14日のABEMA『NewsBAR橋下』に自民党元幹事長の石破茂衆議院議員が出演。自身にとって“政治の師”である田中角栄元総理のエピソードを披露した。
【映像】橋下徹×石破茂 "政治の師" 田中角栄の伝説（3分15秒ごろ〜）
■「“できない”と言われても、誰一人として嫌な気持ちにはならなかった」
番組恒例の“乾杯”を前に、「田中角栄さんもよく飲まれたんですか」と橋下徹氏に尋ねられた石破氏。「オールドパーを飲まれていた。前日どんなに飲んでいても、朝7時になると目白（文京区）のお屋敷で陳情客を受け付けていた。だから朝6時くらいから新潟の団体客、大臣、次官、局長、自民党の偉い人、国会議員、民間会社の人…もう老若男女、ありとあらゆる人が並んでいた。1日100人は受けていたと思う」と語りだした。
「先生は陳情を受けるときには秘書を陪席させず、必ずお一人で聞かれていた。“チーン”と鳴るベルを持っていて、5分とか10分とか決めておいて、時間が来ると鳴らして“はい、次”と。だから若造だった私も、どうやって言いたいことを5分で説明しようか、ずいぶん練習したものだった」。
橋下氏が「本を読んでいると、いろんな要望、お願い事に“よっしゃ、よっしゃ”と、どんとん捌いていったイメージがある。でも、できないことは“できない”と言っていた？」と質問。石破氏は「神様じゃないから、先生でもできないことはあるし、そこはおっしゃる。でも、誰一人として嫌な気持ちにはならなかったし、“ああ来てよかったな”と思わせる術はすごかった」と答えた。
■「初七日に花を出したら、どんなに喜ぶと思う？」と
石破氏によると、田中元総理は来訪者が話を切り出す前に要件を見抜いていたという。
「ある意味で超能力者だったよね。“お金ください”とは言えないけれど、そういう顔になって来る人もいる。そうすると、一体いくら必要なのかが分かるんだという。これは現場を見たわけじゃないから伝説だが、先生はその倍額を渡したそうだ。“人にカネをくれっていう時ほど惨めなものはないんだ。だから、すまんけど受け取ってくれって言って渡すんだ”と。普通、できます？」。
このエピソードには橋下氏「できない。僕は真逆。むしろ偉そうにしちゃう（笑）」と唸り、「知事への面会の要望も断っていたから。だから、お金下さいも何も、“あいつに言ったってどうせ聞かへんやろ”という感じだっただろうし、“行って損した”という感じで帰っていたと思う。それで8年間やったからね。時代も仕組みも今とは違うけれど、田中角栄さんのノウハウはすごい」。
石破氏は「すごかった。例えば、人が亡くなると“初七日に花を出せ”とおっしゃる。そこである人が、“ですけど、弔事もお読みになりましたし、確か随分お香典もお包みになったと思いますけど、それでも初七日に花を出すんですか…？”と聞いた。すると先生は“お前はバカか、亡くなってすぐは気が動転しているし、弔問客もいっぱい来て慌ただしい。だから大事な人が死んじゃったんだという感じもしないんだけど、初七日になって誰も来なくなった。来ていた花も枯れちゃったと、その時が一番寂しいんだ。そのときに花を出したら、どんなに喜ぶと思う？”と。すごいと思ったね」。
■父は「田中のためなら死んでもいい」って言っていた
先日、新潟での講演会で橋下氏は「日本の課題について、地元だからと思って“こういう時代に田中角栄さんがいらっしゃったら解決してたんじゃないですか？”って軽く触れてみたら、もう割れんばかりの拍手。でも、田中角栄さんも晩年になると永田町の仲間の分裂、離反もあったのではないか」。
石破氏は「私が最後に先生と1対1で話したのは、脳梗塞で倒れられる1カ月くらい前。すでに派閥の中でいろんな争いがあって、お客さんも来なくなっていた。確か朝の7時台だったと思う。寒い日だった。朝からオールドパーを飲んでおられる姿を見て、“ああ、こんなもんなんだ”って思った。でも、うらみつらみのようなことは全然おっしゃってなかった。うちの父親は生前、“先生の本質は、報いを求めない親切さだ”って言っていた。父は東大出の内務官僚というエリートだったが、“田中のためなら死んでもいい”って言っていたからね」と語った。（ABEMA／『NewsBAR橋下』より）
