目にも止まらぬ圧倒的スピードで、1分間に296回。ギネスにも登録された前人未踏の記録とは、「指パッチン」だ。
「すごく多くの人を喜ばせる力があるんだなと。この指も惜しくない」
フォロワー数230万人以上の人気インフルエンサー、指パッチン歴10年の「指男」さん。“パッチンドリーム”で掴み取った自分を信じる力とは。多忙を極める指男さんに『ABEMA Morning』は迫った。
一度は誰しもやろうとしたことがあるであろう、身近な指パッチン。親指と中指をこすり合わせ、指だけで音を出すものと思われがちだが、“指男スタイル”は異なる。
「全力でやると、(全身で)ってなるんで、(腕が)こうなると、足もこうなるじゃないですか。それがもう運動になるので。全身を使わないと速くならないので。体のしなりを利用して速くなる感じって、僕は勝手に思ってます」
「高速で指を鳴らすジャンルは未開の地」。そんな閃きからこの技を編み出した。指パッチンを始めたきっかけは中学1年生の時。人気バンド「サカナクション」に影響を受け、何か手軽にはじめられる楽器はないかと考えた末にたどり着いたのが、この指パッチンだった。
しかし、当初は周囲から隠れて指を鳴らしていたという。
「正直、家族から(指パッチンが)よく思われてないんですよ。やっぱうるさいんで。これが破裂音じゃないですか。破裂音って家だと響くので。『もうやめてくれ』『指パッチンやるな』と言われちゃって。こっそり部屋の隅っこの方でやっていたという」
Twitterで初めて上げた「指パッチン動画」は、1万6000件もリツイートされ、その“価値”を証明。超人気YouTuberのはじめしゃちょーらとコラボするなど、人気インフルエンサーへと成長した。
しかし、時にはよだれをたらしながら、白目をむき、指を鳴らし続けなければならない。「やめたい」と思ってしまうほど自らを追い込む中で、やはり相棒である指のケアは欠かせないようだ。
「毎日ハンドクリームは塗って、冬場は絶対手袋して。時には手袋して寝る時もありますね。冬が一番嫌なんですよね。指パッチンすると、すぐぱっくり(指が)割れちゃうので。だから梅雨が一番いいですね。湿度がいいので、僕のピークは梅雨です」
指パッチンの努力が実を結んだ瞬間もある。それは2019年、憧れの人と出会いだった。
「サカナクションの方(山口一郎さん)と実際にお会いさせていただいて。やっぱり発信することって何かにつながるんだなって。(本人に会って)憧れすぎて、ちょっと心臓も死ぬほど高ぶってたし、その時の指パッチンが一番調子悪かったです、手が汗ばみすぎて。汗ばんじゃうと指パッチン音鳴らないので。緊張してあんま音ならなかったのがちょっと残念な、そこはもう一回リベンジしたいなと思います」
楽器に憧れた少年は自分を信じ、発信を続けることで人生そのものも180度変化させた。
「指男になる前はなんのとりえもないメガネ陰キャ、手癖の悪い陰キャ。こんなはっきりとものがしゃべれなかったし、全部自信がなかった。自己肯定感が極端に低くて。でも、発信をして、再生していただいて、反応をいただいて、すごい方とコラボさせていただいてを徐々に積み重ねていくことによって、大げさな言い方ですけど『この世に僕がいてもいいんだ』というのが、やっと4、5年でわかってきた。そういう意味では、指男というか指パッチンに助けられたことは計り知れないし、『人生が180度変わった』という言い方でも全然大げさじゃないのかなと」
指男伝説。まだまだ躍進は続きそうだ。
「去年はすごいアーティストの方とコラボさせてもらって。ナオト・インティライミさんとか、DREAMS COME TRUEの中村正人さんとか、Novelbrightの竹中雄大さんとか、そうそうたる方と組ませていただいたので。今年はもっとより輪を広げたいというのと、オリジナル曲を出したいですね。指パッチンの音を使った、僕の作詞作曲を今年出せたら楽しいなと思います」
全身を使う指パッチンは何歳まで続けるのだろうか。
「骨折れても、死ぬまでやると思いますね、僕にとってのライフワークだと思っているので、やるしかないなと」
ちなみに、指パッチンをきれいに鳴らすコツについて聞いてみると、一番意識しているのは「あまり力を入れないこと」だという。「力みすぎちゃうと逆に音って鳴らないんですよ、指パッチンって。指パッチンの音の鳴る構造としては、(中指と手のひらが)弾いた音が(薬指と小指の)空間を通って反響した音が僕らの耳に届いている仕組みなので。僕は極力、手首のスナップを効かせて、リラックスした状態でやってます」と明かした。(『ABEMA Morning』より)