「長引けば長引くほどロシアの力は弱くなる。どこまで国際社会がウクライナを支えられるのか…それが今回の戦争だ」防衛研究所・高橋杉雄氏
首都キエフの最新情勢は
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 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は都市部へのミサイル攻撃などが激しさを増し、ウクライナ非常事態省は日本時間2日夜、これまでに民間人2千人以上の犠牲者が出たことを発表した。

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 2日の『ABEMA Prime』に出演した防衛省防衛研究所の高橋杉雄・防衛政策研究室長は「当初ロシアは2パターンの作戦を用意していたのではないか」と分析する。

 「彼らが達成したいことは、比較的はっきりしている。まずウクライナ東側のルガンスク、ドネツクの周辺地域を分離させること。そして未来永劫NATOに加盟させないとウクライナに約束させること。これを飲ませるための軍事作戦だったと思う。そこで最初に試みたのが、空挺部隊や特殊部隊をキエフ周辺に投入し、ゼレンスキー大統領をはじめとする政権中枢を殺害ないしは拉致をするという作戦だった。ところが、これが失敗した。

 併せて進めていたのが、3方向からの侵攻作戦だ。こちらもロシア軍が苦戦して止まっているという情報もあるが、それは楽観的な見方の可能性がある。というのも、ロシア軍が制圧したチェルノブイリ原発からキエフまでは陸路で150kmくらいの距離がある。イラク戦争でアメリカ軍は歴史上ベストワンに近いような大進撃をしたが、このときの速度が1日あたり30kmだった。つまり、ロシア軍が同じスピードで進んだとしても、キエフまでは5日間がかかる。湾岸戦争ではアメリカ軍主力部隊の速度が1日あたり20kmだったので、2日になってキエフ近郊にたどり着いていたというのは、軍事的に見ればむしろ普通よりもやや早い速度だといえる」。

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 一方、ロシア国防省も自軍の被害状況を初めて公表している。ウクライナ軍の激しい抵抗により、これまでに死者498人、負傷者約1600人が出ているという。さらにアメリカの国防総省はロシア軍が燃料不足あるいは食料不足で士気が低下していて、停滞しているとの見方を示している。

 「キエフを陥落させようとすれば、ものすごい市街戦を戦うことになる。守る側にも被害は出るが、攻める側も建物に隠れて待ち伏せをされるので、大きな被害が出る。アメリカ軍もイラク戦争ではファルージャなどの都市で苦戦したし、ロシアもチェチェン紛争では市街戦で大損害を出している。そしてキエフという街は第2次世界大戦中にドイツとソ連の間で壮絶な市街戦があり、20万人以上の民間人が亡くなった街でもある。占領を目指すような、大規模な市街戦を簡単にやるとは考えてはいない。

 さらに言えば、アメリカがイラクでやったように、ロシアがウクライナ全土を占領し、ゼレンスキー大統領を捕まえて言うことを聞かせるためには、20万弱の兵力では難しいだろう。ロシア側にできることはウクライナ側に手を上げさせるほかないし、そのためにはウクライナ社会にとにかくダメージを与え続け、“ロシアの要求を入れた方がいい”と思わせる必要がある。ハリコフなどへの都市攻撃も、そのためものだろうし、キエフに対してもミサイル攻撃、空爆、郊外から大砲を撃ち込んでいくといったことを繰り返して都市を破壊し、市民を殺害し、それによってゼレンスキー大統領が諦めるのを待つということだろう」(高橋氏)。

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 こうしたロシアの軍事行動を諦めさせる上でカギになるのが、日本を含む各国による経済制裁だ。また、西側諸国の企業も、こうした動きに追随する姿勢を見せ始めている。

 「そもそも経済制裁で侵略をやめた国は今までほとんどないし、短期的な経済制裁で行動を変えさせることは難しいと思う。ただ、金融制裁、送金に関する制裁、まさにApple Payの利用停止のように日々の生活に影響する制裁は国民の考え方に大きく影響すると思うし、すでに取り付け騒ぎも起きている。進軍が続いているとか、外見上で勝っている間は、反戦運動も一部に留まるだろうが、非人道的行為が本格的に明らかになったり、負け始めていることがわかったり、それこそキャッシュが続かなくなって軍事作戦に影響が出たりという時に初めて反戦運動が力を持つ可能性はある。

 つまり時間軸と方法は違えどウクライナ社会が傷付けられていくのと同時に、ロシア社会も傷付けられていっているわけで、音を上げた方が先に諦める、それが今回の戦争の形だということだ。人々が亡くなっていく中、“戦い続けろ”と言わなければならないのは厳しいことだし、長引けば長引くほどウクライナのダメージが累積することになる。しかし同時に、ロシアは不利になっていく。その意味では、どこまでウクライナが耐えうるのか、そしてどこまで国際社会がウクライナを物心両面で支えられるかにかかってくると思う」(高橋氏)。

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 慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏は「本当に衝撃的だ。国連の安全保障理事会で拒否権を持つ常任理事国(中国、フランス、ロシア連邦、イギリス、アメリカ)が無謀なことをすれば止める術はないということをプーチン大統領は証明してしまった。ロシアがウクライナに傀儡政権を立てることに成功してしまえば、これから世界中で同じようなことが起きてくると思う。当然、次は中国が台湾を狙うだろう。だからアメリカも軍隊は出せないが、躍起になって最新兵器をウクライナに供与していくのだろうし、ロシアはロシアで今までやってきたことが無駄になれば権威が地に落ち、国内で争乱が起きる可能性もあるので引くに引けない。今回の問題を収めるか、どういう形で収まるかが、今後の国際関係を規定してしまうことになるだろうし、そこに対して何もできないことが歯がゆい」とコメントしていた。

 双方に多数の犠牲者が出る中、2回目の停戦交渉は日本時間のきょう午後に開かれる。(『ABEMA Prime』より)
 

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