AV出演問題「デジタルタトゥーになると分かっていながら撮影・販売している業者も」国内法守らぬ業者への規制、どう徹底?
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 未成年者が親の同意なく契約を交わした場合、原則として取り消すことができる「未成年者取消権」。先月、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことから、18歳、19歳がトラブルに遭ってしまう可能性が指摘されている。

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 その一つが、AVへの出演だ。今年3月、出演を強要された経験を持つ女性は国会議員を前に「冷静に判断をして断れるかといったら、それはちょっと違うと思う」、性暴力の被害者支援を行うNPO法人「ぱっぷす」の金尻カズナ代表も「同調圧力等で出演せざるを得ない状況が作られる」と訴えた。

 一方、与党も先月、被害防止のためのプロジェクトチームを発足させており、年齢・性別を問わず契約成立から20日間が経過しなければ撮影を不可とし、1年間は無条件で契約の取り消し可能とすることなどを盛り込んだ法案の骨子をまとめ、今国会での成立を目指す方針だ。

■プロジェクトチーム牧原議員「事前にしっかりと契約を交わすことが重要だ」

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 3日の『ABEMA Prime』に出演したプロジェクトチームメンバーの牧原秀樹衆院議員(自民党)は「自民党ではぱっぷすさんをはじめ、問題に取り組んで来られた方々と『性暴力の無い社会を目指す議員連盟』(ワンツー議連)を作り検討を続けてきた。その中ではネットも含め様々な状況を見聞きしてきた。今はネットにも残ってしまうので、人生を左右しかねない重大な問題だ。だからこそ全ての年齢の人に対して、性別を問わずということ、そして事後の取消よりも、事前にしっかりと契約を交わすことが重要だ」と話す。

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 「もちろん、業界が自主規制をしてきたことも事実だし、ちゃんとやっている方々はこれまで通りであれば問題はない。しかし“モデル契約だ”と言われて、男の人にいっぱい囲まれて、といった状況になり、その日のうちにずるずると撮影に持ち込まれてしまった事例も多いし、お金に困っていて、といった事例もある。まずは説明義務や、相談窓口を記載することを課し、かつ撮影までに期間を設けることで、一度頭を冷やして相談すること、いつでも“やめた”と言えるようにしていこうということだ。

 さらに撮影してから一定の期間、あるいは公表してから一定の期間は取り消しができるようにしていく。例えば契約時の説明では男優さんと言われている人は1人とか、屋外での撮影はしないと言われていたのに、実際にはノリで撮影され、内容が異なるものになったという事例もある。これについては説明義務違反、契約違反として5年間、取り消せるようになる。ただしこの期間については、他の法律を見て、野党の皆さまとも議論していかなくてはいけない状況だ。

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 また、個人が制作しているもので、“ネットに載せないよ”と言いながら、後で“承諾をしただろう”というような、実体のない同意もある。これは口頭であっても同意だとみなされてしまうことが背景にあるが、そういうのはダメだろうと思う。プロバイダ責任制限法、リベンジポルノ法と同様、プロバイダに対して“これは契約を取消したんだから、ちゃんと消してくれ”という要請ができることになるし、私としては事前に完全な同意を得る仕組みを作り、ほとんど契約を結んでないようなものについては、ビシバシ取り消しをやっていきたい。
 
 他方で、実は法律上、AVの定義というのはない。これをどう定義するかによっては、映画やドラマとか、あるいはNetflix、Huluといったものとの表現の自由とのバランスが出てくるので、我々としても苦しんで考えているところではある。

■ぱっぷす金尻代表「契約解除の期間、5年を目指したい」

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 前出の金尻氏は「私がコミュニケーションしてつくづく思うのは、この業界の常識は、社会の非常識なんだということ、そして、強烈なセクシズムがあるということ。自分たちは何も悪いことをしていないと本気で思っているので、私たちが人権侵害ですよといくら主張しても話が通じないし、出演をやめたいと言っても話が進んでしまう。それが実態だ」と指摘する。

