およそ6000人の隊員を抱える、陸上自衛隊北部方面隊第7師団(北海道)。日本で唯一となる戦車部隊中心の師団で、200両以上が配備されている。
主力の90式戦車には、操縦手と戦車砲や機関銃を撃つ砲手、そして全体の指揮を執る車長の3人が搭乗する。「本当に爆音と轟音で、とても破壊力があって。そこが魅力の一つかなと思います」。そう話すのは、車長を務めながら、4両の戦車小隊を率いている小隊長の中田実優3等陸尉(25)だ。「右って言ったのに左に切る子もたまにいるので、止まれ!みたいにちょっと怒ったりとか、そういうこともありますね(笑)」。
【映像】自衛官以外は入れない90式戦車の内部を撮影、さらに大演習場での訓練の様子も
戦車は大型特殊自動車であるため、専用の資格の取得が必要になる。また射撃訓練には準備が欠かせない。「照準を合わせる作業ですね。レチクルといって、十字線が切ってあるんですけど、ズレるので。砲も鉄なので、日光が当たると垂れてきちゃったり、風に煽られてズレたりしてしまうので」。
愛知県出身の中田3尉にとって、初の勤務地となる北海道の気候は違うことだらけ。「全然違いますね。(4月上旬になっても)桜も全く咲きませんし。雪かきもすごく大変でした」。
そんな中田3尉が率いる小隊は、去年の射撃訓練大会で優勝を勝ち取っている。「訓練して、隊員のみんなと話し合って。何ができなかったのか、できたのか。じゃあ次どうするのかっていうことを分析し合った結果だと思っています」。
2月に始まったロシア軍によるウクライナ侵攻。下院議員が「ロシアは北海道の権利を有している」などと発言、北方領土では軍事演習も頻繁に行われている。さらに日本海では迎撃が難しいとされる、潜水艦からの巡航ミサイルの発射も行った。
ロシアが万が一上陸した場合などに備え、戦前から戦車部隊を中心とした戦力を北海道に配備してきた日本。第7師団北恵庭駐屯地司令の梅田宗法1等陸佐は「今回のウクライナへの侵略行為は国際社会の根幹を揺るがすような行為です。私個人としても深刻に受け止めています」「北をしっかり守るということは、冷戦時に自衛隊ができてから今も変わらないと考えています」と話す。
その中枢を担う第7師団の戦車部隊は警戒を怠らず、任務の遂行に邁進する。北海道大演習場で行う訓練について、中田3尉は守りに重点を置きながら訓練の意識を高めていると説明した。
「がっちり守る防御じゃなくて、敵と当たった時に、そこで足止めをして侵攻を遅らせるという形の防御の訓練をしています」「植生の陰や稜線の下で、なるべくばれないように戦車を隠したり、また、障害を設置して敵を止めたところを射撃したり、そういう訓練をしています。国民を守るという意識は常に持っていますし、もちろん今も高まってきています。与えられた任務を達成できるよう、訓練に励んでいきたいと思っています」。(ABEMA NEWS)