不妊治療が何度でも自己負担なし “授かる”支援に注力 常陸大宮市の挑戦
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 体外受精や顕微授精では1回あたり数十万円かかる不妊治療。4月からそれらの高度な治療も保険適用の対象となる。厚生労働省が公表した「不妊治療」の保険適用に関する概要は次のように詳細を伝えている。

【映像】“授かる”手助けをしなければ… 市長の思い

1. 4月から新たに「人工授精」「体外受精」「顕微授精」などが保険適用。治療費の自己負担が原則3割に
2. 対象者は治療開始時に年齢が43歳未満の女性(※男性の年齢制限なし)
3. 事実婚のカップルも対象となる
4. 受精卵の染色体に異常が無いかなどを調べる。「着床前検査」と第三者の精子・卵子などを用いた生殖補助医療は対象外

 ニュース番組『ABEMAヒルズ』は、去年の春から不妊治療を自己負担なしでの治療を受けられる制度を始めている、茨城県常陸大宮市の鈴木定幸市長に話を聞いた。

「これまで結婚祝い金の制度や出産祝い金の制度など、色んな対策が取られてきましたが、直接的にお子さんの数を増やすという意味では不妊治療というものが一番有効なんだろうという結論に至り、そういった政策に切り替えました」

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 年齢に応じて最大6回を上限に、国や県の補助金では賄えない部分の費用を補助している常陸大宮市。多くの自治体が子育て支援といった“育てる”部分へのサポートに着目する中、“授かる”手助けをしなければならないという思いで、不妊治療の全額助成事業を進めている。

「私自身が不妊治療を経験していて、病院で様々な人たちとの意見交換をしました。そういった方々の切実な話を聞いていると、しっかりとした助成の体制を作ってあげないとだめだなという思いもあり、こういう経緯に至りました」

 制度の開始以降、不妊治療の申請件数と妊娠に至った件数は共に増加。不妊治療のために転入してくる人も相次ぐなど、人口減少を食い止めたい地方自治体として望んでいた成果が出始めている。さらに、4月からは治療回数の上限を撤廃し、保険適用がされる場合でも自己負担分を補助も。これによって、若いカップルでも早い段階から本格的な不妊治療に臨みやすくなる。

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 今年2月に男女を対象に実施された「30代・40代の金銭感覚についての意識調査2022(SMBCコンシューマーファイナンス調べ)」では、貯蓄額が50万円以下と回答した人が約40%にのぼるなど、金銭的に余裕のない子育て世代が多いという実態が明らかになっている。

「現実問題として、貯金がほとんどない家計で不妊治療に踏み出すというのは不可能だと思います。経済的な側面から第3子を諦める夫婦がいるという話は聞くのですが、個人的な見解としては、子宝というのは授かると親は真剣になって働くものだと思います。そういう考え方でいけば、きっかけを行政が提供できる政策は必要なのかと思います」

 その上で鈴木市長は、国には不妊治療だけでなく、根本的な原因の解決に向けた取り組みをしてほしいと訴える。

「少子化対策は色々あると思うんですけど、どうして少子化社会になってしまったかという根本は、私は国民・県民・市民の貧困化だと思います。人口って国力ですから、人口が減るというのは尋常な問題ではない。このあたりは国の政策で経済成長できるような国家を作っていかないと抜本的に難しい。子育て支援をいくら充実させてもこれは枝葉の問題であって、根本はやはり国民の貧困化。国にはしっかりとした“幹の対策”をとってほしいです」

(『ABEMAヒルズ』より)

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