Twitterで勧誘も…「クソ真面目に考える人がカルトに引っかかる」今なお襲撃の後遺症に苦しむ家族会会長、オウムを知らぬ若い世代に警鐘
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 大学入学を前にした「#春から◯◯大学」というハッシュタグ付きのSNS投稿。詐欺に巻き込まれるなど、様々なトラブルにつながる懸念も報じられる中、とりわけ注意したいのがカルト団体による勧誘だ。

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 「日本脱カルト協会」の代表理事も務める西田公昭・立正大学教授(社会心理学)によれば、カルト団体とは絶対的なリーダー・教祖が存在、正体を隠したり、マインドコントロールを行ったりしながら人権侵害を行う団体のことを指す。「昔は対面で説得することが多かったが、最近ではSNSなどのオンラインを通じて、周りの目を気にせずに勧誘するケースが増えている」。

【映像】永岡さん、ゆうりさんが語った「カルト」

■「教祖様以外の異性と関係を持てば死んでしまう」

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 「受験が終わって、どう生きればいいのか、何を目指していけばいいのか、不安な気持ちでいっぱいだった」。都内の大学に通うゆうりさん(仮名、20)の場合、入学直後だった2年前、先輩から『君たちはどう生きるか』の読後感想会に誘われた際に“人生の悩みの答えを得られる本”として『聖書』を勧められた。

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 その後、『聖書』について学ぶサークルに招待され、ご飯に誘ってもらったり、スポーツをしたり、旅行に行ったりと、活動を楽しく感じることもあったというが、一方で目にしたのは、一般的なキリスト教とは似て非なるものだった。「“神様からの有り難い言葉を受け取る時間だ”と言って、日に2~3時間。朝は5時に起きてお祈り、夜になると語らいと、1日のうちで考えない時間はないという感じだった」。

 半年ほどが経つと、過激な教義を刷り込まれるようになった。“おかしい、こんなことはあり得ない”と感じたというゆうりさんだが、先輩による解説を聞く中で、つい納得してしまったのだという。「私たち(信者)と先生である教祖様は新郎・新婦の関係だと教わった。教祖様以外の異性と関係を持てば霊魂も肉体も死んでしまう、外部の人にはサタンが憑りついているということで、家族に対しても距離を置くようになっていった」。

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 怖い絵を見せられ“抜ければ死の宣告を受ける”と脅され恐怖を感じていたため、知人や家族にも相談できずにいたと明かすゆうりさん。しかし3カ月ほど悩んだ末、大学の学生相談室に駆け込んで、一切の連絡手段を断つことで脱会。入ってからは1年ほどが経っていた。

 「大学に入ったばかりで友達もいなかったし、うまくやっていけるのかなとすごく不安で。孤独で、悩みもあるという状況から、カルトに入っちゃったのかなと思う。人生や精神についての話をされたら、怪しいと思った方がいいと思う」。

■「クソ真面目に考える人が、圧倒的に引っかかる」

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 “カルト”という言葉の認知度が飛躍的に高まったオウム真理教事件から30年近くが経過、一連の事件の記憶の無い若い世代が増える中、現状に強く警鐘を鳴らすのが永岡弘行さん(84)だ。

 永岡さんは80年代、長男がオウム真理教に入信したことを機に「被害者の会」(現「オウム真理教家族の会」)を設立、自ら会長に就任した。ところが教団に活動を妨害され、3年をかけ長男を脱会させるも、95年には神経剤VXを浴びせられ重態に陥る。

 今もその後遺症に悩まされている永岡さんは、「世の中が殺伐としている。“自分たちに何かできることはないだろうか”なんてクソ真面目に考える人が、圧倒的に引っかかる。なんといっても人間が破壊されることが怖い」と訴える。

