先輩から学んだことを、今度は後輩へ。プロ将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」のドラフト会議に参戦するリーダー棋士の一人、稲葉陽八段(33)の構想はずばり「年下の棋士」だった。前回の第4回大会はリーダーとして先輩2人を指名、また師弟トーナメントでも師匠と組み、いずれも年上の棋士とともに戦った。「年下の人と組んでみてどうなるかやってみたい」。自身も30代半ばに差し掛かる年齢になったが、後輩を引き連れてどんな戦いを目指すのか。
昨年の同大会では久保利明九段(46)、船江恒平六段(34)と「チーム加古川」を結成、また師弟トーナメントでも井上慶太九段(58)と組み、この時も「棋士のまち」加古川のはっぴを着て登場した。存分に加古川のPRを務めたという役目も果たし、今回は異なるコンセプトで戦うことにした。
団体戦のおもしろさ、難しさはよくわかった。「チームが負けている時に、どう巻き返すかは難しい面がある。取り返さないと、と力みすぎて余計に悪化することもありますし、助け合って巻き返せる時もあります。チーム戦は流れが大きいですね」と、土壇場まで追い込まれてからの逆転を繰り返した稲葉八段だけに、説得力がある。超早指しのルールには慣れてきたが、練習で指せたものが本番で指せなくなる、ましてやチームが窮地の時に練習の成果が出せるかというと、また別物。それがまたおもしろさでもあるという。
昨年はリーダーながら先輩2人の力を借りる、という雰囲気だったが、今回は勢いもあり成長著しい若手に白羽の矢を立てることにした。「選ばれることがモチベーションになって活躍するパターンもありますね。選ぶ側は早指しが得意かなというのを考慮しています。選ぶからにはそれなりに活躍してくれることを期待します」と、単に若手に経験と成長の場を与えるだけでなく、しっかりと結果も求める。その飢えで「前回のベスト4を見ていると、リーダーが7割ぐらい勝っている。まず自分自身が活躍して、その上でチームメイトと戦っていきたいです」と、強いリーダーシップを発揮することも誓った。自ら“兄貴分”として戦うことを選んだ稲葉八段。今年は一味違う。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)