メタバースvsユニバース…新たな対立の時代、“PV稼ぎ”なテレビの討論番組に価値はない? ひろゆき&成田悠輔&宮台真司と考える
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様々なテーマについて問題解決の糸口を探し、相互理解を目指して議論を重ねてきた『ABAMA Prime』。しかし、そうしたメディアの姿勢そのものが「対立」や「分断」を煽っているとの意見もある。

大晦日、番組では社会学者で東京都立大学の宮台真司教授、経済学者でイェール大学の成田悠輔助教授、そして2ちゃんねる創設者のひろゆき氏らを招き、約1時間にわたって議論した。

【映像】「劣化した議論はひろゆきのせい」成田悠輔&宮台真司と考える

■「インターネットが分断を広げた」という議論は正しくない

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宮台:まず、分断が良いのか悪いのか、という議論はくだらない。理由は単純で、国民国家はどの道、分断されていくのが当たり前だからだ。国民国家というのは傭兵ではなく国民兵で戦うために作られた、150年強の歴史しかない“戦闘マシーン”なので、戦争が無くなれば、基本的には国民の分断が進んでいくものだ。2005年の小泉郵政選挙だって、そういうやり方でしょ?ただ、内部に敵を作れば動員はできるが国内は分断されるし、価値観や規範はともかく、国民国家が統合されることはもうないんだ、という事実を踏まえる必要はある。

平石直之(司会進行、テレビ朝日アナウンサー):戦争が良いとは思わないが、たしかに共通の敵が見つかれば味方の団結に繋がるというのは、分かりやすい考え方だ。

成田:「分断は良くないこと」みたいな決まり文句も良くない。例えば「多様性」が良いこととされているが、考え方が多様だというのは、分断そのものではないか。だから「分断をどう解消すれば良いのか」みたい議論も、思考停止だ。ぶっちゃけて言うと、考え方の違う人たちが違うメディア、違うチャンネル、番組を見て、違う人と話しているのが問題なのに、個別のメディアやチャンネル、番組の中でいくら議論しているフリをしたところで、分断を広げることもできなければ、縮めることもできないと思う。

宮台:「インターネットが分断を広げた」という議論も、実はあまり正しくない。1980年代以降、「新住民化」、つまり土地に縁がない人間たちによる公園の遊具撤去などに始まる、分断を進めるようなとんでもない施策が実行されてきた。つまり社会はインターネットの出現に先立って分断されていて、それが加速したというだけだ。

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佐々木航弥(映画監督・映像ディレクター):事実は常に多面的であって、立場によって見方や意見も違ってくる。民主主義国家である以上、ある程度の分断があることは当たり前だと思う。問題は、人を傷つけたり、差別の扇動をしないよう、正しく分断することが大事だと思う。

郭晃彰(『ABEMA Prime』チーフ・プロデューサー):話すからこそ違いが分かるし、違いがあるからこそ話す意味があると思う。確かに成田さんがおっしゃったように、そもそも会話が成立してない状態がメディアの中にもある。だからアベプラ(ABEMA Prime)ぐらいは、意見が違っても会って話せば何とかなるじゃん、みたいなことをやりたいと思っている。

ひろゆき:でも、僕がフェミニストの方々と話したら“共演NG”になったじゃないですか(笑)。

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西山里緒(『Business Insider Japan』記者):何度か出演させてもらって、番組のポリシーはよく分かっているつもりだ。ただ今日も出演者が7人もいるし、議論があまり深まらないまま終わっちゃうこともあった。フェミニストの方が出演した企画についても、一人が全員から責められるみたいな構図になっていて、うまく話し合いができないまま不完全燃焼で終わってしまい、視聴者としては「結局なんだったんだ?」みたいな。

平石:それらは全て司会進行役の私のせいだ。1人でも番組のファンを増やして、輪を広げたいと思っているが、本当に私の“ファシリテーション力”のなさだ。批判は甘んじて受け入れる。

宮台:平石さん、番組がまとまろうがまとまるまいが、大勢には全く影響がない。それが僕や成田さんが申し上げていることだ。それから、郭さん、そういう議論には条件がある。国民国家の規模で分断が生じると、民主制を維持しようという努力も無駄になるということだ。51%の多数派が牛耳るようになると、残りの49%が取り残されるということがあるわけだし、それが陰謀説などの土壌になっていくということは僕らも経験的に知っていることだ。

