インターネット上に溢れる医療の情報サイトやブログ、つぶやき……。気軽に調べられて便利だが、その中に正しい情報は一体どれくらい存在するのだろうか。
日本医科大学武蔵小杉病院・腫瘍内科教授の勝俣範之医師はこう語る。
「米国では公的機関や学会、一般の団体なども、相当数の信頼できる正しい情報がどんどん発信されています。(日本では)学会や公的機関が出しているようなガイドラインにもとづいた医療記事が、ガン関連の記事で約10%しかありません。日本のインターネットは見ない方が患者さんにとってベターなぐらいです」
【映像】「ビタミン剤がニキビに効く」は“根拠ナシ”(実際の記事内容)
そんな危機感を抱いた医師たちが立ち上げたWebメディアが「LUMEDIA(ルメディア)」だ。LUMEDIAの一番の特徴は、現役の医師が自らライターとなり、記事を執筆。徹底的に裏取りをした上で掲載している。
実際にLUMEDIAのライターで、東京医療センター・臨床研究センターの山東典晃医師は「はるかに厳しい査読プロセスがある」と語る。
「LUMEDIAのライターは、論文や各学会などが集めた比較的信頼の高い情報源をもとに記事を書きます。その後、完全に第三者の医者が“査読”と言って、どこの論文からその文章が書かれているのか逐一チェックを行います。最終的に編集長のやさひふ先生がチェックをしてオーケーが出た後、初めて記事になります」
【LUMEDIAの記事公開プロセス】
(1)医師が論文を参照して執筆
(2)執筆者以外の医師が検証
(3)医師である編集長がチェック
「医師が本気になって行う査読は、正直申し上げて、私が投稿している論文よりも、はるかに厳しいです。なかなか記事も通りませんが、それぐらいしっかりと情報源にあたって記事を作っています」
一方で、専門的であるが故に「分かりやすさ」が今後の課題だという。
「多くの学生インターンにも手伝っていただき、彼らにも記事を作るプロセスに入ってもらっています。例えば『こういうところが一般の方だと分かりにくいと思います』とチェックをもらうことがあります。手伝ってくださっているインターンへの給与の支払いは、我々が払っています。やはりこれを持続的に続けるためには、将来的に少なくとも組織を回す最低限の収益化をしないといけません」
今年始まったばかりのLUMEDIAの取り組み。実は、LUMEDIAは医師たちが本業の合間に自費で運営している。クラウドファンディングに挑戦し、800人以上から800万円以上の支援が寄せられているが「まだ十分ではない」と山東さんは話す(※数字は3月31日時点のデータ)。それでもLUMEDIAを続ける背景には「日本語でも正しい情報を届けたい」という使命感がある。
「公衆衛生において健康な生活を実現することも、医師法で定められている医師の役割です。しかし、日本語でしっかりと正しい情報を専門家が裏付けして提供されているソース(情報源)が今のところほとんどないと言ってもいいでしょう。『日本語でもLUMEDIAならきちんとした情報が得られる』『医療情報といえば、LUMEDIAだ』と思っていただけるところに持っていきたいです」
バイリンガル医師のニコラス・レニック氏も同メディアを応援している一人。ニュース番組『ABEMAヒルズ』に出演したレニック医師は「日本の医療メディアはソース(情報源)の裏付けがほとんどない」と話す。
「海外の医者として日本に来たとき、日本語で(患者に)推薦できるWebサイトが本当に限られていることに驚きました。英語圏であれば、例えば、ハーバード大学やアメリカ疾病予防管理センター(CDC)などが、一般の人に向けて積極的に情報発信をしています。英語圏ではそういった質の高いWebサイトがたくさんある一方、日本では個人のクリニックやどこかの病院のWebサイトが主流です。中には質の高い情報もありますが、質がピンキリで、一般の人から見てどれが正しい情報で何が信頼できるのか、見極めが難しい状況だと言えます」
病気に対して不安な気持ちを持つ人に、どのように医療情報を伝えるか。日本でも“案内役”を担うメディアが求められているのかもしれない。(『ABEMAヒルズ』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側