「走れなくなっただけでお肉にしてしまうのはもったいない」馬刺し・家畜の餌になるケースも…競走馬、年間1万頭の“余生”を考える
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 実在する競走馬がモチーフのキャラクターが登場する『ウマ娘 プリティーダービー』が人気となるなど、無縁だった人たちにも関心の輪が広がる競馬。昨年度は売上が18年ぶりに3兆円を突破するなど、コロナ禍でも明るい話題が満載だ。

【映像】受け皿なく処分も?人気の裏で…引退馬を待つ現実

 一般に馬の平均寿命は20〜30歳といわれるが、速く走ることを目的に改良・飼育されてきた競走馬は4〜5歳で引退を迎え、スポーツ選手と同じく、長い余生を「引退馬」として過ごすことになる。ところが、年に1万頭もいる登録抹消の馬の“受け皿”は少なく、天寿を全うできる馬は決して多くはないのが実態だという。

「走れなくなっただけでお肉にしてしまうのはもったいない」馬刺し・家畜の餌になるケースも…競走馬、年間1万頭の“余生”を考える

 競馬ファンとして知られるカンニング竹山は「心苦しい。正直に言うと、競馬好きとしては“タブー”な話で、現実から目を背けているだけというところもある。種馬になったとしても、一生死ぬまで種馬、ということはない。言いたくはないが、家畜のエサになる流通システムもあるし、それが無くなってしまえば困る企業もあるはずだ。そして、そういう話をしだすと、動物愛護の問題も出てきてしまう。でもやっぱり、この問題についてもしっかり話をしないといけないと思う…」と絞りだした。

■「走るために作った動物であって、食べるために作ったわけではない」

「走れなくなっただけでお肉にしてしまうのはもったいない」馬刺し・家畜の餌になるケースも…競走馬、年間1万頭の“余生”を考える

 千葉県香取市にある乗馬クラブ・イグレット。運営している認定NPO法人「引退馬協会」ではそんな行き場のない馬を救ってきた。現在も「ステイゴールド」を父に持ち、「重賞」と呼ばれるGII目黒記念を日本レコードで制覇した名馬「ルックトゥワイス」など、16頭の引退馬が暮らしている。

 しかし代表理事の沼田恭子さんによれば、引退馬の多くは行き先が見つからないのが現状だという。というのも、競馬を運営する「日本中央競馬会」(JRA)はレース開催や馬の育成など、競馬の健全な発展を図る団体であって、引退した馬については主に馬主に委ねられているからだ。加えて、馬を飼うには広大な敷地や高額なエサ代も必要になってくる。

「走れなくなっただけでお肉にしてしまうのはもったいない」馬刺し・家畜の餌になるケースも…競走馬、年間1万頭の“余生”を考える

 「競走馬としては役に立たなくなったとしても、リトレーニングをすることで次の生き方をすることができる子たちだ。“余生”というか、“第2のステージ”になると、例えば繁殖に行く繁殖牝馬・繁殖牡馬、あるいは乗馬、誘導馬になる子もいれば、騎馬隊で活躍する子もいる。最近では、“ホースセラピー”(精神疾患などの当事者向けの療法)に行く子もいる。しかし引き受ける方がいなければ、やっぱり処分されてしまうことが多い。人が食べるということもあるし、動物のエサになるということも聞いている。走れなかったっていうだけでお肉にしてしまうのはもったいないな、と思う」(沼田さん)。

 そこで引退馬協会は、毎年の誕生日に寄付を募ってきた。昨年は“ウマ娘人気”も手伝って、目標額の18倍となる、約3500万円が集まったという。

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 「競馬ファンではなかった方が入ってこられているなと感じているし、それが新しい、良い波を作っていると捉えている。どうしても受け入れの際の金銭的なハードルはあるが、なんとか第2ステージに繋げたいというファンの方も多い。そもそもサラブレットというのは人が走るために作った動物であって、食べるために作った動物ではない。JRAにも補助をしていただき、引退後の道を見つけていくというのが基本的な考え方であるべきだと思う」(沼田さん)。

■「引退する頭数が多すぎるのに、生産頭数はさらに増えていくと思う」

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 また、競走馬の“その後”にも詳しい競馬評論家の花岡貴子さんは、ツルマルツヨシ(1995年生)という引退馬を受け入れて10年になるが、経済的負担は大きいようだ。
 
 「ツヨシが現役だった時代に厩務員さんから相談を受け、一緒に受け入れる会を立ち上げた。九州で元気に過ごしているが、今までにかかった費用を計算すると、1000万円以上がかかっている。人間と同じく、歳を取ると負担はさらに重くなってくると思う」。

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 花岡さんは「引退馬の頭数があまりにも多すぎるので、新しい活用法ができるベンチャー企業が現れないかなとも思う。サラブレッドは年に約7000頭が産まれているので、繁殖牝馬はそれ以上の頭数がいる計算になる。“ウマ娘ブーム”で馬主さんが増えているので、繁殖牝馬の数も増えている。生産頭数はさらに増えていくと思う」と危機感を募らせる。

