住民およそ4000人が住む東京都狛江市の大規模団地「都営狛江アパート」で、8カ月以上も穴が開いた水道管から大量の水が流れ続けている。地元からは「陥没事故につながるのではないか」と不安の声が上がる。
【映像】穴があいた「水道管」 60年以上交換されていない(※拡大画像あり)
赤さびがびっしりこびりついて形がかわった水道管。この水道管は、60年以上も交換されていないという。放置され続け、ついに穴があいてしまった。
去年6月、東京都から委託された水道業者は「修理不能」だとして、床に穴をあけたまま作業を放棄した。今も壊れた水道管からは地下に向って、水が流れ続けている。水道管はむき出しのままだ。修理業者が撮影した写真を見ると、腐食のため500円硬貨がすっぽり入ってしまうほど、大きな穴があいていることがわかる。
「4~5キロやせてしまった。心配で夜も眠れない。自分の家に穴が開いていて、平気な人はいないでしょ」と話す洋品店「さくら」店主の内海玲子さん。地下に向って流れ出る水はすでにかなりの量になっている。
お店の裏手には子供たちの遊ぶ公園があり、近隣の住民からは「漏水によって土地が陥没するのではないか」と不安の声が寄せられている。
現場の状況を見た、元東京都水道局職員・富樫和史さんは「水道の栓を全開にしている状態。25メートルプールの水を160回入れ替えできるぐらい、垂れ流しになっている」と語る。
なぜ水が漏れた状態が8カ月も続いているのか。ネックになっているのは、現場が賃貸ではなく“分譲”だからだという。
都営狛江アパートでは、ほとんどは住民が毎月の家賃を東京都に支払う賃貸契約だが、商店街の店舗は「分譲」。土地は東京都のものだが、建物の所有権はぞれぞれの店主にある。東京都は終始一貫「賃貸なら直すが、分譲の場合は、修理に東京都の費用は使用できない」とお店の所有者が負担すべきというスタンスを崩さない。
とはいえ、土地は東京都のもの。分譲だとなぜ個人負担になるのか。東京都にインタビューを申し込んだ結果、文書で回答が寄せられた。
「ご質問の配水管は店舗のみに水を供給する店舗用の施設です。修繕は店舗所有者の皆様で協力して実施していただくものと考えています」(東京都の回答)
一般のマンションでは修繕のための積立金が集められることもあるが、都営住宅の商店街ではそのような呼びかけもない。前述の富樫さんは「通常は25年で水道管を交換する」というが、商店街では60年以上にわたり一度も重要なインフラの交換が行われてこなかった。東京都水道局も「今回の水道管は個人で費用を負担すべき範囲のもの」と主張し、漏水を止めようとはしない。
大量の水が地下に流れ出しているのに、どこも止めようとしない異常事態に、狛江市の市議会議員や地元の有志が立ち上がり、一人で悩む内海さんの支援を始めた。
地元の声を受け、ついに東京都は水が流れ出した地下の調査に乗り出した。土地陥没の危険がないか、レーダーによる探査で地中の状況を調査した結果、東京都が出した回答は……
「今回漏水が発生している排水管は老朽化が著しく進んでおり、緊急的な対応では漏水を止めることは困難だと聞いています。都において地中探査を行いその結果をふまえ、改修方法等について提案したいと考えています」
水道管の交換費用は1000万円近くにのぼる可能性がある。狛江アパート商店街は10店舗。詳しい説明がないまま、5年前にこの店舗を購入した内海さんに「費用を負担しろ」というのは、かなり厳しい要求だ。まずは漏水を止め、すみやかな判断が必要なのではないか。
「がんばって一緒に直しましょうという姿勢がない。早くなんとか止めてほしい」(店主の内海さん)
(「ABEMA NEWS」より)
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