自治体も困惑… 鬼怒川温泉の廃ホテルに相次ぐ不法侵入 解体費用に10億円以上も
投稿された「肝試し」動画
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 渓谷から眺める四季折々の風景が美しい、栃木県日光市の鬼怒川温泉街。この歴史ある温泉街では、廃墟となったホテルに“不法侵入”する人が相次ぎ、問題となっている。

【映像】投稿された「肝試し」動画

 閉館後に放置され、廃墟と化した“廃ホテル”――。その内の1棟をみると、建物は崖の上に立ち並び、黒ずんでいる。近くで見てみると、荒れ果てた様子がハッキリと分かる。敷地内には、侵入防止のためロープが張られているが、誰かが侵入したのか、入り口は少し開いたままになっていて、建物の壁には落書きがされている。

 これらは1990年代後半から2000年代にかけて倒産したホテル。市によると、廃業した当時の状態で放置されている施設は、把握しているだけで16軒にものぼるという。

 廃ホテルには、懐中電灯とカメラを片手に調査という名目で、ホテル内をリポートしながら歩き回り、動画を撮影する人が後を絶たない。ネット上には、こうした廃ホテル内を探索する動画や、心霊スポットとして紹介するサイトが数多く存在している。

 こうした行為に、近隣住民は「中に人が侵入した跡があるとか聞きますね。『部屋の明かりがついていたんだ』と。電気が入ってないのに明かりがつくはずがない」と不安を口にする。

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 許可なく廃ホテルに入り、撮影する行為は、不法侵入にあたる上に、不審火など安全面でも懸念がある。そこで、市は先月、宇都宮大学の協力のもと廃ホテルを内部調査した。日光市による廃ホテルの内部調査で分かったのは、不法侵入にとどまらない驚きの現状だった。

 その状況について、日光市総合政策課・小林岳英課長は「壁に落書がしてあったり、日付が入って『いついつ来たよ』みたいなマーキングがありました。不法にゴミを捨ててった状態がひどい状況で残っているということも今回の調査で確認できました」と話す。そこには、落書きやゴミの不法投棄が横行されているほか、建物内は、天井などアスベストが剥き出しになっている箇所もあり、侵入することによる健康被害も懸念される状態だったという。

 望ましいのは建物の解体だが、小林課長は「倒産に至る経緯、もしくは倒産後の経緯で、所有者は分かっていても所在が分からなかったり、民間の施設を行政が壊そうとしても手が出せず、さらに一番大きいのは金銭面です。(1軒壊すのに)十数億円は必要だろうとも言われているので、小さな自治体ではとても手が出せない状況です」と、事情を明かした。

 また、鬼怒川のホテルの多くは、川沿いの崖に建てられているため、解体には大規模な足場が必要となり、さらに費用がかさんでしまう。市は今後、侵入防止対策を強化する方針だという。

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 このニュースに『ルポ風営法改正』の著者でBuzzFeed Japan News副編集長の神庭亮介氏は、「侵入防止を徹底するだけでは根本的な解決にならない」と話す。

「空き家、廃屋の管理は全国的に問題化している。今回の場合、アスベストの問題もあって『絶対来ないでください』というのが大前提だが、建物が残り続ける限り管理や警備にお金がかかってしまう。世の中には廃墟マニアもいるので、そこまで惹きつけるものがあるなら、逆に観光資源として活かせないか。ある程度の安全工事を施した上で公開し、『何があっても文句は言いません』と一筆とったうえで内部で写真を撮れるようにするとか。それが難しいのであれば、所有者不明の物件は自治体判断で解体できるように法整備するか、国が解体費用を補助するといった対応も必要だ」(『ABEMAヒルズ』より)

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