9日、対ドイツ戦勝記念日を迎えたロシアでは、首都モスクワで軍事パレードが開催され、プーチン大統領が演説を行った。
【映像】兵士など約1万が銃を持って…圧巻の「軍事パレード」(現地の様子)
演説の中で、ウクライナにおける軍事作戦は「唯一の正しい選択だった」と述べたプーチン大統領。侵攻の正当性について「ドンバスのロシア軍や民兵は祖国の将来のため、ナチスの場所をなくすために戦っている(※抜粋)」と発言した。また、演説の中で戦争宣言や徴兵に関する発言はなかった。
ニュース解説YouTuberで「TheHEADLINE」編集長の石田健氏は、今回のプーチン大統領の演説について「3つの特徴がある」と分析する。
「1つは、戦果のなさだ。プーチン大統領の目論見と違い、今ロシア軍はだいぶ後退しているし、大都市は1つも制圧できていない。だから、本当に演説で言えることが少なく、今まで通り、戦争を正当化するしかない」
演説の中で、何度もドンバス(※ウクライナ東部)に言及したプーチン大統領。これについても、石田氏は「プーチン大統領本人もウクライナ全部を取るのは無理だと気付いている」と話す。
「2つ目は演説の中であまり『ウクライナ』という言葉が出てこなかった。ずっと『ドンバス』と言って、東部地域について『ここを取るんだ』というニュアンスになった。侵攻が進む中で、プーチン大統領は『ウクライナの非ナチ化』を掲げたが、後半になってくるにつれて『ウクライナを全部取るのは無理だ』と薄々気付いた。だから『ウクライナ全体をひっくり返すんだ』『ゼレンスキー政権を交代させるんだ』ということにはならず、当初のロジックに戻して『東部地域を取るんだ』と言っているように見える」
先月、これまで中立的な姿勢を示していた北欧のフィンランドとスウェーデンがNATO(北大西洋条約機構)について、本格的に加盟を検討すると発表した。プーチン大統領は、今回の演説で「NATOが軍備をさらに拡大し、ウクライナの領土を軍事的に開発し始めることは、私たちにとって受け入れがたいことだ」とNATOと牽制。「NATO主要諸国は、みずからの目的を達成するために、ウクライナの極右民族主義者やネオナチをあらゆる面で支援している」と訴えた。なぜ、ここで改めて反NATOをアピールしたのか。石田氏によると、プーチン大統領には、長引く戦争を正当化したい思惑があるという。
「3つ目は、ウクライナではなく『西側と戦うんだ』と、欧米と戦うレトリックを前面に出してきた。もともとプーチン大統領はウクライナを『数週間、長くても1〜2カ月程度で制圧できるだろう』と思っていた。これが難しいとなって『これからどうするんだ?』という空気がある。だから、ウクライナをどうするかの話ではなく『そもそも我々の目的はロシアの脅威になっているEUやNATOと戦うことだ。これは長い戦いになっても仕方がない』という主張が透けて見える。欧米の脅威を強調し始めたのも『長引くのは仕方ないんだ』と国民に説明するためだ」
演説の中では、過去の戦争と重ねるような発言もあった。これにはどのような意図があったのだろうか。
「そもそも、対ドイツ戦勝記念日は、前身のソ連が第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利したことを祝うもの。第2次世界大戦になぞらえて語るのは規定通りで、当然言及する。一方で、今回の演説が国民全員に刺さるかというと、あまり現実的ではない内容だ。本当に『我々はナチと戦っている』『第2次世界大戦を思い出して、あの時のように戦っている』と思っていれば、戦争宣言をして国民総動員をするはず。それをやっていないので全ての国民が戦争に納得するわけじゃないことを、プーチン大統領もわかっている。おそらく多くのロシア国民としては『特別軍事作戦やってるな〜』程度ならば受け入れられる。各国の経済制裁も、短期的にロシア経済を破壊するほどではない。国民全員がプーチン大統領の“神話”を信じているかどうかというと、だいぶ疑わしい」
(「ABEMAヒルズ」より)
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