タレント活動をしながら、将棋親善大使として大好きな将棋の普及に務める乃木坂46元メンバー伊藤かりんも、令和の天才棋士の活躍ぶりには、脱帽するしかない。藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、19)は2021年度、タイトル戦で3つを奪取、2つを防衛し、現在最多の五冠保持者となった。トップ棋士たちばかりを相手に64局指し52勝12敗、勝率.8125と5期連続で勝率8割超え。“ほぼ無敵”という状態に近づいている。「藤井さんの活躍に、今何冠なのか、一瞬わからなくなるほどです」と思わず笑ってしまうほどの強さだが、棋士の知人も多い伊藤の耳には、「ストップ・藤井」へ燃える棋士たちの声も届いている。将棋界がさらに盛り上がるためには、時に藤井竜王を倒すようなライバルの出現が必要と感じていた。
驚きを通り越して、恐れすら感じる。それほどの強さだ。「タイトルが年々増えていることはすごくもあり、恐ろしくもあります。これほどの勢いは見たことがないです」。昨年度、二冠を達成したとして各種メディアも大賑わいだったところ、その2つを防衛するだけでなく、新たに3つ追加。「強すぎます。勢いがすごすぎて、負けるイメージがなくなってきています。八冠独占も正直、2年以内に達成されそうな気もします。私は羽生善治先生(九段)の七冠独占という時代はあまり記憶がないので、その時のような盛り上がりを見てみたい気持ちもあります」と、タイトル総なめという完全なる「藤井一強」時代への興味をのぞかせた。
ただ、将棋番組にもレギュラー出演し、棋士の知り合いも多い伊藤だからこそ、棋士たちの気持ちもわかり、また「負けてばかりいられない」という声も直接聞くことがある。「藤井先生は別格という意識をみなさん持っていますが、そのようにはさせたくないという話もうかがいます」。今期戦った5つのタイトル戦では棋聖戦で3勝0敗、竜王戦と王将戦では4勝0敗と、3つもストレート勝ちした。「負けてしまった方に『なんで負けちゃったんだよ』と言うようで、とても伝え方が難しいですが、将棋ファンとしては七番勝負なら第7局まで見たい。なんというか、藤井先生が敗れるところも見てみたい、という複雑な気持ちがあります。」というのも、素直な気持ちだ。戦っている棋士たちも、それは同じ。藤井竜王ともっとたくさん戦いたい、もっと熱戦を生み出してファンに見てもらいたいという思いが強い。
では2022年度、藤井竜王にライバルとなる棋士は現れるのか。まず注目は、昇級を決めたばかりの順位戦A級。名人戦七番勝負は、渡辺名人と斎藤慎太郎八段(28)という2期連続で同じカードになった。「A級では、斎藤先生が圧倒的な強さでした。来年はどうなるか気になります」。トップ中のトップが集うA級で、2年間合わせて16勝2敗。タイトル戦を除く対局としては最長である、持ち時間各6時間という中での好成績は、同じく持ち時間が長いタイトル戦に通じるものがある。A級で当たるのか、斎藤八段が名人となり待ち受けるのかはこれから決まる。いずれにせよ、過去7局指して藤井竜王の4勝3敗と拮抗する斎藤八段が、新たなライバルとして名乗りを上げても不思議はない。
もちろん藤井竜王にタイトルを奪われた渡辺名人、豊島九段の巻き返し、さらに研究パートナーでもある永瀬拓矢王座(29)らも注目されるところ。また、2021年度の勝率ランキングで1位になっている同い年の伊藤匠五段(19)をはじめ、同世代棋士たちも、いずれは各棋戦上位に進出、タイトル戦線に食い込んでくることもあるだろう。さらなる絶対的強者に向けて成長を続ける藤井竜王。かつて羽生九段が七冠を独占した時代もそうであったように「誰が藤井竜王を倒すのか」という視点を、もうファンは持ち始めている。
(ABEMA/将棋チャンネルより)