
45階の自宅から見える夜景。婚約者の由香はこの眺めがお気に入りだ」

 小説のような書き出しから始まるこの文章。タワーマンションの住人たちの見栄と葛藤を描いた“タワマン文学”と呼ばれ、Twitter上で静かなブームとなっている。

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 今では、大手メディアが評論家に真面目に論評させるほど注目が集まっているタワマン文学。良い意味でも悪い意味でも人々の心をザワつかせるため、ネットでは「タワマン文学は感じ悪ければ悪いほどいいな」「タワマン文学は、一般人が楽しめるようにチューニングされたフィクション」などの声が上がっている。

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 このタワマン文学を仕掛けたのは、Twitter上で不動産に関する話題を取り上げる人々によって結成された団体「全国宅地建物取引ツイッタラー協会」だ。

「『一般的にはタワマンって憧れの存在なのかな』と思っているんですが、その憧れの存在を妬む一般庶民の感情と、そのローンを払っていくことが大変だという住人(の感情)とのギャップですね。それを面白おかしく文章として表現していく方が非常に多く現れていまして、『これはまとめてみたら面白いんじゃないか』と思い、『タワマン文学大賞』という形で募集させていただきました」(全国宅地建物取引ツイッタラー協会 公式キャラクター・グリップ君)

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 タワマンに住んでいる人や住んでいない人、不動産関係者など、投稿者の立場はさまざま。タワマンに住んでいない人はタワマン住人を羨み、タワマン住人はタワマン住人とマウントの取り合いに励むといった人間模様が描かれている。

 今回開催された「タワマン文学大賞」では某出版社の副編集長が審査員を務め、ハッシュタグを付けて投稿された作品の中から優れた作品を決定。Twitterの1投稿に収まる140字以内で描かれたものから、短編小説のような物語まで約1500作品が集まる中、ヘタレ社長(@hetare808ceo)さんの作品が大賞に選ばれた。

 タワマン最上階に住む父・賢二と、小学生の娘の心境を描いた同作品は、「もうこのマンションには住みたくない」という衝撃的な一言から始まり、11このツイートで構成されている。“タワマンの最上階”という最高の環境を与え、スクールバスでの送迎もある“タワマンキッズ”として娘を育てるも、実は高い場所が苦手で体調面に問題を抱えていたというストーリーだ。

 「タワマンに恍惚し高揚感に包まれた日々を送っているのは自分一人だけだった」――。その事実を思い知った賢二は娘のために地方の家を用意し、人生について考え直すことができたという結末になっている。簡潔で無駄のない文体と構成になっていて、非常に読みやすくテンポがいい点が受賞理由となったようだ。

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 このタワマン文学について、ニュース番組『ABEMAヒルズ』に出演した公共政策に詳しい東京工業大学准教授の社会学者・西田亮介氏は「Twitterらしい。限られた文章の中で羨望と嫉妬と若干のイマジネーションで文学になっている」と評価している。(『ABEMAヒルズ』より)

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