島が消えた? 「砂マフィア」途上国で暗躍 急速に進む世界的“砂不足”
【映像】ひろゆき氏「砂の密輸入は法律に触れないから…」“砂マフィア”なぜ暗躍
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 天然資源である“砂”が今、枯渇の危機に直面している。そもそも砂は水の次に利用されている天然資源だ。世界では、水不足やウクライナ情勢によるエネルギー資源不足が指摘されているが、一方で、砂の採取はほとんど管理されていないのが現状だ。

【映像】年間およそ325億円の利益に…インドで暗躍する「砂マフィア」たち(11:56ごろ)

 そんな中、国連環境計画のパスカル・ペドゥッチ氏は「私たち人類は年間500億トンの砂と砂利を使用している。砂は無限の資源でない」と発言。フリージャーナリストの下村靖樹氏によると、世界では砂を奪い合う事態になっており、一部の国では砂ビジネスを支配する“砂マフィア”の存在まで指摘されている。

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 深刻化した砂の枯渇を解決するためには、何が必要なのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、下村氏と共に議論を行った。

 砂が枯渇する原因は人間の無計画な砂の使用にある。ビルやマンション、トンネルなどの建設資材となるコンクリートは、実はセメントと砂や砂利を混ぜたもので、砂ができるまでに膨大な時間がかかるが、人類は非常に速いスピードで採取を続けている。

 下村氏は「永遠にあるものだと思われがちだが、砂はできるのに1000年以上時間がかかる。岩石が風化して、小さくなって砂ができる。1000年単位でできるものが今すごい勢いで、1年間に作られる砂の量の倍の速さで消費が進んでいる状態だ」と説明。

 もともと「アフリカの紛争地で子ども兵士の問題を調べていた」という下村氏。砂問題は「ちょっとした寄り道だった」と話す。

「子どもが鉱物の採掘で働かされていて、調べていくうちに『砂もおかしいのでは?』と気づいた。(砂不足の)記事は、数年前から書いているが、むしろ状況は悪化している。経済成長や世界的な都市化が急速に進みすぎている」

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 いまや、砂資源は世界で年間500億トン使用され、過去20年で3倍使われている。下村氏によると「全部ではないが、歯磨き粉といった身近な商品にも砂は使われている。あと、化粧品であったりトイレの研磨剤であったり、いろいろなところで使われている。歯磨き粉は大した量ではないとは思うが、世界中で生産されていることを考えると、馬鹿にできない」という。

 土では代替できないのだろうか。土と砂の違いについて、下村氏は「粒の大きさが違う」と言及する。

「16分の1ミリ以下が砂と呼ばれていて、それより小さいものはシルク(シルト)という粘土。2ミリより大きいものは礫(れき)と呼ばれたり、いろいろな種類がある。砂漠の砂は、風でどんどん風化してできたもの。角が取れすぎて、まん丸になってしまっているので、コンクリートに使うときに安定させるための“引っかかり”がないので使えない。海からも採れるが、やはり塩を抜くなどの工程が入るので、価格が高くなることがある。川の砂が一番良い」

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 また「土も結局は同じ」であり、「土も岩石が壊れてできたものだから有限だ。おそらく建設業界の方やコンクリート業界の方は、いろいろなことを検討されていると思う。現状は、コストなどを考えると砂がベストだ」とコメント。

 下村氏の説明を聞いた、ネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「新興国で建築に砂が足りなくなるという話だが、先進国はお金を持っているから大丈夫なのか。それとも先進国も砂を買えなくなるくらい、砂が足りなくなる可能性があるのか」と質問。

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 下村氏は「現状、砂に関するデータがあまりない」とした上で「実際シンガポールが30〜40年で国土が20%ほど広くなっているが、それは東南アジアから砂をいろいろ集めて埋め立てて、国土を広くした。その影響で近辺の海域から島がいくつか消えたという話もある。あとは湖の底や海の底もそうだが、違法に底を掘っても上が水だからバレない。そこを掘ってしまって、川が逆流したり、生態系が壊れて魚が住めなくなったりといった被害が世界各地で起きている」と回答。「日本はオーストラリアの信頼できるところから買っているのではないかと思う」と述べた。

 下村氏によると、インドでは砂マフィアが暗躍しているという。砂マフィアは具体的に何をしているのだろうか。

「砂マフィアはその名前の通り、砂の密輸だ。国によっては砂の密輸が禁止されているエリアがある。そこに潜んで、夜中に掘ったり運び出したりしている。アフリカの砂もたくさん輸出されている。ウガンダにあるビクトリア湖という世界で、3番目に大きな淡水湖がある。そこはかなり湖の底が掘られていると聞いた。法に則って砂を採掘するとコストもかかるから、世界中の見えないところで掘られていると思う」

 その上で下村氏は、世界で使用される年間500トンの砂のうち「実際に合法的に取引されているのは、そのうちの3割程度だ」と指摘。「そもそもデータがないし、重さで変わってしまう。水分を含んでいると重さが増えるので、500億トンがどれだけの砂か分からない」と話す。

「コンクリートの再利用であったり、廃棄物を超高温で熱して、有機物と無機物に分類してから、無機物だけを使おうとする企業もある。世界全体がそういう取り組みをしていかないと、今の消費量は自然に作られる量の倍を年間に消費している。人工的に賄うにしても追いつかない」

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 国連は、砂の採掘禁止を含む「緊急対策」を発表したが、この取り組みをどのように思っているのか。下村氏は「どの国際ルールもそうだが、ちゃんと守る国がいれば、守らない国の方が高く裏で売れる。国単位になると正直なところ、ガバナンスが行き届いていない発展途上国では管理がかなり難しい。ただ、取り組みは必要だ」とコメント。

「『データが取りづらい』が一番大きい。ちゃんとした数字で示せない。そのあたりの世界的な基準ができれば、もう少しメディアも取り上げやすくなると思う。貿易の実態も分からない、総量も分からない。そうなってくると『砂が足りない』と言っても現実的にどれくらい減っているのか示せない。そこを示すには世界的な基準を決める必要がある」

 なかなか問題として取り上げられない砂不足の問題。下村氏は「世界中にインターネットが普及したことで、どんな田舎に行っても情報が入ってくる。そうすると若者はみんな都市を目指す。その結果、どんな国でも首都には高層ビルが立ち並び、建築ラッシュが進む」と指摘。続けて「砂に限らず、資源は有限だと私たち一人ひとりが日々考えて過ごすしかない。コンクリートに関しては砂と水の混合物だ。何気なく日々過ごしてしまっているが、身の回りのリサイクルだったり、生活自体を見直さないと危ない」と警鐘を鳴らした。(「ABEMA Prime」より)

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