将棋の順位戦B級1組の最終13回戦が3月9日に行われ、藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、19)が佐々木勇気七段(27)に勝利、今期成績を10勝2敗として同組トップで自身初のA級入りを決めた。実力者がひしめき「鬼の住処」とも呼ばれる激戦リーグながら、敗戦を前後半、それぞれ1つに留めて1期抜けに成功。来期はA級初参戦で、谷川浩司九段(59)が持つ最年少名人記録、21歳2カ月の更新にチャレンジすることになった。
【中継】順位戦 B級1組 13回戦 藤井聡太竜王 対 佐々木勇気七段
自身の今年度最終対局で、順位戦では最上位のステージに上がることを決めた。勝てば昇級、負ければ他の棋士と勝敗数が並ぶものの前年成績により「頭ハネ」で逃す可能性も出るプレッシャーもあった中、難解な局面にじっくり時間をかけ、活路を見つけ、そして勝った。
プロデビュー以来続けていた連勝を「29」で止められた因縁の相手でもある佐々木七段との対局は、後手番から角換わりでスタート。プロの間でもかなり深いところまで研究が進んでいる戦型ではあったが、序盤は佐々木七段が研究の成果を発揮するように、じわりじわりとポイントをリード。これを察した藤井竜王も、午前中から惜しみなく持ち時間を使い、26手目には昼食休憩の40分を含めて、2時間14分の大長考を入れた。
テンポよく指し進める佐々木七段に、一時は2時間半以上の時間差をつけられた局面もあったが、じっくりと考慮を入れた効果もあってか、じりじりと差を詰め、夜戦に入るころには形勢は再び互角に。長時間の順位戦らしく、夜遅くなってから互いの棋力をぶつける力戦となった。形勢が藤井竜王に触れ始めたのは、佐々木七段の攻めをうまく捌いたあたりから。流れの中でうまく自玉を上部に逃し際どいながらも安全度を高めると、攻めの手番が回ってきたところで豊富な持ち駒を活かして勝ち切った。
対局後、藤井竜王は今期を振り返り「「全体通して苦しい戦いだったと思うので、なんとか昇級できたのはよかったです。(名人挑戦は)今期が結構課題が多かったと思うので、そのあたりをしっかり振り返って、挑戦争いに絡めるように頑張りたいです」と語った。
タイトル戦では王位、棋聖を防衛、竜王、叡王、王将の3つを奪取し、最多の五冠保持者になった今年度。本人は、タイトル獲得後の会見の度に「実力以上の結果が出た」と繰り返すが、いよいよ他の追随を許さないほどの結果を出し、また内容も充実している。今回のA級昇級により、ついに名人挑戦の可能性が生まれ、来年度には六冠、七冠、さらには八冠独占も可能になった。トップ棋士たちばかりを相手に、今年度は全棋士最多の64局で52勝12敗、勝率.8125という圧巻の数字を残した。夢の最年少名人、さらには八冠独占に期待するファンの声は、さらに高まっていく。
(ABEMA/将棋チャンネルより)