噂の大一番が、ついに正式決定した。3月26日、シンガポールで開催されるONE Championshipの10周年大会『ONE X』。ここで青木真也が秋山成勲と対戦する。
試合に向けたインタビュー。青木は秋山について「好きか嫌いかでいえば」と聞かれ「好きなわけないじゃない、何バカなこと聞いてんの」と即答している。さらに「忌み嫌ってる」とも。
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なぜ、これほどまでに強く拒否するのか。それは「生き方が違う」からだ。青木はDREAM時代の2008年に秋山に対戦要求。当時は階級が違うこともあり実現しなかったが、そこからのストーリーだ。
「当時は俺の売名感があったけど、今はそれはないという違いはある。今は売名する必要がないし」
ただ、生き方が違うということはずっと感じてきた。だからこそ自分は「秋山ウォッチャー」なのだとも言う。忌み嫌っていて、しかし興味深い存在でもあるのだ。
「僕はいいことでも悪いことでも本当のことを言ってる。思ったことしか言わない。(秋山は)きれいごとしか言わないでしょ。見え方だけ気にしている。利口じゃない、小利口なんですよ。美しさがないしプライドがない。それなのにきれいごとを言うから気に入らない」
さらに「自分のことベビーフェイスだと思ってるでしょ。そんな認知の歪みってある? そういう生き方も含めて興味深くはありますよね」とも。
昨年10月、『Road to ONE』のグラップリングマッチに出場した青木は、試合後にマイクを握ると解説席の秋山に「なんで試合を断ったんだ!」と怒りをぶつけた。その時もONEから秋山戦のオファーがあり、自分は即答したものの秋山からは返事を保留された。結果はケガで試合ができないというもの。試合までに時間はあるだろう、と納得のいかない青木は、その後「もう関わりたくない」と言っている。
それでも、今回のオファーを受けたのは「仕事だから」だ。格闘家、格闘技という「芸ごと」をやっている人間は、周囲に対して試合をすることでしか返せない。
「試合は怖いですよ。どんな試合でも怖い。できればやりたくない。でも、試合しない選手なんて…」
試合とは、青木真也の生き方とは「思想信念、主義主張」を見せるものだ。だから秋山との生き方の違いを強調する。烈しい言葉にもなる。それが、青木が見せたい「文脈」でもある。
「スポーツや格闘技がなんの役に立つかといったら、他の人の悩みに対して訴えるものを描いた時じゃないですか。立ち上がる姿だったり、あるいは問題提起だったり。それがあるから、世の中と組み合っていける、伍していけるわけで」
単に秋山が嫌いだから、憎いから倒したいということではない。かつて対戦相手の腕を折って批判されたことがある青木だが、今でもそれが悪いことだとは思っていない。
「そういう仕事だからですよ。ギブアップしなかったら折る。それはいつもそうですよ。腕を折ることも折られることも、なんとも思わない。折ったんじゃなく決着させたんだから」
では、秋山戦はどんなフィニッシュになりそうか。
「一番リスク少なく、自分が信じる格闘技をするだけ。殴って終わるか極めて終わるかは分からない」
青木真也が青木真也としての闘いをする中で、感情が付け入る隙はないというわけだ。
「遺恨清算? いや、遺恨がないから」
この試合、単純な“因縁の対戦”ではない。だからこそ“読みがい”があるのだ。
文/橋本宗洋