“もうすぐネオナチを駆逐し、ウクライナが手に入る”と言っている知人もいる…モスクワ大使館勤務の経験を持つ齊藤啓輔・余市町長
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 16日のABEMANewsBAR橋下』に、外交官としてモスクワ大使館勤務の経験も持つ齊藤啓輔・北海道余市町長が出演した。

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 2004年に外務省に入省、ロシア語の語学研修を命ぜられた、翌年に現地に赴任すると、市場などでの市民との会話、あるいはメディアや政府関係者との会食など、ありとあらゆる場面・階層から情報収集を行っていたという齊藤町長。

 ロシアの独立系世論調査機関が発表した3月下旬の調査によると、プーチン大統領の支持率はウクライナ侵攻前から12ポイントアップの83%、ウクライナへの侵攻についても81%が支持しているという現状について、次のような見方を示した。

 「我々が見ているニュースとロシア国内で見られているニュースは違うと思う。私もロシアの友人たちとテレグラムなどを使って今もやり取りをしているが、やはり“我々の方が正しい”と言う人は多いし、“もうすぐネオナチを駆逐し、ウクライナが手に入る”みたいなことを言っている人もいる。やはり、ある程度の“言論統制”、マインドセットはできているように感じている。調査機関のデータが“上乗せ”されたものであることは間違いないと思うが、傾向として、プーチン政権を支持している人たちが一定数いることは確かだろう」。

 一方、西側による経済制裁による影響が広がることで、こうした状況も変化していく可能性があるという。

 「最初にプーチン大統領が支持を得たのは、ボロボロだったロシア経済を一気に立て直したということがある。他方、今はプーチン大統領の行動によって非常に強い経済制裁が課せられ、経済はどんどん苦しくなっていっている。もちろんテレビや新聞を通じた“言論統制”もできるが、SNSを完全に統制することはできないし、私の友人たちのような30〜40代、あるいはさらに若い世代になってくると、EUに親近感を覚えている層もかなりいる。スターバックスでコーヒーが飲めない、FacebookやInstagramが使えないといったところからも、じわじわと効いてくると思う」。

 その上で齊藤町長は、今後について「どこが目指すべき最終ラインなのかというのをきちんと設置した上で交渉を行わなければならないと思う」と指摘する。

 「今回の戦争は、2008年の南オセチアから続く紛争の流れというような歴史軸で見ることができると思う。その意味では、まさにNATOとロシアとのぶつかり合いだし、NATOとしては基本的にヨーロッパの安全保障にアメリカを巻き込みたい、アメリカの核の傘に入れようというようなストーリーだ。やはり最終的にはアメリカがきちんと交渉に入らなければならないと思う。日露戦争も同様の状況で、戦費を使いすぎたニコライ2世が後に倒されることになるわけだが、やはりアメリカが入ってポーツマス条約が締結された。

 しかし、あまり日本では報じられていないが、4月5日のホワイトハウスの会見の中で、記者が“ブチャで非常に悲惨なことがあったけれども、アライアンスの国とアメリカは行かないのか”みたいな質問が出た。すると報道官が“NATO軍とアメリカ軍が行くということか”と聞き直し、“もちろんアメリカはアメリカ・ファーストでアメリカの利益を守るし、アメリカ人が第一だ。我々はロシアとの戦争はしない”と明確に答えている。これが今のアメリカのスタンスなのかと思った。もちろん一義的にはアメリカが交渉についてくれるのが一番いいが、それまではヨーロッパの主要国がきちんと外交で説得すべきだと思う」。

“もうすぐネオナチを駆逐し、ウクライナが手に入る”と言っている知人もいる…モスクワ大使館勤務の経験を持つ齊藤啓輔・余市町長
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 橋下氏は「アメリカが本当に介入してしまえば、今度はアメリカとロシアの戦争という、とんでもない事態になる。だから一定の線を引いているんだ、というのはよくわかる。ただ、政治的な交渉の中に入るというのは別だと思う。今のアメリカはそこについてもウクライナに任せるんだと。しかし今の国際秩序を守ることで利益を得るのは、やはりアメリカも含めた西側諸国だ。日本も国際秩序が重要だと言っているけれど、利益を得る西側諸国は血を流すことなく、ウクライナ国民だけに西側の秩序を守らせようとするのは、やっぱり納得がいかない。

 そして、国内においては対外的に強硬な主張をした方が国民にはウケがいい。日露戦争でも、日本は勝ったけれど、十分な賠償を得られなかったということで国民が怒り、日比谷焼討事件も起こった。しかし外交は相手があって話だから、“玉虫色”にしておくのが最善策ということもある。NATO側が、ウクライナを加盟させないということはロシアに約束することではない、加盟するかどうかはウクライナの判断だと突っぱねたが、今回の戦争で、今になってウクライナの中立化が停戦協議のメインになってきたことを考えれば、“EUには加盟させるけれど、NATOは入れない”とか、フィンランド、スウェーデンのような方式のような方向性もあったと思う」と話していた。(ABEMA/『NewsBAR橋下』より)

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