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 「種牡馬や繁殖牝馬についても、GIで勝った馬だけがなれるかというと、必ずしもそうではない。最近では、例えば有馬記念で勝った馬が乗馬に行くケースもあるし、逆に地方競馬に参画しようとする馬主さんが増えていることからダートで走る種牡馬が注目されるなど、トレンドは常に変わっている。また、仮に種牡馬になれたとしても、子どもが結果を出すか出さないかの前に、産駒の出来でやめてしまう馬もいる。

 他にも、調教師と馬主さんが相談して、大学の乗馬施設に寄贈したり、『楽天市場』の『サラブレッドオークション』などを通じて新たなオーナーの下、地方競馬で走ったりこともある。また、JRAが支援して、引退したばかりの馬が専門の乗馬大会に出るなど、新しい取り組みも始まっている。ただ、やはり日本の土壌を考えると、乗馬はまだまだ手の届きにくい、“高嶺の花”のイメージのスポーツという印象がある。牧場によっては1歳馬が走る手伝いをする“リードホース”として活躍する馬もいるし、うまく補助金が出るような形にして、引退馬の働き口を広げていってほしい」。

■「競馬ファンがやるべきことをやってこなかっただけではないか」

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 一方、これまで競馬には関心が持てなかったという元経産官僚の宇佐美典也氏は「競馬には、他にも“負の部分”はある。賭けで破産した本人はともかく、貧困家庭になったことで学校に通えなくなった子どもだっている。まずはそういうところへの対策があった上での、引退馬の問題なのではないか」と指摘。

 さらに「畜産物の振興にお金が使われていたということは分かるが、それにしても華のあるところばかりで、付随する問題への対応をしてこなかったということもある。さらに言えば、競馬ファンがやるべきことをやってこなかったのに“引退後がかわいそう”だとか“タブーにする”というのは無責任すぎる。バリバリ政治の世界でもあるわけだから、農水省やJRAに陳情し、法律を変えられたはずだ。それもしてこなかったのに、言い訳にならないと思う」と問題提起する。

「走れなくなっただけでお肉にしてしまうのはもったいない」馬刺し・家畜の餌になるケースも…競走馬、年間1万頭の“余生”を考える

 今後について沼田さんは「他国は乗馬用や農耕用の馬も生産しているが、日本は圧倒的にサラブレッドに特化して生産してきた。そういう能力の高い馬たちを肉にしてしまうのはもったいない。能力を別のことに活用すべきだと思う。そもそも競馬は国の発展のために始まったことだが、思い切り広げた割に、受け皿を用意してこなかった。しかし、今すぐ7000頭をなんとかするというのは絶対に無理だ。まずは受け皿を整備していきながら、第2ステージに行ける子たちを増やしていくしかない」とコメント。

「走れなくなっただけでお肉にしてしまうのはもったいない」馬刺し・家畜の餌になるケースも…競走馬、年間1万頭の“余生”を考える

 花岡さんも「“2次利用”として家畜のエサになる馬もいるが、特に中央競馬でサラブレッドだった馬は衛生面で非常に優れているので人気があるというか、やはり一定数の需要はあるということだ。そこに別の活動が入ってくるとなると、今度は相場が上がってしまうという影響も出てくる。そうしたことも含めて、全体的なバランスを踏まえて総合的に考えられる人がいないとダメだと思う」と話した。

■「ファンからかき集めるしかないんじゃないか」

「走れなくなっただけでお肉にしてしまうのはもったいない」馬刺し・家畜の餌になるケースも…競走馬、年間1万頭の“余生”を考える

 カンニング竹山も「言いたくはないが、年に1万頭も登録抹消となるが、その後どうなるのかを知っているのか?という話になってしまう。スポーツというか、博打だし、商売だし。全頭を養えるわけがない。誰もが目をつぶってきたところがあるのは事実だ」とした上で、次のように訴えた。

「走れなくなっただけでお肉にしてしまうのはもったいない」馬刺し・家畜の餌になるケースも…競走馬、年間1万頭の“余生”を考える

 「今回は引退馬の話をしているが、北海道などには“馬産地”と呼ばれる大きな牧場があるが、種付けをして産まれた仔馬が売れない場合もある。そういう時に、家族経営の牧場が養っていけるのか、という問題が出てくる。解決方法としては、馬がずっと暮らせる牧場がいくつかあって、そこにファンがお金を払う、という形にしないといけないと思う。馬券を買う時にすでに25%が取られているが、さらにファンからかき集める。あるいは有馬記念などで賞金が1億、2億という額になった場合、そのうちのいくらかが引退馬のために使われるとか…」。(『ABEMA Prime』より)

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