出産後の不安や負担を抱える親を心身両面で支える「産後ケア」。
核家族化が進み、育児支援を受けられない家庭が増加するなど、産後ケア事業に対する需要が高まっている中、政府は、子育て家庭の家事を支援する制度を新設する方針を固めたことが、関係者への取材でわかった。
国から交付金を受けた市町村が、社会福祉法人やNPO法人などに業務委託して、子育て家庭の料理や掃除、買い物の代行といった家事を支援する。この制度では親の負担や悩みを軽減し、孤立を防ぐことなどが狙いとなっている。
2024年度からの実施を目指すこの制度が、育児負担にあえぐ家庭の救いになるのか。産後ケアに詳しい東邦大学の福島富士子教授に話を聞いた。
「本当に大変良い取り組みだと思います。もっと早くにこういうような取り組みがあっても良かったのかなと思うくらいです。夫婦でもなかなか主人が仕事で難しい人、もっといえばシングルで子育てしている人、それから支援者が近くにいない人。慣れない育児と共に家事をやらなければいけないということはかなり負担が大きいと思います」
頻回授乳や絶え間ないおむつ交換、さらに寝かしつけ……。母親は生まれたばかりの赤ちゃんからひとときも目が離せない。そして、一旦泣き出すとなかなか泣き止まないことも。常に赤ちゃんにつきっきりで、料理や掃除といった普段の家事もままならない状態が続くことも当たり前だ。しかし、問題はそれだけではないと言う。
「(家事や育児で)大変な中で、話が誰ともできない状況にいる人は結構多いです。ストレスは溜まっていくだろうし、気持ちがうつ状態になっていくということがあると思います」
産後うつ――。女性は出産後のホルモンバランスの変化や、育児に対する不安・ストレスなどから発症すると考えられていて、10人に1人がこの産後うつを患っているとされている。
筑波大学などの研究によると、コロナ禍の今、孤独な子育てが続く母親も多く、産後うつの可能性のある母親がそれまでの2倍以上に増えたという。また、育児へのストレスは児童虐待を招く恐れがあるとも言われている。
「(児童虐待は)考えられると思います。私自身も子育ての時、1カ月くらい同じような状況になりましたし、そのときに壁にぶつけたくなってしまうような衝動みたいなものというのは、誰にでも起こるだろうなと感じたことがあります」
育児ストレスの軽減は児童虐待を未然に防ぐことにもつながるため、改めてメンタル面における産後ケアは重要だと福島教授は強調する。
「『助けて』と手を上げていくことって、とても大事だと思うんですけれども、手を上げた時にそこに手を差し伸べてくれる人の手があるっていうことを、そこの仕組みを作ることがすごく大事だとずっと思ってきましたから、今回(この制度によって)それが進んでいくと思います。ここでストップしないでもっともっと子育て支援に国が力を入れてもらえるように期待したいと思います」(『ABEMAヒルズ』より)