欧米を中心に原因不明の子どもの肝炎が拡大している。25日、厚労省は国内で初めてこの原因不明の子どもの急性肝炎の可能性がある、16歳以下の患者1人が報告されたと発表した。
世界では、少なくとも約190人の患者が確認され、12カ国にも広がっている急性肝炎。また、イギリスでは、今年1月以降に原因不明の急性肝炎を発症する子どもが、世界で最も多い114人確認された。そのうち10人は、肝臓移植が必要なほど重篤だという。
ニュース番組『ABEMAヒルズ』は、子どもの急性肝炎について、バイリンガル医師のニコラス・レニック氏に話を聞いた。
ーー子どもの肝炎はあまり聞いたことがないが、今回の肝炎と一般的な肝炎の違いは?
「日本国内で子どもの肝炎は、あまり聞かない。一般的に肝炎とは1つの病気ではなく、肝臓に炎症があるということなので、原因は様々だ。主に肝炎は2つに分類され、短期間の急性肝炎と長期間の慢性肝炎に分かれる。子どもの急性肝炎は、基本的にウイルスが原因。しかし、今回(ウイルスが原因である)A-E型は陰性だった。今まで見たことがない症例だ」
ーーこの病気の原因は?
「現在のデータでは、アデノウイルス感染との関連性が示唆されている。イギリスで原因不明の急性肝炎が発症した子ども53人を調べたところ、40人でアデノウイルスが検出された。ただ、アデノウイルスは非常によくあるウイルスで、通常は風邪などの症状を起こすだけで、肝炎を起こすことはない。なので、なぜアデノウイルスが肝炎を起こしているかが最大の謎だが、仮説としては3つある」
1.アデノウイルスが遺伝子変異した説
「今までのアデノウイルスと違う可能性がある。それについては、遺伝子の分析を待っている状態。ただ、今のデータを見るとこの仮説よりは他の仮説のほうが可能性は高い」
2.新型コロナウイルス感染が、アデノウイルスとともに肝臓に異常を引き起こした説
「急性肝炎になった子どもたちが新型コロナウイルスに感染しているか調べたところ、6人に1人は陽性で、一般人に比べて非常に高い数値だった。このため、新型コロナウイルス感染と関連している可能性がある。アデノウイルスの感染より少し前か同時に新型コロナウイルスに感染したことによって、同時に肝臓へ負担をかけたのではないか」
3.パンデミックの感染対策により、通常より遅い年齢で初めてアデノウイルスに暴露(接触)してしまった説
「他のウイルスで確認されている現象として、通常より遅い年齢で初めてウイルスに感染すると重症化しやすい傾向がある。今までは0歳~1歳ぐらいの年齢でアデノウイルスに感染していたが、パンデミックの感染対策により、感染しなかった。そうすると3歳~5歳に初めて(アデノウイルスに)感染するので、重症化しやすいという仮説もある」
ーー新型コロナワクチンとの関連性はあるのか?
「それは否定しやすい。なぜかというと、3歳から5歳(の急性肝炎の発症)が一番多いからだ。イギリスのデータだと、発症している子どもの中で、ワクチンを接種している子どもは1人もいない。ということからワクチンとの関連性はまったくないといえる」
ーー気をつけるべき症状は何か?
「急性肝炎で一番多かった症状は黄疸。要するに、皮膚が黄色くなること。この症状は、他の病気では全く見られないので、皮膚が黄色くなっていたら速やかに受診してほしい。黄疸の一番わかりやすい所見としては、白目が黄色くなっている」
ーー黄疸がでたとき時に、すぐ受診すれば命に関わる問題ではない?
「アデノウイルスに関連しているとみられる肝炎に関しては、基本的に特効薬があるわけではないので、肝臓の機能を強化しつつ、肝臓の機能が悪くなりすぎれば、肝移植ということになってしまう。だが、すごく稀な病気なので、あまり不安になりすぎなくても大丈夫だと思う」
ーーアデノウイルスに関連する病気の可能性があるとのことだが、ではアデノウイルスに感染しないための予防はどうしたらいい?
「コロナの感染対策に、アルコールを使っていたが、ウイルスには2種類ある。膜があるウイルス(Envelope virus)と膜がないないウイルス(Non-enveloped virus)。アルコール(エタノール)は、膜があるウイルスの膜を破壊して除菌できるが、アデノウイルスのように膜がないウイルスには、あまり効かない。なので、アルコール消毒よりも、石鹸の手洗いが予防になると思う」
ーー新型コロナのように世界を一変させる感染症になる可能性はある?
「これに関してはないと思う。個人的に遺伝子変異の仮説よりも、アデノウイルス感染プラス、特別な状況があることで、出てきている症状だと思う。アデノウイルスに感染している人がたくさんいる中で、一部の人だけが重症化しているので、何万人に膨れるという可能性は少ないと思う。私も幼稚園児の親として、これに関して不安を感じている訳ではない。恐らく数週間以内にはもう少しこの病気の原因が明確になるので、これからの情報を待ちたい」
(『ABEMAヒルズ』より)
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