■意味がある議論というのは、合意形成を目指した議論だ

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ひろゆき:宮台先生は昔、状況が悪化することで国民が目覚め、革命を含めてガラッと変わって社会的に良くなるということを期待してなかったか。

宮台氏:今でもそうだ。それを「加速主義」という。元々はローザ・ルクセンブルクという人の思想で、ブントの思想というふうにも言われているが、例えば再配分や平等を推し進めるといったことによって、悪しきものが覆い隠され、残ってしまう。だから徹底的に潰さなければ革命はできないよ、という思想だ。日本の場合、制度を変えたところで既得権益があるし、人間が劣化した状態にある以上、何も変わらない。だから沈みかけた船の座席争いをする。だったら、船ごと沈んじゃえばいい。

若新雄純(慶應義塾大学特任准教授で):田舎では既得権益側が生き残りに必死になった結果、新しいことを仕掛けようとする若者が割を食ってしまい、対立すること自体が無駄なんだ、損なんだ、みたいな雰囲気があると思う。討論番組も同様で、新陳代謝のための議論というよりも、体制側と議論して負けるのは惨め、勝ち残らないとダサい、みたいな雰囲気があって、皆が頑張らないような気がしている。

平石:私としては、負ける人の出ないような番組にしたいと思っているが…。

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宮台:意味がある議論というのは、合意形成を目指した議論だ。それ以外の議論では、動員=モビライゼーションのためにリソースを持っているヤツが勝つことになるので、基本的に意味がない。それはフランス革命前にジャン・ジャック・ルソーも言っていたこと。だから彼は大規模な社会での民主制を否定した。損得勘定で釣られることになるし、釣ることができるのはリソースを持っているやつだけになるからだ。小規模な社会でなければ、皆がどういう状態になっているのかを想像し、気にかけることができない。実際、そういうことが起こってるじゃん。

成田:そういう意味では、そういう“劣化した議論”を作り出したのが90年代の宮台さんであり、今日のひろゆきさんなんじゃないかという気もする(笑)。

宮台:『朝まで生テレビ!』では宮台vs全員になったが(笑)、僕程度のディベートやディスカッションの能力に太刀打ちできないってどういうこと?それはやっぱり他の人間が無能だからでしょ。

成田:今も全く同じことが起きているのは残念な状況だ。そもそも“議論は必要か?”みたいなテーマだが、大げさだと感じる。「分断が」とか、「メディアが」とか言うが、出発点として、特にメディアでの議論は、正直言ってそれほど大したものじゃないないと思う。単にコスパがいいからみんなやっているだけではないか。

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平石:コスパはいいです(笑)

成田:人を集めてしゃべらせればコンテンツができるわけだから。そこに、滑舌がすばらしい宮台先生とかひろゆきさんみたいな人が稀に現れると、木っ端みじんにされる犠牲者が現れる。それでビューが稼げてテレビ局はハッピー、IT企業もハッピー、本人たちもインフルエンサーになれて、お金が稼げてハッピーという構図だ。それ以上でも、それ以下でもないような気がするし、それを作り出したのが宮台さんなんじゃないか(笑)。

平石:私は犠牲者が出ないようにしているんですけどね(笑)

宮台:繰り返すけれど、それは制度や番組の仕組みが悪いのではなくて、出演する人間の無能さが悪いということ。やっぱり、有能な人間たちが議論する姿を見せなければ意味がない。僕が90年代末から朝生への出演拒否を続けているのは、田原総一朗さんの司会の仕方もそうだが、議論を深める方向というよりも、ある種の“バトル”を演出してPVを稼ぐような演出になっているからだ。例えば出演者を3分の1以下に減らせば、平均8分だった1人あたりの発言時間を30分に延ばすことができる。そのぐらいのことをしなければお互いを深く理解することはできないし、合意形成を目指すような深い議論もできない。そういう暇を与えないような番組はすぐにやめた方がいい。

