妊娠・出産する妻にモラハラ発言を続ける夫が、ある日、突然“男性が出産をする”架空の世界で、「妊夫」となって目覚め、つわりなどの妊娠・出産のつらさを体験するストーリーを描いた漫画が話題を集めている。
主人公は結婚したばかりの男性、真也。妻・真綾が妊娠しているにも関わらず親になる実感がわかず、つわりで苦しむ妻を横目に、いつも冷たい言葉を投げかける。
「わがままではないけど、子ども欲しいって言ったのは真綾だからな」
「具体的に何したらいいか教えてよ」
「男は産めないからよく分からないしさ」
真也の「無理解・無関心」は出産後も……。一方、真綾は慣れない育児に加え、育児に協力しない夫の言動で次第にストレスが限界になっていた。
そんなある日、真也が目を覚ますと、自身が身ごもっていた。
真綾「何言ってんの!?女が出産出来るわけないじゃん!これから出産するのはお前だろ!真也!」
そう、真也がいたのは「男性が妊娠をする」という異世界。突如、真也は”妊夫”として生活することになったのだ。これまで、経験したことのなかった妊娠中の辛さ、そして妻にしてきた言動がブーメランのようにはね返ってくる。
物語の作者は、現在2人の子どもを持つしおのこうじさん。「男性が妊娠・出産をする」というストーリーにした思いを明かす。
「私自身が、つわりで悩まされた時期に、旦那に変わって欲しいと思ったのがきっかけ。こういう辛さというのは、経験しないと分からないというので、だったら経験してもらおうと書かせてもらった」
女性だけでなく、男性にも見てほしいという思いからあえて、男性の妊娠をテーマにしたというしおのこうじさん。
毎回、漫画の最後には、子育て世代に向けたアドバイスも掲載。「夫婦の新たな気付きになれば」と期待を寄せている。
「男性に妊娠漫画を読ませるのは、なかなかハードルが高いと思うので、奥さんが例えば『最後のこのコマだけでも見てみて』というふうにしてもらえばいいかなと思って。最後に男性に向けて書かせてもらっている。パートナーである方に見てもらって、『なるほど』と思ってもらえたら」
物語後半では妊娠・出産という経験を経て、真也の妻への気持ちが変化していく一コマも。相手のことを理解し、つらい時もパートナーに寄り添う。「男性の妊娠」という奇想天外な物語の裏には、夫婦生活を円満に送るためのヒントが隠されていた。
「挨拶や感謝など、そういう基本的なことが本当に大事なことだと思う。漫画を通して何も知らない人でも、『こんなことをしてるんだ』など知っていることで、少しは周りに対する意識が変わると思って書いている。もし読んでもらえるのであれば、男性にどうしても読んでほしいと思う。特にまだ結婚の予定もないような若い男性が読んで、『こんな感じなんだ』と知ってもらえるうれしい」
ニュース番組『ABEMAヒルズ』コメンテーターのバイリンガル医師で3児の父・Dr.レニック氏は、オーストラリアの妊婦・出産事情を明かした。
「海外のほうが、妊婦や出産のつらさを真剣に考えている印象がある。『分娩は痛いけど、自然なことだからしょうがない』『つわりは辛いけど、あなたが子ども欲しいからしょうがない』などの考え方は、まったくない。つらいことは自然であろうと、不自然であろうと関係ない」
さらにレニック氏は「海外では病気と同じで、つわりでつらいときに薬を出してくれる」と明かした。また、「つわりの薬」の処方について「赤ちゃんに対する安全性もしっかり確認されているし、1956年から処方され続けている」とも述べていた。
海外に比べて、妊娠・出産の理解度が低い傾向の日本。妊娠・出産のつらさを取り除いて、女性にかかる負担をもっと減らしていく必要があるのかも知れない。(『ABEMAヒルズ』より)