家と仕事を同時に提供 求人サイトで“ホームレス支援”を行う女性社長の決意
【映像】“ホームレス支援”を行う求人サイトとは
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「インターネットカフェで生活をしていたり、友達の家に居候してたり、車の中で生活してたり……そういう自分の家を持ってない方に向けて、(生活を)立て直すサポートをしている」

 市川加奈さん、28歳。彼女が代表を努めるRelight株式会社では、寮付きの仕事を紹介する「いえとしごと」という求人サイトを運営している。その最大の特徴は、住む場所や電話番号を持っていない人でも応募ができることだ。

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「この会社は『ホームレス問題を解決したい』という思いで立ち上げている。1日平均4~5人ぐらいが“最後のセーフティネット”として来る」

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 学生時代から貧困問題に関心があったという市川さん。国内のみならず海外へも足を運び、貧困問題の当事者やそれを支援する人たちと交流を行ってきた。そして大学時代、ケニアにあるスラム街を訪れた市川さんは、貧しいながらも家で家族と生活する人たちの言葉で“ホームレス支援”に携わる決心をする。

「『外で寝ているホームレスの人がいるよ』という話をしたら、『おじいちゃんたちが外で寝ているなんて、かわいそうだね』と言われた。そこで、特に見えやすい、分かりやすく貧困な方たちのために何かできないかなと思うようになった」

 卒業後は、ソーシャルビジネスを通じて社会課題の解決に取り組むボーダレスジャパンに就職。そして、2019年に今の会社を立ち上げた。

 ホームレス問題を解決するために、何が必要なのか。市川さんは日本社会の「信用の在り方」に課題があると気が付いた。長らく家族と一緒に暮らすことが当たり前だった日本では、一度家や身分証を失ってしまうと「怪しい人なのではないか」「何かから逃げているのではないか」などとみなされ、たとえ働く意欲があっても社会に復帰しづらい現状があるという。

 一方で、人手不足が深刻化し「家や身分証、電話番号がなくても仕事をしてほしい」という企業も徐々に増えていることを知った市川さんは、身分証や電話番号がなくても応募できる求人サイトを立ち上げた。住まいと仕事を提供し、会社の健康保険に加入すれば身分証も作りやすくなり、その後の生活の立て直しが進むのではないかという狙いだ。

「本人たちの生活が立て直せているかどうかが重要。『自分でアパートを借りられた』というように、次のステップに進めるならば、それでもいいと思っている。(ホームレスが)自分の将来のことを考えられるようになっていると思うと、すごく嬉しい」

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 地道な営業活動もあり、現在は70社ほどの求人を掲載している。業種が豊富で、雇用形態も正社員からアルバイトまでさまざま。立ち上げから3年で、400人以上に仕事を紹介してきた。

 一度道を踏み外してしまっても、やり直せるきっかけを――。「今後もさまざまな形で支援を行っていきたい」と市川さんは話す。

「いろいろな方を網羅していきたい。“実家でも居場所がない”などと困っている方もいるので、孤立しないようにサポートできる仕組みや、やり直せるような体制を作れないかなと思っている」

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 ニュース番組『ABEMAヒルズ』コメンテーターでアパレルブランド「CLOUDY」CEOの銅冶勇人氏は、こうした取り組みについて「ホームレスにとってのきっかけを作っている部分では素晴らしい事業だ」と称賛した。

「根本からしっかりと見直して、『どのようにしたらホームレスの方々が継続的に、より良い形で生きていけるか』という部分のスキームを作ることは、どういったサポート事業でも大切になってくる。長い期間でどう考えられるかをビジネスに組み込むことが非常に大切だと思う」

 全国のホームレス人数の推移を見てみると、2011年の1万890人から年々減少し、2021年には3824人に。しかし東京都には、ネットカフェなどで過ごす安定した住居がない「見えないホームレス」が1日あたり約4000人いる。こうした現状を踏まえ、銅冶氏はホームレスが社会復帰するための課題を次のように分析する。

「ホームレスの方々がコミュニケーションから離れてしまっている部分が日本は特に大きい。人と接する時間がどんどんなくなってきている中で、強調性を持った職場で働くということは、コミュニケーションのリハビリも大きな課題になってくる」

 最後に、日本と海外と比べた際のホームレスの現状や特徴を聞いた。

「東京とニューヨークを比較すると、ニューヨークの方が圧倒的に人口に対するホームレスの割合が大きい。物価の高さがそれを表していると思う。円安が進み、日本もどんどん物価が上がっているが、これはホームレスの生活も苦しくさせている」

「海外のホームレスは積極的。段ボール紙に『オレンジジュースをください』といった具体的な要望を書いている人も結構いる。海外の方が社会とホームレスの境界線がない。密接に関わることで支援の形がカジュアルになっていると思うと、日本でもそういったコミュニケーションの場ができればいいのではないか」

(『ABEMAヒルズ』より)

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