■民主主義化すればするほど、その機能がマイナスになってしまう

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若新:僕は『ABEMA Prime』には初期から出演してきたし、全ての曜日に出てきた。その中では、合意形成とは呼べないかもしれないけど、「学んだな」という感覚があった日もある。それはMC担当が「全然分からない、知らないから教えて」みたいなスタンスの日だった。ところがそれぞれに知識も立場もある日だと、まさに時間いっぱいまで、どちらが押し切るか?みたいなバトルの雰囲気になってしまう。それが面白いと感じる視聴者もいるかもしれないけれど、“焼け野原感”がある。その意味では、単に「知らないことについて学びたい」姿勢があることで、議論もちょっと変わるのかなと。

宮台:民主主義の基本は知恵を集める「知識社会化」にある。ただ、民主主義化すればするほど、その機能がマイナスになってしまうという問題がある。分極化=ポラライゼーションしたり、陰謀論のようなバカな動員に引っかかっていくヤツが増えたりして、今度は民主主義がまともに機能しなくなる。成田さんがおっしゃっていたことと関係するが、今から20年以上前、ピーター・ティールという加速主義、新反動主義の元祖に当たる人物は、まさにそうした理由から「民主主義はダメだ」と主張した。つまり感情の劣化した人間たちがくだらない決定を量産するような民主主義には未来がないと。

ではどうすればいいか、ということで出てきたのが、皆にはメタバースとドラッグ、つまりバーチャルリアリティで幸せになってもらい、基礎的な所得はBI=ベーシックインカムで保障すれば、生きづらい人間たちが生きづらくなくなる。そうなれば政治に関心なんか持たなくなるだろうし、後は俺たちが政治をやってやるよ、と。そういう、“新しい権威主義”が新反動主義=ネオ・リアクションの内実であって、実は中国とよく似ていると思う。

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西山:宮台さんは「日本は加速主義で落ちる所まで落ちろ」とおっしゃっていたと思うが、今おっしゃっていたような未来がそのゴール?

宮台:ゴールの一つではあるが、僕が考えているのは、感情的な絆を取り戻し、民主主義が機能していた時代の地域の共同体を取り戻すということ。ただし、これは日本全体のような規模ではなく、ごく小さなユニットの共同性で、ということだ。

ひろゆき:話を戻すと、実は僕は議論をしているじゃなくて、事実を摘示しようとしているだけ。僕以外の人も「おかしいじゃん」と気づいているはずなのに、誰も突っ込まないから、結果として僕が「こう書いてあるけど、あなたの言うことと違う」と突っ込む形になっている、という感じで、僕の感情とか思いで他人に対して強く言うということもない。それが皆さんには議論をやっているように見えているのかもしれないが、僕が摘示した事実を見て、新しい知識として持って帰ってくれればいいと思ってやっているということ。

郭:ひろゆきさんは「論破しようとしていない」「論破したことがない」とおっしゃるが、自分一人で考えるより、二人以上で会話をした方が頭は良くなるみたいな考え方か。それから、宮台さんの最近の活動を拝見していると、割と少人数で長くお話しされている。そっちの方が議論も深まるという考え方か。これくらいの人数でワーっと議論するのはあまり良くないのか。

ひろゆき:色んな話を聞いた方が、考えがまとまったりする。

宮台:議論の深まりという意味ではそうだ。つい数日前も、津田大介さんの質問に応じるという対話形式の番組をやったが、見ている人が質問者になりきって見ることになるので、頭や心に刻まれやすくなるメリットがある。

それから、ひろゆきさんがおっしゃったように、データを示して「それはあり得ない」と言うのがディスカッションの基本だし、ヨーロッパではほとんど全てのコロナ対策について、何が妥当なのかをデータをベースに議会で決定している。もちろん、データだけでは決まらないので、コロナで死ぬ人をできるだけ減らすことが最大価値であるのかなど、そこに価値観を加味して、何を選ぶのかということを議論する。

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ひろゆき:ただ、宮台先生レベルの人以外がついてこられなくなっちゃうので、番組としてはそうでない人たちも居たほうが、視聴者が理解しやすいと思う。

佐々木:宮台さんの話はとても素晴らしいが、博識でない自分にとっては、人々の生活が見えてこないというか、自分ごととして考えられない。権威ある方々だけで物事が決まってしまうと、あえて“庶民”という言い方をするが、僕らみたいな人たちが付け入る場所がないというか。そうでないと、政治に興味を持つ人は増えないと思う。

