日本で「戦争反対」のデモに参加することに意味はあるのか?元SEALDs、GLAYのHISASHI、EXITらが議論
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 ロシアによる軍事侵攻の開始から1カ月となる24日、ウクライナのゼレンスキー大統領が世界に向けて「反戦デモ」を呼びかけた。

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 これまで国内では渋谷や新宿などで多くの在日ウクライナ人や若者が参加した抗議行動が行われてきたが、日本ではデモの効果や、そもそも参加することについて否定的な意見も少なくない。それは著名人に対する見方も同様だ。

 そこで24日の『ABEMA Prime』では、元SEALDsメンバーの元山仁士郎さん、政治学者の五野井郁夫教授、さらにロックバンドGLAYのギタリストHISASHIらを交えて議論した。

■元SEALDs元山仁士郎さん「迷いも含めて発信してほしい」

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 「SEALDs」の元メンバーで、21日に那覇市で開催された「NO WAR ピースライブ沖縄」の実行委員でもある元山仁士郎さんは、葛藤や具体的なアクションの方法について悩みながらも、差別や偏見、戦争などについて考える場、「ダメだよ」と言う場を作り続けたいと話す。

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 「自分自身、ウクライナ=善でロシア=悪というような構図にも少し躊躇するところがあったし、イベントとしても葛藤がありつつも、ウクライナだけでなく、ミャンマーなどあらゆる地域で暴力の危険に晒されたり被害に遭われたりされている方の声を聞こうということで場を設けることにした。アーティストの方々によるライブや、合間のMCは行ったが、シュプレヒコールのようなものは行わなかった。現地の家族や親戚とビデオ通話をしていたというウクライナ人の方にスピーチしていただき、被害に遭われている方々の声を聞けたことは意義があったと思うし、収益は全額、難民問題に取り組んでいる国連UNHCRに寄付をさせていただいた」。

 こうしたイベントが、当事国の為政者に届くのだろうか、という疑問の声もある。

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 「全く無意味ということはないと思っている。日本において発信することが戦争を止められる力になって欲しいと思うし、そう信じたい。ベトナム戦争の時もそうだったが、あらゆる地域で反戦の声が上がっているということを指導者たちは感じるはずだし、歯止めとしての影響を与えることもあると思う。著名人の方々にも、“戦争反対”、あるいは差別やヘイトスピーチなど、“ダメなことはダメ”と言うことについて、迷いも含めて発信してほしいと思っている」。

■政治学者・五野井郁夫氏「自由を守るために声をあげるということだ」

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 元山さんの話を受け、『「デモ」とは何か』などの著書がある高千穂大学の五野井郁夫教授は次のように話す。

 「実際、ベトナム戦争では、戦争を仕掛けた側のアメリカ国内のみならず、世界中に反戦運動が広がった結果、手を引かざるを得なくなった。あるいは今もロシアの脅威があるバルト三国でも、80年代後半に人間の鎖を作ることによって武力によらずソ連からの独立ができるようになった。90年代の終わりにも、途上国が苦しむ先進国への債務などを救済しようと世界の人々が声を上げた結果、サミットで“借金棒引き”が議論されることになった。

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 もちろん、日本でこうした声を上げたところでどうなるのか、と言われると難しい部分がある。しかしあらゆる地域で運動が起こることで、“どう考えてもロシアがおかしいのではないか”といった国際世論を作っていくことができるし、“ロシアとの貿易に付いている政府の予算を止めた方がいいのではないか”といった国内世論につながるかもしれない。そして、中立を保つ中国やインド、ブラジル、マレーシア、ベトナムといった国々に対しメッセージを送ることにもなると思う。

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 そこでポイントになるのが、著名人の存在だと思う。例えばGLAYのファンやEXITさんに注目している人々は国内外にいる。そういう人々に対し“気付き”を届けることができれば、例えばロシアに対して中立の立場を取る国々への働きかけにもなるのではないかと思う。かつてのようにゲバ棒を振り回すような暴力的なものは不可能だと思うし、やるべきではないと思う。そんなところに誰も行こうとは思わない。そして、日本は著名人が政治的な発言をすることは難しい。しかし“戦争反対”だけはなんとか言えるのではないか。5日に新宿で行われた『No War 0305』に参加したアーティストも、“自分でもまだモヤモヤしてるんだけど、でも人殺しはいけないねとは言える”と言っていた。