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 始まりは「親父、親父は人のために何ができるか考えたことはあるか?」という、オウム入信から1年ほどが経った頃の長男の一言だったという。そして、「うちには土地が何坪あるの?誰の名義になっているの?」。長男の部屋にあった教団の出版物との関係を直感した永岡さん。そのうちに「自分の有する全ての権利を麻原彰晃尊師に譲る」という主旨の“遺言書”のようなものも見つかった。

 「ダライ・ラマ法王ですらも麻原尊師を認めた人」。そう語り、「殺生をしてはいけない」と肉・魚類を口にしなくなった長男。「あんなインチキ野郎。ダライ・ラマが認めるわけがない」。永岡さんは妻と長男、そしてジャーナリストの江川紹子氏らともにチベットを訪れ、宗教大臣の“法王がそんなことを言うわけありません”との言質を得た。

 「乗ったこともない飛行機に乗り、ニューデリーからバスに乗って20時間。それでも息子を取り戻すためだった。帰国した息子が“法を説く人間には、たった一つでも嘘があってもいけないと思う”と麻原彰晃に尋ねると、“それがどうした”と答えたそうだ。息子は、いっぺんに目が覚めた」。 

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 世の中には“しょうがない”ということは絶対ないはずだー。そんな信念から長男を脱会させた永岡さんだったが、その活動に脅威を感じた教団は勤務先に街宣車で乗り付けるなどの嫌がらせを行い、最終的に退職を余儀なくされた。そして、VXによる襲撃に至る。

■「周囲との関係を断ち切られ、孤独になるのが一番危ない」

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 実業家のハヤカワ五味氏は「私は地下鉄サリン事件が起きた1995年の生まれなので、オウムに関するニュースも見ていないし、それ以前の、麻原彰晃がテレビに出ていた時代のことも知らない。しかしブラック企業もモラハラもDVにも共通する、“洗脳”の仕組みは知っておくべきだと思う。さらに言えば、周囲との関係を断ち切られ、孤独になるのが一番危ないと思う。一度その輪の中に入ってしまえば、本人は気付けないし、特にカルトはそのようにしてハマるきっかけを作っていくと思う」と指摘。

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 ライターのヨッピー氏も「ヒモになるような男性もそうで、他の人と連絡を取らせないようにするとか、友達や親を否定してくるとか、手口に共通点があると思う。そして、このように啓発することは大事だが、一方で未だにメディアが占い師などをもてはやしていることの責任もあるんじゃないか」と応じた。

 また、地域コミュニティを運営する後藤寛勝氏は「コミュニティの存在意義は、いかに孤独を解消するかということと紐づいてくると思っている。ゆうりさんもそうだったと思うが、地方から上京したての時期は頼れる人がいないというのは僕もよく分かるし、初めて出会った人たちによって、その後が変わってきてしまうこともあると思う」と話した。

■「“素晴らしいこと”を言う人には、ちょっと首を傾げなきゃ」

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 「常識の世界で生きていると“そんなこと、あるわけない”と思ってしまうが、息子は考える能力を奪われ、オウムのこと以外は一切考えられないようになっていた。100%と言っていいぐらい純粋無垢だ。本当に怖いし、私も情けないことに、息子に対して猜疑心を持ってしまった。しかし、人の言うことに聞く耳を持つ、ということから教育をした。こちらも、聞く耳を持ってやり、“そうなのか、そうなのか”から始める。そして、少しずつ、少しずつ。そうでなければ絶対ダメだ」

 長男の脱会について、改めてそう振り返った永岡さん。若者たちに向けて、次のように投げかけた。

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 「当たり前のように“地獄に落ちる”と言うのを信じてしまうのが純粋無垢な人たちだ。しかし、ひとこと言ってみてください。“それ違うんじゃないの?”と。“それであなたは今幸せですか。あなたが考えていることを行って幸せなんですね”と。そこで答えに詰まるようなら要注意だし、否定し力説するようなのは絶対にダメだ。一概には言えないが、“素晴らしいこと”を言う人には、ちょっと首を傾げなきゃ」。(『ABEMA Prime』より)

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