国連難民高等弁務官事務所によれば、これまでに500万人以上もの国民が他国へと逃れたウクライナ。その多くがポーランドやルーマニアなど周辺国に避難したが、日本にも17日までに661人の避難民がやってきた。
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東京に住む小笠原裕典さんの妻・ヴィクトリヤさんの両親、そして姉・エウゲニアさんも、ウクライナ東部ドネツク州から別々のルートで来日。東京都から都営住宅と生活用品の支援を受けて暮らし始めた。
3月20日、一足先に日本に避難してきた両親を追い、12歳の息子を連れてドネツク州を出発したエウゲニアさん。小笠原さんと相談をしながら、スロバキア、ハンガリー、スイスを経由して日本へ来た。
小笠原さんは「なぜスロバキアやポーランドなどに滞在せず、わざわざ日本まで来たかといえば、他国にツテがない人達の居場所を奪わないためだ。これらの国々は、ただでさえいっぱいいっぱいだ。そこでこちらに家族がいる妻の両親と姉は、日本に来る、という選択をしたということだ」と説明する。
ドネツク州を発ち、スロバキアに向かった時の状況についてエウゲニアさんは振り返る。
「攻撃がどんどん激しくなり、自分の身にも危険が及ぶかもしれないという状況に怖くなり、“逃げるなら今しかない”と。バスで36時間かけてスロバキアに辿り着いた。一刻も早く向かうため、バスは一度しか停まらなかった。検問では何度もパスポートと顔をチェックされた。息子も大変だったが、小さな子どもたちは泣いていた。おむつもバスの中で交換していたし、お湯がないのでミルクも水で作った。赤ちゃんは“好きじゃない”という感じで泣いていた」。
ウクライナでは現在、18歳から60歳までの男性は出国が許されていないため、エウゲニアさんの夫もまた国内に留まっている。メッセージングアプリを使って連絡を取ってはいるが、電力や電波の状況は不安定だという。
「たくさんの家が破壊され、たくさんの命が失われた。私も多くの友人、知人を亡くしてしまった。本当に悲しく思っている。ただ、ロシア国民は何も悪いこともしていないし、恨みはない。それでもやはりロシア側がニュースで“ウクライナが悪い”と正当化していることは納得できない。とにかくもうこの状況に皆疲れているので、早く話し合いをして、平和的な解決に向けて動いてほしい」と訴えるエウゲニアさん。
小笠原さんも「ウクライナとロシアは今回の戦争が始まる8年前から冷戦状態にあり、ドネツク州はロシアに支配されている地域もある複雑な街なので、規制がかかってしまっている部分もある。先が見えないので、とにかく心配でたまらない」と、戦闘が激化する東部の状況に危機感を露わにした。
日本での暮らしで最も困難を感じているのは、やはり“言葉の壁”のようだ。
「日本人の明るさだったりとか、ウェルカムな温かさ、きれいな街、テクノロジー。大変なことよりも、サポートを頂いたことにも感謝の気持ちの方が大きい。ただ、あえて挙げるとすれば言語の問題だ。例えばバスの乗り方や鉄道の路線図は全く分からないので、両親も私も頂いた『ポケトーク』を使っている。一刻も早く日本語を学び、どんどん喋れるようになりたい。そのためのサポートがあるのなら、ありがたい」。
来週からは、息子が中学校に通う見通しになっているという。ヴィクトリヤさんは「もちろん日本語は一切喋れないので、家でひらがなの勉強を始めた。すごく緊張している」と甥を慮る。
そんな中にあっても、小笠原さん夫妻とともに、日本への避難を望むウクライナ人のサポートも始めている。ヴィクトリヤさんによると、「夫妻のYouTubeチャンネルには励ましのコメントのほか「どうやって逃げたのか、方法を教えて下さい」といったメッセージも寄せられているという。その一方、Twitter上には「コロナ禍で疲弊した日本人をもっと救って」といった批判的な意見も少なくない。
小笠原さんは「もともとYouTubeチャンネルを通して、国際的な家族の日常を英語と日本語で配信していた。妻の家族は僕の家族でもあるし、日本に迎え入れるということのリアルを伝えたいし、サポートもしたい。そして、日本がどれだけすごいサポートをしているかを伝え、感謝の気持ちも示したかった。
一方で、日本人の中にも支援が必要な人たち、支援が受けられていない人たちもいる。それなのにウクライナ人をサポートするということに対して快く思わない人たちもいると思う。そこは日本人として申し訳ないという気持ちもある。だからこそ、僕たちも余裕がある時には、困っている人たちをサポートして、ポジティブな輪をつなげていきたい」と苦しい胸の内を明かした。(ABEMA Prime』より)
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