岸田総理は17日夜、新型コロナウイルス対応について記者会見を行い、条件を満たせば入国後の待機を免除するなど水際対策の緩和を発表した。
水際対策の緩和について、現在7日間とする入国後の待機期間を、ワクチンの3回接種やオミクロン株の感染が落ち着いている国からの入国など条件を満たせば免除する。1日あたりの入国者数の上限も今の3500人から5000人に引き上げ、観光目的以外の外国人の新規入国を認める。
岸田総理が囲み取材以外で記者会見を開くのは1月4日以来。そのことに対して批判の声も上がっていたが、なぜこのタイミングだったのか。テレビ朝日政治部の今野忍記者が伝える。
Q.岸田総理はなぜこのタイミングで会見を開いた?
年頭以来、正式な記者会見をやっておらず、そのことについて一部メディアや世の中から批判的な声があったことを気にしたというのが1つ。一方で、ぶら下がりという総理官邸を出る時の記者の質問にはかなり頻繁に応じていた。水際措置の緩和やワクチン接種、電話会談を行った時など逐一やってきているが、総理周辺の側近からは「オミクロン対応の対応が小出し、場当たり的になっているように見えてしまう」と。それを記者会見として腰をすえて説明することで、体系的に示したい考えがあった。
Q.岸田総理はなぜぶら下がりを選んでいた?
総理の記者会見は決まった時にやるものがあって、年頭や国会開会時の所信表明、広島・長崎の平和記念式典など、年に5、6回ある。「いや、そんなことないだろう。安倍元総理や菅前総理はもっとやっていたじゃないか」と思う人もいるかもしれないが、あれは緊急事態宣言を発出する時と解除する時に行っていた。岸田内閣では、オミクロン株の特性もあり緊急事態宣言は出さずに済んでいて、まん延防止等重点措置関連で記者会見を行う前例を作るよりも、ぶら下がりに応じたほうがさっと発信できて良いという考え方もある。今回はまん延防止重点措置だけで行ったという前例はつくりたくないので、水際対策の緩和などいろいろセットにした。
Q.ぶら下がりと記者会見で異なる点は?
同じ点と違う点があるが、最大の違いは質問者が変わること。記者会見になると、各社とも総理官邸クラブで一番年次の高いキャップかキャップクラスが出席する。一方、ぶら下がりで質問する記者は総理番といって、一番若手の記者になる。
記者会見は準備が大変だが、質問をある程度コントロールしやすいと思う。内閣広報官が司会で、質問を当てる記者も選ぶことができる。ぶら下がりだと総理が直接「どうぞ」と指すが、若手記者なのでどこの会社かわからないということはあると思う。
Q.ことし夏に行われる参院選への意識も?
今日の会見に限らず、岸田総理の頭の中の半分以上は参院選があると思ってもらって構わないと思う。この選挙に負けてしまうと政権運営が非常に厳しくなる。岸田総理の派閥は約50人と安倍元総理の半分ぐらいで、政権基盤がそれほど強くない。逆にいえば、参院選に勝つと、衆議院を自身の決断で解散しなければ3年間国政選挙がない。この選挙を超えることが、岸田総理や側近のすべての基準になっている。経済界から「鎖国状態だ」と言われても、感染が再拡大して内閣支持率が落ちれば元も子もないと思っている。
経済対策については、「V字回復パッケージ」(仮称)も早く打ち出したいと思っている。暗いニュースだけだとよくないので、思い切ってGoToキャンペーンや中小企業への支援など、経済をV字回復させるような思い切った財政出動を、どこかのタイミングで打ち出したいと思っている。次に記者会見を開いて、パッケージを打ち出すとすれば、まん延防止重点措置を一斉解除したいと思っている3月6日が有力だ。