20年ぶりの円安基調、なぜ…? “生活防衛策”は外貨資産を増やし、ブランド物を買うのをやめて投資すること?
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 13日の外国為替市場で1ドル126円台をつけるなど、およそ20年ぶりの円安基調が続いている。

 先月16日、背景にあるのは、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会による、物価上昇抑制のための政策金利引き上げだが、一体どういうことなのだろうか。14日の『ABEMA Prime』では、元大蔵官僚で慶應大学大学院の小幡績准教授に話を聞いた。

■「今の円はイケてない、ということ」

20年ぶりの円安基調、なぜ…? “生活防衛策”は外貨資産を増やし、ブランド物を買うのをやめて投資すること?

 まず、何が為替相場を動かしているのか?その根本的な問いに小幡氏は「実は謎だ。私は一応、経済学者だが、教科書にも“3つぐらい考え方はあるが、決まった理論はない”と書いてある。いわば雰囲気とノリで決まる、つまり今の円はイケてない、ということだ」と笑う。

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 「古典的な経済学の考え方では“購買力平価”というものがある。例えば“ビッグマックプライス”という指数がある。これはアメリカで買っても日本で買っても、同じビッグマックなら同じ値段のはずじゃん、アメリカで1個3ドル、1ドル=100円なら、日本では300円のはずじゃないかと。しかし実際にはそうではない。実際、ブランドものでアメリカの方が安ければ、それを買い占めて日本で転売すれば儲かるということになる。“並行輸入”とか“個人輸入”というものだ。

 ではなぜ同じものなのに、値段が違うのか。また、長期的に見て正しい水準である“均衡為替レート”が成り立ってないのか。それは“金利”で決まるからだ。僕らがイメージする“リアルエコノミー”、“物の市場”は経済学的には財市場、あるいは実体経済と呼んでいるが、そうではない金融市場というものがある。お金とお金の交換比率も為替市場という金融市場で決まってくる。そこに金利の話が出てくる。

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 つまりアメリカの金利が上がるということは利子が増えるということだ。まず、それぞれの国で、国債の利子率というコンセンサスがある。アメリカの10年物では2.5%、つまり100円の国債を持っていれば2.5円もらえますということになっている。それが日本はほぼゼロで、0.25%までは許すが、それ以上は日銀総裁の黒田さんが乗り出して押さえ込むということをやっている。ということは、アメリカ国債なら1万円分に対して毎年250円もらえるのに、日本なら25円がマックスだ。

 そうなってくると、今までは日本国債を持ってたけどバカバカしい、アメリカ国債の方が得じゃんといって、お金を移そうとする。“円を売ってドルを買う”。だからドルが上がって、円は下がる。こういう理屈で決まっているということだ。その意味では、為替レートというのは投資家たちの都合で動いてしまうし、物だけ買ってる我々は“あれ?”となる」(小幡氏)。

■「政治家がようやく気付き始めた」

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 鈴木財務大臣は13日、「やはり為替の安定ということは大切だ。特に急激な変化というのは、これは大変に問題である」と述べている。

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「ドルに対して円が安いということは、お札が安物になってしまう、物々交換で考えれば買う力が弱くなるということだ。今、モノの半分くらいはグローバルの影響を受けているので、例えば円が弱くなるとアラブの王様が良い競走馬を買っていっちゃったり、ロシアから天然ガスが輸入できなくなったときに、日本だけ買えなくなったり、といったことが起こりうる。

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 そして、円を持っていたら貧乏になるということだ。最近、日本人の給料は世界一安いと言われるが、それは円を持っているからでもある。それなのに“円高だと困る”という一部の人の意見を聞きすぎていた。今やっと、“自国の通貨が安くなるのは損じゃん”ということに気づいたということだ。政治家たちも遅れている人たちなので、電気代が高いと庶民が暴れて選挙で負けるぞと気付き始めた。だから円安はやめてくれと言っている。それなのに日本円を供給している“通貨の番人”である日銀だけは通貨を安くしようとしているということだ。

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 その理由を説明しようとすると長くなるが、日銀は“日本の景気が悪くならないよう、0.25%以上には上げない”と約束をしてしまっているということが大きい。それが金融政策というものだ。ここで約束を破ると、“あいつ信用できないじゃん”ということになる。日銀は真面目だし、今までの話と整合性をとっているので、円安が止まること、日銀が考えを変えることを祈るしかない(笑)。

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 ただ、世界的に金利も上がってきたし、企業間物価は9%上昇している。日本もこれから実質的にインフレになるし、金利ゼロもやりすぎなので、金融政策の正常化、つまり今までの異常に緩和しすぎた部分を少しずつ変えてくると思う。IMF(国際通貨基金)などは5年くらい前まで1ドル95円が適正だと言っていたが、貿易や実力を見ていると、私も90〜95円くらいが妥当だと思う」(小幡氏)。

■「ブランド物を買うのをやめて投資だ」

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 ただ、輸出産業にとっては円高よりも円安の方が良い、というイメージもある。ところがユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は14日、「円安のメリットは全くない。日本全体からみたらデメリットばかりだと考える。やっぱり円安のメリットみたいなことを言っているのは企業の人だけだ。それも決してメリットではない」と批判している。どういうことだろうか。

20年ぶりの円安基調、なぜ…? “生活防衛策”は外貨資産を増やし、ブランド物を買うのをやめて投資すること?

 「今のユニクロは、売り上げの半分以上は海外だ。株も海外の投資家が買っているから、柳井さんの頭の中は“ドル思考”だ。つまり日本で1000億円儲かったとしても、ドルや人民元に換算すると少なくなっていっているということだ。

 他の輸出関連企業も、間違いに気付き始めている。1ドル200円のときには200万円の車が1万ドルだが、1ドル100円になれば2万ドルになるじゃんと言うが、200万円の価値があるというのなら、はじめから2万ドルで売ればいい。メルセデス・ベンツだってシャネルだって、日本円が安くなると値上げしているじゃないか。

20年ぶりの円安基調、なぜ…? “生活防衛策”は外貨資産を増やし、ブランド物を買うのをやめて投資すること?

 それができないのは、自信がないから、安くしないと売れないと思っているからだ。だから価格を維持しようとするし、それは円で言えば値下げをするということだ。でも給料は値下げできないし、利益が減って経営者は困る。だから工場を移すわけだ。柳井さんも最初は中国で作っていたが、賃金が上がってきたのでベトナムに、さらにカンボジアに移した。次はミャンマーに行くかもしれない。そうやって、日本人は世界最低水準の賃金と戦わないといけなくなっていく」(小幡氏)。

20年ぶりの円安基調、なぜ…? “生活防衛策”は外貨資産を増やし、ブランド物を買うのをやめて投資すること?

 最後に、個人に資産防衛はと問われた小幡氏は「これから日本は貧しくなっていく。物が値上がりする前に買っておくという考え方もあるかもしれないが、“それよりも資産や給料全体が下がるんだからものを買うのをやめた方がいいよ”ということだ。ほとんどの方は資産を円で持っているので、外貨資産を増やすとか、ブランド物を買うのをやめて節約し、その分、投資だ」と話していた。(『ABEMA Prime』より)

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