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 「いわゆる“業界”とよばれるプロダクションというのは、マインドコントロールが上手なところでもある。たとえばパーツモデルなどでオーディションに応募した方がAVを勧められる。そして、男性に比べて販売・拡散についての情報量が少ないこと、交渉力の差などから出演を余儀なくされてしまう方が多い。また、グルーミングといって、モデル撮影などの形で若い女性を呼び寄せ、性的な撮影を強行して販売してしまう。

 そして情報が遮断された中で“私はもうこの業界でしか生きていくことができない”という覚悟を求められ、さらに“身バレ”してしまうと、“この業界で1位を取っていこう”と考えるようになる。でも出演すればするほど売れなくなっていき、ようやくマインドコントロールが解ける。だから我々は出演“強要”という言葉はできるだけ使わないようにしている。これは性暴力被害の一つなんだと、性的搾取なんだと言うようにしている」。

 その上で、与党の骨子について次のように話した。

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 「これまでは18、19歳の場合、書面を送るだけで販売停止・削除ができていた。それが4月1日以降、私たち支援団体としても闘うためのツールがなくなってしまった状況だ。その点、2カ月あまりの短期間で、ここまでの骨子ができたことには正直言って驚いている。被害を受けられた方の声と、そこに共感をしていただいた与野党の議員の皆さんに感謝の気持ちを表したい。

 ぱっぷすとしても、本当は児童ポルノのように販売の規制や所持の禁止のように踏み込みたい気持ちはある。しかし、それでは法律を作るまでに3年ほどかかってしまうという。今はとにかく穴が小さいうちに塞がなければいけないということだ。それでも拡散された動画が消えないという問題もある。データを蓄積し、立法化につなげていきたい。

 また、これは被害者の方からも要望が寄せられていることだが、契約の解除の期間は長ければ長いほど守られる側面がある。マインドコントロールのような状況に置かれ、数年経ってようやく解放され、初めて人権侵害を受けていたことについて気づいたという相談者も多い。最低でも1年、未成年者取消解除の消滅時効は成人になってからの5年なので、私たちは5年を目指したい」。

■元経産官僚の宇佐美氏「誰がこの法律を守らせると考えているのだろうか」

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 ロンドンブーツ1号2号の田村淳は「取材に行ったことがあるのだが、ルールを守っているメーカーもたくさんあるし、きちんと契約書を交わし、本人も納得した上で出演させている会社もある」とコメント。

 また、元経産官僚の宇佐美典也氏は「業界が非常識だ、だから規制を厳しくするという議論をしていると思うが、“法律は守る”というコンプライアンスの意識・体制が会社になければ、法律を作ったとしても守られないはずだ。牧原先生は、誰がこの法律を守らせると考えているのだろうか。結局のところ、規制が機能するに業界団体が加盟している企業を指導する枠組みなければならないと思う」と指摘する。

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 金尻氏も「今のAVの主流はDVDとかブルーレイではなくストリーミング配信なので、業界団体に所属し、年齢が上の人たちに向けに販売している人たちの方がマイノリティになっているのではないかと考えている。どことは言わないけれども、あえて国内法を逃れるためにアメリカに置くような事業者もあるわけで、私たちもそうしたマジョリティの問題を指摘している。

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 また、自主規制団体があるといっても、所詮は任意団体だし、規制を強くすれば加盟している人たちが離れていくというスパイラルに入っていくので、我々は不十分だと思っている。だからこそ法律が重要だ。もちろん、事業者はこれまでも法律を越えていくことをしてきた人たちなので、そこは強化をしていかなければならない。

 そして、我々はAVを否定したいとか、潰したいという団体ではない。基本的に人権侵害がないことが重要だということだ。しかし結局のところ、事業者は女性たちを札束で引っぱたいているのと同じだし、それがデジタルタトゥーになることを十分に分かっていながら撮影・販売しているわけだ。その罪についてはどう考えているのかということを問いたい」と話していた。(『ABEMA Prime』より)

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