自作の筋弛緩剤で女性殺害か、背景に娘への好意? 臨床心理士「“好き”がゆがんだ確信や思い込みに変わってしまったのでは」
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 今年2月、大阪府高槻市の集合住宅で、住人の柴田周子さん(40)が17歳の男子高校生に襲われ死亡するという事件が起きた。

【映像】高校生の自作筋弛緩剤 第三者が関わった可能性に専門家言及

 容疑者の少年は現場で胸に刺し傷を負って倒れているのが見つかり、その後死亡している。そして先月、容疑者死亡のまま殺人などの疑いで書類送検された。その殺害の手段に用いられたとみられるのは、注射器による「筋弛緩剤」の投与だ。

 警察は柴田さんの部屋や集合住宅の廊下などから、手錠やスタンガンのほか筋弛緩剤が入った注射器を発見。また、少年の関係先からは筋弛緩剤の調合に必要な複数の薬品やフラスコ、製造方法が記されたとみられるデータなどが押収された。

 さらに、少年は事件前日にハムスターを購入し、筋弛緩剤を投与して実験していたとみられることも判明している。

 警察は少年が筋弛緩剤を自ら作ったとみている。なぜ筋弛緩剤をわざわざ自作し、犯行に使ったのだろうか。臨床心理士で明星大学心理学部准教授の藤井靖氏に話を聞いた。

「毒物とか薬物を使って、人を傷つけようとか、殺そうといった場合は、弱者の方法というふうに言われることがあります。つまり腕力や武器などを使って相手を傷つけたりとか、殺せないような人が使うと。また、心理的に追い詰められたり、苦しめられた末に、気持ちを晴らすために相手へ攻撃して、復讐心を満たしたいというときに、使われる方法でもあります」

 ただ、高校生の薬物自作はあまり例がなく、少年が化学的な知識や海外サイトを参考にできる英語力を元々持っていたり、興味・関心が強かったために自作に踏み切った可能性もあるのではと藤井氏は推測する。

 また、警察は少年が柴田さんの娘に一方的に好意を寄せ、1年近く前から犯行を計画していた可能性もあるとみている。なぜ好意を寄せていた相手とその家族に対して、筋弛緩剤を自作してまでも“殺害したい”と思ったのだろうか。好きであるがゆえに、それがゆがんだ確信や思い込みに変わってしまったのではと藤井氏は指摘する。

自作の筋弛緩剤で女性殺害か、背景に娘への好意? 臨床心理士「“好き”がゆがんだ確信や思い込みに変わってしまったのでは」
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「ある人に対して強い好きな気持ちがあったときに、自分は対象とされていないのに、そんなことはないと思い続けていたり、あるいは、自分よりむしろ相手の方が自分に対して愛情を持ってると思うことさえあると言われています。相手は振り向いてくれないと思えば思うほど、その状況を、どういうふうに自分の中で理解したらいいか分からなくなる場合があるのです。そうなったときに、相手を攻撃してそれで相手が恐怖を抱いて、その反応を見たりすることで、支配感とか征服感を持つ人もいます。それをもって自分と相手との関係が成立してるというふうに、思い込むようになったりします。好きでその相手とつながってるとか付き合っている状態と、ほぼ同義だというふうに考えているのです」

 恋愛感情に基づく犯行が起きるときは、容疑者の中では視野が極めて狭くなる状態に陥ることも多く、加えて今回は思春期真っ只中の少年の犯行。相手の存在抜きでは自分の人生自体が成立しないとまで考えていた可能性もあり、第三者的な視点が少年には必要だったのではと藤井氏は話す。

「恐らく、思いが具現化して実際の犯行に至る過程では、行動を起こすことを思いとどまらせることにつながる周囲からの心理的な手助けみたいなものはなかったのではないかと思います。そういう意味では、思春期のある種のこう不安定性は成長には必要ですが、場合によっては本人がかなり苦しむような、そういう特性もありますから、周りの大人や保護者たちの誰かが気付いてあげられると、自分が置かれた状況を捉え直したり、あらためて今後の自分を考える上でのいいきっかけにはなるかもしれないです」

(『ABEMAヒルズ』より)

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