「就職が決まっていた身なのに、急に『就職先がなくなるかもしれない』と言われた。なんでこうなっちゃったのかなという悔しさみたいな……」
切実な思いを訴えるのは、ゴールデンウィーク中も就職活動に追われていたという20歳の女性だ。今月から脱毛サロン「キレイモ」に入社した女性は、エステティシャンとして働き始める予定だった。ところが、入社の数日前にキレイモから思いもよらない電話がかかってきたという。
「給料が支払えない可能性がある。それでも入社してもらえるか、それとも入社を辞退するか決めてほしい」（「キレイモ」の採用担当者）
「午後3時過ぎに連絡があった。お金の返金も給料についても、対応が追い付いていないということだった。数日後から社会人になる予定だったもので、『今のタイミングですか』『ここからの生活をどうしていけば良いですか』という疑問と怒り、呆れみたいな」（「キレイモ」に入社予定だった女性）
キレイモをめぐっては、従業員への給料の支払いが2カ月連続で遅れていたほか、全国の客480人以上から業界団体に「コースを中途解約したのに返金されない」などの相談が寄せられている。こうした中、キレイモの担当者は女性に対し、入社するかどうかという人生を左右するような決断を“たった3時間で決めてほしい”と迫ったのだ。
「率直に言ったら『3時間は無理でしょ』というところが本音。『今回はちょっと辞退させていただく形でお願いします』ということを伝えた。これに時間を費やしているのもちょっともったいない話なので、仕事を探しにいこうと切り替えて」（「キレイモ」入社予定だった女性）
女性は連日、ハローワークなどに通って職を探しているが、就職先はまだ見つかっていない。このキレイモの対応を、労働問題に詳しい専門家はこう指摘する。
「ありえない。賃金を支払う約束があるから労働契約は成立する。内定は会社が一方的に取り消すが、やはり賠償の問題が出てくる。それを避けるために、労働者の側が辞退したように“選択させるような形”で辞退を引き出しているということは非常に不誠実だと思う」（旬報法律事務所・佐々木亮弁護士）
キレイモは、従業員への給料の支払いが遅れている面でも、その対応が疑問視されている。
番組は、会社が先日、従業員に対して送った社内のSNSを独自に入手した。そこには、次のようなことが書かれていた。
「皆様への給与支給を第一として、資金調達を行っております。給与支給に関し、もう少しだけお時間を頂いて、正式な回答を提示したい」
給料の支払いが2カ月連続で遅れていたにも関わらず、今月の支払いを確約できないキレイモ。こうした対応に、数年間、従業員として働いてきた女性（22）は退社を決断した。
「退職するという形になった。同じ店舗にいた子で、（店長から）退職届をもらってるのを見たのは私を含めて4〜5人くらい。普通は動画とかで社員全員に謝るんだろうなと思うが、メッセージアプリでしか謝ってもらえていない」（「キレイモ」従業員の22歳女性）
新しい仕事がすぐには見つからないため、女性は現在アルバイトで生計を立てている。
「今はガールズバーで働いている状態。昼（の勤務）も考えてはいたが、そもそも面接や求人が少ない。夜（の勤務）だと時給も高いので、いったん夜で探すという感じ。これ（キレイモの制服）はもう会社に返品する」
金銭トラブルが解決する兆しが見えないキレイモ。どのような経営状況にあるのだろうか。キレイモの運営に詳しい関係者から内情を聞いた。
「返金の遅れは今に始まった話ではなく、2020年の秋ごろから始まっていたように思っている。会社の見解として“コロナの問題”が出てはいたが、どちらかというと家庭用脱毛器の普及であったり、医療脱毛が安価になってきたりしたことによって、2020年に入ってからは売り上げが下がっている。それに加えて解約が増えてしまい、収支のバランスが崩れ始めてしまったように思う」
キレイモに対し、金銭トラブルについて1週間以上前からメールや電話で問い合わせを行っているが、回答はなかった。そこで、渋谷区の本社を直撃取材。しかし、採用担当者からは「私の口からは何も話せません。経営幹部も会社におりません。お引き取り願います」と回答を断られてしまった。
解約した客への返金が滞っている問題について、キレイモは先週、ホームページでコメントを出した。
「今回の返金遅延に関しては企業の経営陣として責を負うべき事象だと認識しております。今後の対応や状況に関しましては、こちらのページにて随時、皆様にご報告させていただきます」
（『ABEMAヒルズ』より）
