近未来的な空間でコスチュームに身を包む、オリジナルサイボーグキャラ「サイボーグYuki」。演じているのは、サイバーパンク専門モデルとして活動する斎藤ゆきえさんだ。
生み出した作品で人々の目を引き付ける斎藤さんだが、現在に至るまでには多くの壁が立ちはだかっていたという。
「幼いころから『仮面ライダー』が大好きだった。大人になってから(特撮テレビドラマの)『仮面ライダー』に出演したいと思ったが、そのためには芸能界に入らないといけない。色々なオーディションを受けに行ったが、27歳まで“吃音症”という言葉が上手く出ない病気に悩まされて……それで役者を目指すことができなかった」(「サイボーグYuki」こと斎藤ゆきえさん・以下同)
役者の夢は諦め、大学卒業後は漫画家のアシスタントになった斎藤さん。転機が訪れたのは、27歳のときだった。周囲から吃音症の症状が改善していることを指摘され、子どものころの夢だった芸能界を目指すことを決断した。しかし、年齢や容姿といった要素が大きく影響する芸能界で必死にもがいていた中、追い打ちをかけるような出来事が起きた。
「ある日、斜視という目の向きが左右別々になっちゃう病気になってしまった。それで手術を2回受けたが、2回目でも再発してしまい、『3回目はもうできない』と言われた。途方に暮れてたら、Instagramで顔にあざがある女性が、自身のあざを利用して特殊メイクを楽しんでいる画像が流れてきた。それと並行して、当時『仮面ライダービルド』という左右非対称の『仮面ライダー』がテレビで放送されていた。それをヒントに『左右非対称を思い切って強調しちゃえばいいんじゃない?』と思い、“左半身だけ機械”という今の原型になるような特殊メイクをして、ハロウィンパーティーに行った。そうしたら、そこに電機メーカーの役員の方がいて、『うちのイメージにぴったりだから、今度PRモデルをやってほしい』と(言われた)」
未来の技術を開発する企業とサイボーグの親和性は高く、展示会などでの仕事が相次いだという。そんな「サイボーグYuki」が身に着けているものは、ほとんどが手作り。
「手袋に関しては、100%私の手作り。タイツや印刷物に関しては、私がデザインして印刷所に発注している。ガンダムのプラモデル、いわゆる“ガンプラ”を改造して、ヘッドフォンに張り付けている」
実は、美大出身の斎藤さん。100円均一の商品やプラスティックごみなども活用し、サイバー空間で映えるアイテムを次々と製作している。年齢や見た目というハンデを、身につけた技術と発想の転換でひっくり返した。
「美人じゃないのに『役者をやりたい』『モデルになりたい』と言った時点で、批判はされる。YouTubeに顔出しで出ていたが、コメント欄で顔のことなどをすごく言われたりした。ただ、批判者は絶対に面と向かって言いに来ない。アカウントも顔も名前も適当で、誰だか特定できないようなアカウントから、見えないところから石を投げてくる。でも、応援してくれる人は会いに来てくれたり、私のショップでお買い物をしてくれたり、行動してくれる。批判と応援では、応援の力の方が圧倒に強い。1人応援してくれる人がいて10人批判者がいるなら、その人は(物事を)やめない方がいいと思う」
27歳から目指した夢の途中で、訪れた逆境にも決して負けなかった斎藤さん。今後は、かつての自分と同じような境遇にいる人による「サイバーパンクに特化した写真集を作りたい」と話す。
「生まれ持った身体的な特徴で劣っていても、創作技術は後天的に身に着けられる。生まれた後から習得できる技術で、自分の見た目をアップデートできる。他のファッションのジャンルに比べて、生まれ持った要素で勝敗が決まってしまう部分が少なく、伸びしろがすごく大きい。見た目に悩んでいる人こそ、サイバーファッションをお勧めしたい」
(『ABEMAヒルズ』より)
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