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 その意味では、国会前や官邸前での“尖った運動”というよりも、新宿や渋谷、那覇での共感できて“乗っかれるような運動”、もっと言いえば“インスタに載せられる運動”のようなものが大事になってくると思う。例えばこのスタジオにいる男性の多くが派手な髪型をしている(笑)。しかしプーチン大統領は“こういう髪型は男らしくないから不可だ”と言っている。そういう専制政治や権威主義体制の国々に対して、音楽やお笑いも含め、自分たちがやりたいことをやれる自由を守るために声をあげるということだ」。

■EXIT兼近大樹「ロシアの人々が苦しむことを考えると…」

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 実際、欧米では有名人、著名人が反戦を呼びかける動きが加速している。例えば元イングランド代表のデヴィッド・ベッカム氏は自身のInstagramのアカウントをハリコフの医師に委ね、激戦地の現状を発信するサポートにつなげようとしている。

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 しかしEXITのりんたろー。は「チャリティーに関して言えば“偽善者上等”というか“良いものは良いじゃないか、やらないよりはましだろう”というタイプだが、戦争に関しては、例えば支援をすることが長期化や犠牲者の増加につながることはないのだろうか、という疑問が出てくる。だからメッセージ一つ発信するのも慎重になってしまっている部分がある。仮にロシアが孤立して核を落とした時に、僕が言ったことは正しかったのだろうかと後悔するようであれば、やっぱりまだ声をあげるべきではないのかな、自分にはまだ無理なのかなと思ってしまう」と複雑な心境を吐露。

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 兼近大樹も「もちろん戦争には反対だが、この場合の“中立”が分からないし、何をしたらいいのかも分かっていない。だからすごく慎重になっている。例えば僕が経済的制裁を強くしていこうと訴えた結果、罪のない、何も知らないロシアの人々が苦しむことになる。そう考えると、“締めつけろ”と叫ぶことがどうしてもできない。逆に言えば、そういう自分の中にある芯のようなものを持ち続けていくということが大事なのかなと感じている」と応じた。

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 一方、GLAYのギタリストHISASHIは「いつもこういった局面になると、音楽にどのくらいの力があるのだろうか、と考えてしまうが、諦めたら終わりだとも思う。音楽で止められないものもあるが、逆に止められるものもあるだろうし、意味がないと言ってしまえば、以降、ずっと意味がないということになる。あるいは僕らができることはそんなに大きなことではないし、できないことも多いが、その中で僕らは何をするんだろう、ということに繋げることが大切だと思う」と話す。

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 「昔は“言霊”のようなものはあまり好きじゃなかったが、最近になって信じるようになってきた。発することによって伝わったり、波紋のように広がっていったりすることもある。極東の日本で、ヨーロッパの人にどれくらい聞いてもらえるのかはわからないが、子の世代、孫の世代の国際情勢も考えながら、まずは希望を持ってリスナーの方に向けてGLAYのライブ会場の幸せな雰囲気、GLAYが持っているピースフルなものを届けていければいいなと思っている」。

■プロデューサー若新雄純氏「湧き上がる感情をぶつけるのがロックだ」

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 議論を受け、プロデューサーで慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「中学時代にV系バンドを聴いていた経験が最近になって意味を持つようになったと感じる」と指摘。その上で、「現代人の“不自由さ”の一つは、すぐに“意味あるの?効果あるの?”と言われてしまうこと、考えてしまうことではないか」と問題提起した。

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 「元気がないとき、人に“この曲聞いてみたら”と言われて、“音楽で元気になったら病院いらないじゃん”“科学的根拠は何?”という返事はしないだろう。効果があるとすれば、出てくるまでに時間がかかるということが大事なわけで、デモが今の戦争をすぐ止められるかというとそうではない。しかし5年後、10年後、あるいは100年後、1000年後に起きる戦争に影響を与えることはできるかもしれない。人間は過ちを繰り返すものだし、だからこそ普段から声を上げて、人々は黙っていないんだぞ、という歴史を残しておくということではないか。

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 そして、“お前そんなことばっかりやっていると、就活で不利になるよ”とか“それ意味あるの?”とか言われて怯むのは“ロックじゃない”ということ(笑)。“それで不利になる就活ってなんだ”とか、“すぐに効果が出ないからといってやらないのは人間としていいのか” みたいなことを問い続けてきたのがロックではないか。すぐには答えが出なくても、湧き上がる感情をぶつけることで何かが繋がったり、動いたりするのがロックだったのではないか。みんなに確実に褒めてもらえて、確実に効果があると思われることしかできないのは面白くない。日本からロックが消えたのは、そういう理由だと思う。理屈じゃなくて格好いい。熱くなれるんだというのを示すことだと思う」。(『ABEMA Prime』より)

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