ついに、両者が向き合った。3月2日、ONE Championshipの10周年記念大会『ONE X』(3月26日、シンガポール・インドアスタジアム)の会見が行われ、この大会で対戦する青木真也秋山成勲が登壇。

【視聴する】青木vs秋山 因縁の2人が激突

 青木はDREAM時代の2008年にも秋山に対戦要求。当時は階級が違ったが、今はともにONEと契約。秋山がONE独自の階級システムの中でライト級に落とす可能性もあると語り、あらためて青木が対戦を要求していた。

 昨年、試合のオファーがあったものの、秋山は負傷を理由に対戦を断った。これに激怒した青木が試合後のマイクで解説席の秋山を激しく批判する場面も。

 そして決まった今回は、まさに“因縁の対決”だ。プロモーションVTRでのインタビューでは、両者とも厳しい言葉をぶつけ合っている。

「忌み嫌ってる」(青木)
「薄っぺらい。本当のケンカを知らない」(秋山)

 会見も緊張感に包まれる中で始まった。しかし、ここでの両者は感情を抑え気味。秋山は「いいものを見せて楽しい、素晴らしい試合にできたら」。青木は「当日、いいものにできるよう頑張っていきましょう」とコメント。

 試合まで1カ月を切り、今は気持ちをぶちまけるよりも闘いそのものにフォーカスしているといったところか。秋山は実際に対面してみての心境を聞かれると「昔から知っている選手なので。今ここで会ったからどうこうということはないです」と語った。一方の青木は「大丈夫だ、心配するな。本質は変わらないから」。

 印象的だったのは、青木がONEのチャトリ・シットヨートンCEOへの感謝を語るとともに笹原圭一氏などDREAM時代のスタッフの名前を挙げたこと。青木真也vs秋山成勲はDREAMの時代から「ついて、こねてきた」ものだという感覚が青木にはある。

 その歴史、それぞれのキャリア、生き方、そうしたものまで含めて「文脈」を見せたいと青木は事前インタビューで語っている。簡単に消費されないものを残したい、と。それはたとえば、ツイッターで挑発しあって会見で乱闘して“盛り上げる”ようなものではないし、試合が終わったらノーサイドで、笑顔とともに握手するようなものでもない。

 だから、会見での静かなコメントも肩透かしではなく、ここから何かを読み取ってほしいと青木は考えているのだろう。質疑応答の後、両者は写真撮影前にいったん控室に。しかしその直前、青木はいきなりスーパー・ササダンゴ・マシンのマスクを被って取材にアピールしている。

 謎の行動と言うしかないが、考えさせること自体が青木の目的だろう。単にふざけているだけ、とも思えない。

 この会見、質疑応答の途中に桜井“マッハ”速人がマイクを取り、秋山の減量や前回のオファーをなぜ断ったか、喧嘩腰で質問する場面があった。

 これに青木は「会見終わろうよ。面白おじさん大集合になっちゃってる。恥ずかしいよこれ。格が落ちる」。やはり、この試合にあるべき“格”を大事にしているのだ。マッハの“乱入”を「必要悪」としつつ、バラエティ的、あるいはYouTube的なノリは求めていない。

 フィニッシュのイメージはできているかと聞くと、秋山は「できてます」。しかしできる範囲で語ってほしいとのリクエストには「なら話せません」と言う。

 一方、青木のフィニッシュのイメージは「両者リングアウトじゃない?」というもの。これは「意味深に言うと。試合までに両者リングアウトにならないように」ということらしい。そしてあらためて「ギブアップだと思います」と付け加えた。どちらも明確にフィニッシュするイメージができているのだ。

 この2人の対戦には「両リン」のような状態もありうる、しかしそうはさせない。青木の言葉をファンそれぞれがどう読み取るか。秋山の減量はかなり厳しいもののようで、そうした要素も含め、単なる勝敗予想を超えて“読みがい”のあるカードだ。

文/橋本宗洋