三国志はスピンオフの元祖で宝庫?専門家「王朝の力が弱まり、みんなが自由に書けた」中国では稀有の時代
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 中国のみならず、日本でも高い人気を誇る三国志。西暦200年年代に魏・呉・蜀の3つの国を中心に戦国乱世の時が続いたが、蜀の君主・劉備を中心に描かれた物語は、日本でも小説、漫画、アニメ、ゲームなど、様々な形になって楽しまれている。多様に楽しまれるのも、主人公として書かれることが多い蜀の劉備の視点だけでなく、魏や呉の立場、さらには各国で活躍した武将にそれぞれのストーリーがあり、そこにもまた深みがあるからだ。三国志を研究し著書もある佐藤大朗(ひろお)氏によれば、歴史書の『三国志』が伝える武将たちの記録は現代風に言えばスピンオフの元祖でもあり、また宝庫で、それには「王朝の力が弱まり、みんなが自由に書けた」という時代背景があったからだという。

【動画】4月期放送TVアニメ「パリピ孔明」

 中国・三国時代は、今から約1800年前の話。中国の広大な地に多くの君主が存在し、我こそは統一する者とばかりに、戦いを続けてきた。後に蜀の天才軍師・諸葛孔明が考えたという「天下三分の計」にあるように、魏・呉・蜀に大きく分かれることになるが、これは約300年ごろに書かれた歴史書、さらに小説として1500年代までに書かれた『三国志演義』によって、現代にまで伝えられている。

 中国における歴史書は、その時の王朝が認めたものだけが残る、厳しい情報統制がなされていた。ところが、佐藤氏は「蜀に趙雲という武将がいますが、彼だけの『趙雲列伝』というものもあります。今で言えば、スピンオフがたくさん作られたのが三国志です」と説明した。本来であれば、1つの歴史の捉え方(ストーリー)だけが伝えられていくべきところ、いくつもの分岐があるのは、王朝の力が弱かったからだ。「王朝が弱かった分裂期は、三国時代から始まって400年間ほど続きました。その時代はみんなが歴史を書き残しやすかったんです。王朝も入れ替わるので、みんなが自分の家をもり立てるために、祖先や自分がいる地域がいかに優れているかというのを自分の筆で証明していかないといけない時代でした。国が弱まったことで書ける環境ができた反面、地域の人々が生きた証しを残そうとする現実的なニーズもあって、三国志が盛り上がることになりました」。

 絶対的な力を誇る王朝があれば、歴史書もその一点を集中して書くものになっただろうが、いわば各地の武将がみな主人公状態だった。武将が治めていた地域に住む人々からすれば、自分のいる場所こそが正義、と伝えたくなるのも自然な話だ。こうして、様々な書き方が合わさって、一大エンタメ作品として作られたのが小説『三国志演義』。日本で知られる武将たちの数々のエピソードも、すべてが史実として残っているわけではなく、この『三国志演義』に記されたものがとても多い。代表的なところで言えば、諸葛孔明が赤壁の戦いで10万本の矢を集めたというエピソードも、史実には出てこない。ただ佐藤氏は「史実にないからダメなんじゃなくて、蓄積やバージョンが多いのも三国志の強さです。『三国志演義』のエンタメ性がなければ、ここまで広まることもなかったでしょうし、現代ではファンの側からより正史に近づけていこうという動きも盛んです。むしろエンタメ作品から入り、正史を掘り下げる研究者が出てくるというのが、三国志のおもしろさだと思います」。この『三国志演義』をベースに生まれた吉川英治作の小説『三国志』、さらに横山光輝氏に漫画・アニメ『三国志』は日本で大ヒットし、これらの作品をきっかけに日本の研究者が増えたといっても過言ではない。

三国志はスピンオフの元祖で宝庫?専門家「王朝の力が弱まり、みんなが自由に書けた」中国では稀有の時代

 この4月から、また新たな三国志の楽しみ方が増える。アニメが放送開始となるTVアニメ「パリピ孔明」だ。戦いに敗れ、死期を悟った諸葛孔明が、ふと気がつくと現代の渋谷に一人、転生しているところからストーリーが始まる。クラブにいた歌手志望の女の子・月見英子の声に惚れ、軍師として手腕を発揮、デビューを目指すというストーリーだ。諸葛孔明自身がパリピとして舞台に立つのではなく、若者たちを応援する立場ではあるが、佐藤氏によれば『三国志演義』で描かれる諸葛孔明は、なかなかのパリピだそうだ。「敵が来た時に口先で煽ってみたり、敵軍が攻めてきたのに自軍の守りが少ないため、城門をあえて開いて琴を弾いて挑発してみたり。史実の孔明は、もっと真面目で付き合いづらい人だったと思います。権力争いも戦争も、手堅いのが彼の売りだったところもあります。史実よりも演義の方がパリピで、その発展系、上位互換としてTVアニメ『パリピ孔明』があると思っています」と、クラブ内では“舌戦”よろしくDJバトルまでするあたりに、思わず笑いもこみ上げた。

 約1800年前、何万という兵たちが戦いあった歴史が、数々のエンタメ要素を取り込み、その一部を切り取り、現代では歌手の軍師という奇想天外なスピンオフ作品にまでたどり着いた。「断片的でもいいので、三国志をもっと楽しんでもらえたらなと思います。今まで三国志というと、長い本を読んで知識を蓄えないと三国志ファンを名乗れないような雰囲気がありましたが、この『パリピ孔明』は、孔明のキャラの面白いところだけを切り取っているので、予備知識が不要で、今風の楽しみ方ができるという気がします」と佐藤氏も、大いに楽しんでいる。これ以上なく、三国志を自由に描いたTVアニメ「パリピ孔明」。見ておいて損はない。

(C)四葉夕卜・小川亮・講談社/「パリピ孔明」製作委員会

【動画】TVアニメ「パリピ孔明」第1話
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