「第1回ABEMA師弟トーナメント」予選Aリーグ1位決定戦、チーム深浦とチーム畠山の対戦が12月31日に放送され、畠山鎮八段(52)と斎藤慎太郎八段(28)のチーム畠山が、フルセットの末スコア3-2で勝利、本戦出場一番乗りを決めた。師匠の畠山八段に惜敗が続く中、順位戦A級棋士でもある斎藤八段が、全ての白星を稼ぐ個人3連勝で、“師匠孝行”を果たした。
熱い思いを胸に抱く師匠と、風を背に受けるように伸びやかな弟子。まさにチーム名のように、戦うごとに2人の「熱風」が強さを増していった。第1局、畠山八段が先陣を切ると、チーム深浦の若手ホープ・佐々木大地五段(26)と相対した。先手番から角換わりの定跡形で進むと、序盤からどんどんと攻めに出たが、飛車・角と大駒の動きを封じられ敗戦。ただ落ち込む間もないのが、今回の5本勝負というルール。第3局でまたも佐々木五段とぶつかると、同じく先手番から今度は「30年以上前の将棋」という、オールドスタイルの相掛かりで挑み、混戦模様に。惜しくも150手で敗れたものの「次指せば、もっといい内容が出せる気がする」と強い言葉が出るほど大熱戦を繰り広げた。
師匠の奮闘に、弟子の心も熱くなった。タイトル経験、名人挑戦経験もある斎藤八段は第2局、第4局で深浦康市九段(49)と対戦。第2局は敗色濃厚というぎりぎりのところまで追い詰められながら「集中して最後まで粘ろうと。こちらの玉がほとんど詰みまで行っていましたが、相手の見えない手をできるだけ選んで、逆転を目指した」と諦めない姿勢が逆転を呼び、114手で勝利した。またカド番で迎えた第4局は、珍しい形の序盤になったが、超早指しの中でも慌てずに対応し、一度握ったペースを渡さない完勝譜。スコア2-2のフルセットに持ち込んだ。
最終第5局を師匠から託されると、さらに気合が入った。同世代の佐々木五段は、この一局まで予選4局で全勝。斎藤八段も3戦全勝という全勝対決になると、相掛かりで始まった一局は、佐々木五段がペースを握ったかに見えたが、じっと我慢した斎藤八段が一気に体を入れ替えての逆転勝ち。「しんどい戦いでしたが、集中力を切らさずにできた。師匠に褒めてもらえそうな結果になってよかったです」と、ホッとした笑みがこぼれた。
戦いを振り返った畠山八段は「予想通り、弟子に助けられました」と感謝すると、斎藤八段も「追い込まれると集中できるタイプなので、それも自分の戦い方なのかな」と、常にリードされる展開から巻き返しての勝利に、手応えを感じていた。1回戦のストレート勝ちに、1位決定戦のフルセット。2つの勝ち方を覚えたチーム畠山が、絆をさらに深めて初代の師弟チャンピオンを目指して、本戦への準備を整えた。
◆第1回ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)