この男は何を企んでいるのか。プロ将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」で、初のリーダー棋士を務めることになった山崎隆之八段(41)。過去には個人戦、団体戦どちらにも出場し、大慌てする戦いぶりだけでなく盤外でもドキドキしながら仲間の様子を見守ったり、チーム動画でパニックになったりと、ファンを最上級に楽しませてきた。初のドラフト会議参加を前にしたインタビューでも、その山崎ワールドは全開。「構想?固まっているんですけど、これはかなりまずい。正直まずい。うちから手紙出して、代読してもらえれば済んだんじゃないかと…」と、まるで検討がつかないヒントを出してきた。
公式戦の早指し棋戦では数多くの優勝歴がある山崎八段だが、この持ち時間5分・1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールでは個人戦のころから苦戦続き。「初めて出た時は切れ負けぐらいの感覚で、圧倒的な弱さでトラウマになった」と苦笑いしたが、団体戦では仲間の支えもあり徐々に活躍。「すごく注目されるのが励みにもなりますし、適性の高い棋士との練習が大事なので(大会前は)日々、ABEMAを中心とした生活になります」と、過去の苦い経験を糧に、徹底的に対策を練っている。
昨年は、糸谷哲郎八段(33)から指名を受けると、チーム動画でもバンジージャンプにゲテモノ食いと大活躍した。また一緒に戦った服部慎一郎四段(22)は、後に公式戦でも当たり敗北。「(服部四段が)びっくりするくらいの活躍で『えっ!?こんなに勝ってんの!?』というぐらい。ブレイクした伊藤匠さん(五段)もそうですが、若い人たちは注目されて、普段当たらない棋士と戦うことで、すごい成長力あるんだなと思いました」と、若手の勢いに目を丸くしたこともあった。
盤上でも盤外でも盛り上げ上手な山崎八段。ではドラフト指名はどうするか。構想を聞かれると「自分自身でも正直まずいと思っています。エース級の人を指名しても、その人を活かせる自信がないので、ちょっと、こう、なんだろう、『マイナスにマイナスをかける』というイメージです」と答えた。さらには「自分でもブーイングを浴びてもしょうやないと思うのでちょっと怖いんですけど、周りのことは考えず。自分、いつも適当なんで」と続けた。つまりは、他のリーダー棋士が誰も指名しないような、そんな棋士を集めて好きに戦う。こういうことだろう。
大会の意気込みを聞かれても「目標は予選1勝(笑)。予選突破が優勝、みたいなチームだと思うんで。これを言ったら、選んだ人が怒るかな(笑)」と山崎節が止まらない。ただ「個人的には予選勝ち越し。曲がりなりにも出場させていただいている回数が多いし、経験値も上がってきたので勝ち越し以上、できれば倍ぐらい勝ち越したい欲望があります」と棋士としての意地も見せた。棋風同様、何が飛び出すかまるでわからない山崎八段のドラフト構想。まさに“初手”が出るまで、目が離せない。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)