将棋界のレジェンドも、他の棋士のドラフト指名ばかりは、まるで読めないと“投了”宣言だ。プロ将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」で、羽生善治九段(51)は3大会連続のリーダーとして出場。ドラフト会議には2度目の参加になる。将棋であれば深く広く読みを入れられるが、この指名ばかりは「全然わからないです」ときっぱり。「去年も思ったんですが意外な人が意外な指名する」と、読みの入れ方すらわからないといった様子だ。
初の団体戦となった第3回大会は予選敗退。第4回大会は、大接戦の予選リーグで自ら勝負の一局を制してチームを本戦に導いた。「ハラハラドキドキしながら対局ができて、やっている方としても楽しめました」と、感覚の異なる将棋を味わい、また盤を離れたところでのチーム動画では「企画がなければやることはなかったものもあるので、そういう意味ではいい記念になりました」と、初体験のこともあったと喜んだ。
もともと、この持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールがおもしろいのでは、と着想したのは羽生九段。個人戦、団体戦通じて多くの対局が行われたこともあり、棋士による戦い方もこなれてきた。「決断よく指すのも大事ですが、勝負どころや分岐点ではしっかり時間を投入するのも大事だなと思いました。最後の最後まで油断できない、何が起こるかわからないところもある。悪くなっても諦めずに頑張ることが大事ですね」と、「将棋は逆転のゲーム」と呼ばれる醍醐味が凝縮したルールだと改めて思った。
早指し向きの将棋もあれば、タイトル戦に出てきてもおかしくないような最新型の将棋も出る。準公式戦とはいえ、多くの棋士・女流棋士が注目するのは、そんな内容の濃さもあるからだ。また活躍中、さらにはデビュー間もない若手棋士が指名され活躍することで、その後の公式戦で結果を出すケースも続いている。「実力が評価されているから指名されているところもある。若い新人からすると、多くの人に知ってもらえる機会かなとも思いますし、張り切って臨めるんでしょう」と、新たな力の台頭もまぶしいばかりだ。
大会、ルールの中身は熟知するが、どうしてもドラフトの指名だけは、まるで予想がつかない。「全く想定ができない。予想もできない」と、読みの入れ方すらわからないとばかりに、目を丸くして首を振った。それゆえ自分の指名も、単独か重複になるかもわからず、思った通りに指名するだけだ。「チームとしては、ちゃんと上に上がっていく形になればと思います。個人としては悔いが残るところもあったので、修正して臨みたいです」と、本戦1回戦で敗れた昨期よりも上を目指す。誰よりも将棋を愛するレジェンド羽生九段。また今年も存分に超早指しの魅力と、仲間との将棋談義を楽しむ。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)