宮台:だからこそ、そういうテレビ番組のディスカッションにあまり意味があるとは思っていないし、「こういう所で宮台がこういうふうに言っていたらしい」という伝聞情報が広がるのは本当にくだらないことだ。だから各地に行って、いろんな人たちと車座的に話をする。そうすると、権威があるから聞くということではなくて、主体性を、オーナーシップを獲得した議論になるし、それぞれがどういう事情で議論に参加していて、その帰趨によってどういうダメージを受けたりするのかという想像できる。そういう枠の中で議論をしなければ意味がないということだ。

■オリンピックが終わるまで、“日本すげえ”系の番組ばっかりだった

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若新:共演者のレベルが低いというよりも、学びたいし、その能力もある。そのテーマについても関心があるけれど、詳しくは知らない。そういう人が、相手を責めるためではなく、内容を引き出そうとする質問をする、ということならいいと思う。少なくとも、朝生にはそういう担当の人はいないと思うし、今はみんながスマホを見て知識を増やし、それを誰かにぶつけてみて「論破した」「論破された」みたいになりすぎている。

宮台:それを補完するアイデアが、1950年代にポール・ラザースフェルドという人が提案した「ミドルマン」だ。欧米での熟議やコンセンサス・デシジョン・メイキングにも重要な役割を果たしている。日本で「リサーチャー」というとクイズ番組を作ったりする人みたいになっちゃうんだけど、ヨーロッパのテレビ局ではサイエンティストの言葉を一般人が分かる言葉に翻訳する「リサーチャー」というポジションがある。

若新:「分からない」とか「学びたい」というのは恥ずかしい、みたいな風潮もあるかもしれない。テレビを見ていると、みんな外交問題とか、分かっているかのように喋っているけれど、僕がワイドショーに出始めた頃、思い切って「分からないので」と言ったらTwitterで「分かんないのに出るなよ」「知らないんだったらテレビに出てくるなよ」とさんざん言われた。それでも「教えてください」と言うことでやりやすくなったし、別のコメンテーターが違う視点を入れてくるようになった。

宮台:日本の教育は本当におかしくて、質問ばかりしていると“分からないのはお前だけだ”と言われてしまう。でもヨーロッパの多くの国、アメリカでもそうだが、質問しないヤツは居ないのと同じだと扱われる。

西山:合意形成がゴールじゃないと議論にならないというのは確かにそうだと思うが、こういうメディアで、それが可能なのか。メディアで議論を見せることに意味があるのか。

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宮台:理論的な図式を説明すると、これもポール・ラザースフェルドが「コミュニケーションの二段の流れ仮説」というのを出している。彼は『ピープルズ・チョイス』という本の中で、メディアが人を直撃すると民主主義はメチャクチャになるので、小集団のオピニオンリーダー、つまりミドルマンを介して人々に広がる時にだけ民主制はまともに機能するということを統計的に実証した。

それまでは民主制はうまくいかないぞというのが社会学や政治学の基本だったのが、中流、ミドルクラスが分厚くなる流れと共に民主制にも可能性があるんじゃないかということになっていった。しかしジョージ・W・ブッシュ・ジュニアが大統領になる頃、「南部」「高卒」「白人」の問題が出てきた。つまり、人々がインターネットで政治参加すると民主主義が良くなるというのはあり得ない。クズが参加してきた結果、民主主義が劣化していった。

成田:そういう意味でいうと、議論よりも学びのプロセスの方が重要だということだ。民主主義社会というのは、みんながそこそこ情報を持っていて、しかもその情報をどうやって処理していいかをそこそこ分かっているということを前提にしていると思う。一方で、世の中を動かしている科学技術の複雑性がどんどん増しているのに、そこにメディアと教育が全くついて行けていない。

過去30年間、義務教育で手に入れられる考え方やスキルにどのぐらいの変化が生まれたかを考えれば、驚くぐらい変化がないのが現状だと思うし、メディアも皆が共有しておくべき基本的なファクトみたいなものを提示するという機能を失っていて、それぞれのチャンネルがそれぞれの好みにしたがってファクトを選り好みしたり、オピニオンを提示したりしているのが現状だと思う。

