日本のMMA戦線にとてつもない新星が登場した。昨年、ABEMAで配信された格闘リアリティ番組「格闘DREAMERS」出身の中村倫也と宇佐美正パトリックだ。数々の試練と試合をクリアし、LDH格闘技部門LDH martial artsの契約選手となった2人。中村はレスリングでU-23世界選手権優勝、宇佐美はボクシングで高校6冠を達成している逸材だ。

 2人が揃って出場したのは、1月16日の修斗・後楽園ホール大会。宇佐美はプロ3戦目、中村は2戦目となる。

 ここまでも実力を見せてきた2人だが、今回は難関とも言えるマッチメイクだった。どちらも、かなり格上の相手との試合だったのだ。

 ところが、結果はどちらも1ラウンドでの勝利。宇佐美は自身も出場した『VTJ2011』で世界王者の西川大和と対戦した菅原和政を圧倒。落ち着いて右フックを当てるとラウンド終盤、一気にラッシュ。最後も右で仕留めてみせた。

 プロ2戦目にしてセミファイナル登場の中村が対峙したのは、世界ランカーの野尻定由。このマッチメイクからして破格の扱いだ。開始直後、野尻はいきなり飛びヒザ。強豪レスラー相手に山本“KID”徳郁vs宮田和幸の再現を狙ったか、あるいはケージのセンターを取りたかったのか。

 だがこの奇襲に対し、中村は左フックをヒットさせる。空中にいる相手の顔面を正確に射抜いたのだ。倒れた野尻をしっかり抑えつつ、パンチの連打。レフェリーが試合を止めたタイムは1ラウンド25秒だった。

 その勝ちっぷりはもちろん、驚かされたのは試合後のコメントだ。宇佐美によると、右で倒すのは狙い通り。なおかつ、相手が左に対するカウンターを狙っているのが分かったため、右中心で攻めたとも。

 大きな軌道のパンチも、力みではなかったという。相手のタックルに備えて低く構えつつ、大きく打つのも狙いだった。

 前回は判定勝利にとどまり「泥臭い試合をしてしまった」と不満げだった宇佐美。今回は会心の勝利だ。ただ、前回の鬱憤を晴らそうと気が逸るようなことはなかった。

「そこは1試合1試合、内容にこだわっているので。前回ダメだったから、とかではないです」

 中村と一緒に大会に出てKO勝ちしたかったと宇佐美。その中村がインタビュースペースに現れると、2人で肩を組み、笑顔で記念撮影に応じた。

 中村は今回の試合について「相手のミスと僕の判断力」の結果だと語った。経験のために長く闘いたいという気持ちもあったが、そこは勝負だ。チャンスがあれば確実に仕留める、その嗅覚とフィニッシュ力はやはり新人レベルではない。

 飛びヒザに合わせたパンチは咄嗟の判断かと思いきや「(頭の中の)2割くらいはあるかなと思ってました」。そして、そこで「逃げたり下がったりしない」と決めていたという。

 単に身体能力があるとかセンスがあるということではなかった。宇佐美も中村もしっかりとした戦術眼があり、それを実行できるという意味での“強さ”を持っている。試合を捉える冷静さも大きな武器なのだ。

 2人が目指すのは、あくまで世界。今回の圧勝で、それだけのポテンシャルがあることをあらためて見せつけたと言っていいだろう。

 4月24日には、両国国技館でLDHがライブと格闘技を融合させた新イベント『POUND STORM』を開催する。LDHアーティストとの“共演”によって、LDHファイターたちの知名度はさらに高まるはず。一般層へのアピール、そして世界。彼らを待つ未来の大きさは果てしない。

文/橋本宗洋

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