“生乳5000トン廃棄”問題 過去の“バター不足”に対する増産投資の効果も…さらに新型コロナ&季節要因のダブルパンチ
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 年末年始、生乳が大量に余り、5000トンもの「生乳」が廃棄されてしまうかもしれない。

 業界団体の「Jミルク」によると、牛乳や乳製品の原料となる生乳がかつてない規模で余っているという。新型コロナの影響で業務用での落ち込みが大きい状態が続いたことと、年末年始は学校給食がなくなるダブルパンチに見舞われている。

【映像】2006年3月の生乳廃棄の様子(1:30~)

 こうした生乳が余るという事態は15年前にも起きていた。2006年、牛乳の消費が低迷するなどし、約1000トンもの生乳が廃棄されたというが、今回はその5倍。この危機的状況の打開策はあるのか。テレビ朝日経済部の梅田景記者が伝える。

Q.そもそも「生乳」とは?
 牛やヤギの乳のうち、搾ったままで、加熱殺菌や加工などの処理をなんら行っていないもの。つまり、搾乳しただけの乳のことを「生乳」という。

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Q.なぜ年末年始に廃棄の問題が?
 年末年始は1年のうちで一番牛乳が売れない時期にあたるが、需要が落ちている一方で、生産量が上がっていることが要因になっている。

 需要の落ち込みというのは、新型コロナの影響で飲食店が時短営業や客の人数を抑えたりしていることで、業務用の牛乳やチーズなどの需要が減っている。また、暑い夏には牛乳を飲む人が増えるが、寒い冬には飲む人が減る。在宅勤務によってオフィスでの需要が減っていることや、これからも続くことだが人口減少の問題もある。

 生産量の増加というのは、6年ほど前にバター不足で増産に取り組んできた効果がここ数年で現れている。牛を育てる技術だったり、搾乳の機械も発展していて、生産量が増えている。乳牛は気温が低いとお乳の出がよくなるが、今年は夏や秋が比較的涼しかったことから、生乳の生産量が去年よりも増えている。

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Q.需要と供給にギャップがあるということだが、捨てないといけないもの?
 生乳は毎日搾乳されていて、新鮮さが大事。腐敗しやすいが、冷凍することもできないというのが現状としてある。じゃあチーズやバターに加工すればいいのではないかという意見もあると思うが、工場などをフルに稼働させても5000トン余ってしまうという可能性がある。加工品も在庫がたくさんあって、保存するにもお金がかかるという問題も出てきている。

Q.廃棄するのであれば、安くして販売量を増やすことはできない?
 たくさん生産しようと投資をしている段階だったので、安く売ると採算がとれない。特に今年はガソリンが高騰してボイラーに使う灯油代などが高騰していたり、飼料が値上がりしたりしているので経営が例年より厳しい。酪農家の負担が大きく、いつもよりたくさん売らない状況になっている。さらに、オーツミルクやアーモンドミルクなどの“第3のミルク”と呼ばれるものが販売されるようになってきたので、選択肢が増えていることも要因になっている。

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Q.業界などの対策は?
 業界団体は、「1日1リットル運動」をすべての人に呼びかけていたり、コロナで学校が休校した時には、北海道の鈴木知事が「牛乳を飲みましょう」と呼びかけをしていたりした。「牛乳を飲む」というのが一番の対策ではある。

 また、Jミルクのホームページでは牛乳を使った鍋のレシピを紹介していたり、JAも「消費拡大の一助」として牛乳を50%以上使ったミルクティーを販売している。これは農水省で販売していて、今日買おうとしたら買えず、Twitterでは2万リツイート、2.5万いいねと話題になっている。プロモーションなども行っているが、酪農家のお金の面などの問題があり、国の対策が急がれる。(ABEMA/『アベマ倍速ニュース』より)

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