野心的なことを言えば、この壊れてしまった教育とメディアをデジタルメディア、新興メディアがいかに作り変えられるのか。旧来のメディアがやっていたような、ニュースで情報を流すということだけではなく、その情報をどう消化するのかという考え方、OS、道具みたいなものをいかに提示できるのかが重要だし、そのプロセスにもっと光を当てといけない。

平石:たしかに、スタディサプリみたいな教科書的なものを量産することで学べるものは増えたと思う。意見が違う人同士が議論する中で、合意形成に至らなくても何か気づきを得るみたいなスタイルはあり得ないのだろうか。

宮台:あるんだけれど、ひろゆきさんがおっしゃったように、まずデータが不足している。例えば日本の平均所得は2015年に韓国に抜かれたとか、1人当たりのGDPでも2018年に抜かれたとか、そういった経済指標についてマスコミが言い始めたのは、今回のオリンピックが終わってからではないか。それまで、“日本すげえ”系の番組ばっかりだったでしょう?いまだにそんなこと言っているヤツは、頭が腐っているじゃないか。あるいは過去20年間、高校生も大学生も、男女ともに性体験率が半分になっている。重大なことじゃん。そういう問題を放置しておいて、少子化とか言っている。本当に、臍で茶を沸かすじゃんね(笑)。

■メタバースの外での生きがいを追求するような人間たちを残すしかない

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若新:僕は田舎の寄り合いなどを死ぬほどコーディネートしてきたが、最後は多数決しかないと皆が分かっているのに、そこに至るまで引っ張ろうとする。「俺らはまだイエスかノーかの決を採れるまでにいってない」と。その一方で、世の中では分かってない、情報が足りないというのに手を挙げさせられる場が増えすぎていると感じている。それが加速した結果、時間が足りず、強烈に手を挙げた人に付いていくしか無い、みたいになっている。

平石:簡単に言えば、そのスタイルが池上彰さんの番組だ。各局が同じようにやっているが、“分からない風”な人を集めて質問させて、池上さんが解説して、「分かったね」と。

成田:事実を確定させるための方法論には色々なものがあると思う。法律家や裁判官の方法論、研究者の方法論、そしてジャーナリストにも方法論がある。でも、それらは世の中の0.1%ぐらいの人にしか共有されていないんじゃないか。しかもメディアでは、要は“質問したがるおじさん”がひたすら聞き、“滑舌のいい素人のおじさん”の考え方を拡散している。本当の、“ヤバいプロの人たち”の考え方をどう咀嚼して伝えるかが、今後の教育とメディア大きな問題だろう。

ひろゆき:ミドルマンと呼ばれる人や、オピニオンリーダーと呼ばれるコミュニティのトップになる人がある程度のことを理解して、みんなが「ここなら大丈夫だ、この人についていこうぜ」という形で進んできたのが、加速主義が緩やかに進んでいった結果、そういう能力のある人は「日本ヤバい」と気づいて、成田先生みたいに外に出ていってしまう。そうやって優秀な人が抜けていってしまって、結果として加速主義が行き着いた時にはリーダーになれるだけの能力がある人が日本に全くいなくなってしまうと思う。

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宮台:幸い、アメリカもどんどんひどくなっていく可能性が高い。加速主義は結局、クラッシュ、あるいはハードランディングした後にどっち方向に立ち上がるのかがポイントだ。さっき言った“メタバースとドラッグとBIでいいだろ。後は俺たちがやってやるよ”という方向に行くのか、それとも小さなユニットの民主制というか、若新さんがおっしゃったようなやり方で、ユニバースでやっていくのか。その綱引きになると思う。

中国の権威主義、あるいは加速主義者の新しい権威主義が、気候変動に対応するとだろうか?極端な話、むしろ気候変動を利用して自然災害を放置し、ディープ・エコロジストが言っているように人類が長く生き残れる水準である6億人程度までに人口を減らす作戦を遂行する可能性すらある。そういう権威になぜ任せることができるんだろう?僕は嫌だね。

でも、マスは絶対にメタバースに飲み込まれていくだろうし、「そんなの良くない」と言ったところで無理。だって、僕の子どもたちとかも、もう飲み込まれてるもん。そこはメタバースの外での生きがいとか、実存的本質を追求するような人間たちを少しでも残すしかない。(『ABEMA Prime』より)

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