橋下氏「ウクライナ側に不利な情報が少ないのではないか」石破氏「罪もないロシア兵、ウクライナ人が死んでいくのを止めるのが優先順位の一番ではないか」
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 ロシアによるウクライナ侵攻についてSNSを通じた情報戦やサイバー攻撃などが注目される中、ABEMANewsBAR橋下』に出演した自民党元幹事長で元防衛大臣の石破茂衆議院議員と橋下徹氏が、戦争とメディアの問題について議論した。

【映像】橋下徹×石破茂 ウクライナ侵攻と日本の安全保障(14分00秒ごろ〜)

 石破氏は「“ウクライナ負けるな、頑張れ。ロシアは悪魔だ”と言うことが停戦に直結するとは思わない。私も気持ちとしてはそうだし、日本はそう言うべき立場だ。しかし罪もないロシア兵、ウクライナ人が死んでいくのを止めるのが優先順位の一番にくるべきではないのか」との認識を示した。

■「情報は両方を見なければ間違えてしまう」

橋下氏「ウクライナ側に不利な情報が少ないのではないか」石破氏「罪もないロシア兵、ウクライナ人が死んでいくのを止めるのが優先順位の一番ではないか」
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 まず橋下氏はメディアの問題について「我々は西側諸国だから、当然ウクライナに対して“なんとかロシアを追い出してくれと、国際秩序を守ってくれ”という思いがあるし、味方する方に勝ってもらいたいと応援一色になってくる。実際、日本の報道を見ても、ウクライナ側が挙げた戦果やロシア側の残虐行為の話が圧倒的に多いと思う。もちろんそれらは報道に値する情報ではあるが、一方でウクライナ側に不利な情報が少ないのではないかと感じる」と指摘。

 「当事国だった80年前の太平洋戦争の時も、日本側が発表する戦果だけを報じ、国民も“もっと行け”、“勝て”という状況になっていった。その反省からメディアの報道のあり方や国民の知る権利が重要だよねという議論が積み重なってきたはずなのに、やっぱり今回の報道を見ていると、どうしても偏っているなと思ってしまう。もちろん放送局も配慮しながらやっているとは思うが、番組に出ていると、ウクライナにとって不利な情報、まずい問題や、正さなければいけないようなところも含めて発信すべきなのにと感じる」。

 一方、石破氏は防衛省が新たなポスト「グローバル戦略情報官」を設置したことに触れ、「世の中にある様々な情報の99%は公開情報だ。それをきちんと見て、分析する。世界でどんな情報が発信されているのか、きちんと総覧するポストを新設するのはいいことだ。画期的なことだが、“今頃かよ”という気もしないでもないが」とした上で、

 「情報は両方を見なければ間違えてしまうことがある。私も防衛庁長官、防衛大臣の時には、できるだけ反対の側の情報に接するようにしていて、例えば『赤旗』や『前衛』など、日本共産党系の立場に立ったらどのような展開になるかを一生懸命読んでいた。それで“大臣は共産党じゃないのか”と思われていた時期もあった。日本は旧軍時代から情報や兵站=ロジスティックス・補給を軽視する風潮があるし、自衛隊の中でも情報職種の人が一番上の階級までいくようにならなければならないと思う」。

■「“お前はプーチンの味方か”と言われる」

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 石破氏の指摘を受け、橋下氏は弁護士としての立場から、「相手も色々なことを主張し、自分なりの“正義”を出してくるわけだから、こちらも自分の“正義”を主張すると同時に、相手がどういう理屈で言っているのか、その思考を読まないと訴訟には勝てない。しかし、それを今回のウクライナ侵攻の問題に絡めて話すと、“ロシアの代弁者なのか”みたいに言われてしまう。ロシアは許せないというのは前提だが、ロシアにとっての正義は何なのか、これまでの経緯も含めてしっかり検証し、この戦争は避けることはできなかったのか確認するのが重要だ」と問題提起。

 「ロシアがウクライナの民間人をあれだけ殺害しているのは絶対にアウトだし、“どっちもどっち論”ではない。ただ、軍事力を制限されている日本は、最後は政治で戦争を回避していかなければならない。だからこそ国会議員には“とにかくロシアが悪い”“今までの経緯を検証するような状況ではない” ではなく、もう少し冷静に、日本が同じ立場になったらどうやって戦争回避するのか、国家指導のための知見に結びつけてもらいたい」。

 これに石破氏も「橋下さんの考えに100%賛成」。

 「私はウクライナに対する軍事侵攻が始まった時から、ロシアを最も非難する立場にいるのは日本だと言い続けてきた。日ソ中立条約を破り、昭和天皇がポツダム宣言を受け入れるとおっしゃった8月15日以降も戦いを続けたことで、樺太や満州では大勢の日本人が死んだ。婦女子が酷い目に遭い、男性50万人がシベリアに連れて行かれて強制労働させられ5万人が死んだ。そして、今なお北方領土は占拠されている。つまり、ウクライナの気持ちが一番分かるのは日本だろうと。

 一方で、ウクライナの民間人がいっぱい死んでいくのと同時に、何も知らずに戦場に連れて来られたロシア兵もいっぱい死んでいる。これをどうやって止めるのか考えなければいけない。かつて、“鬼畜米英”とか“暴支膺懲”といった言葉が日本を席巻して戦争に突っ込んでいったのと、“プーチンは悪魔”だ、ロシアは極悪非道だ、生き残っちゃいけない、殲滅するしかない”と言うのは、なんか似ているよなという感じがする。
 
 戦争を終わらせるというのは簡単ではないし、賠償や戦争裁判の問題もある。しかし停戦はできなければいけない。絶対にロシアは許さないぞと言い、戦闘には参加しないけれど金は出すぞ、武器は送るぞ、経済制裁をするぞと言っているだけで、本当に戦闘は止まりますか、と冷静に考えないといけないのではないか。しかしそれを言うと、“お前はプーチンの味方か”と言われる」。

■「ロシアの中で“スターリン礼賛”が復活」

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 その上で石破氏は、「私が気になっているのは、10年くらい前からロシアの中で“スターリン礼賛”が復活していること。歴史上の人物で最も尊敬するのは?と尋ねると、詩人のプーシキンとスターリンが同率1位で愕然とした覚えがある。かなりひどいことをした人物人であるスターリンを強いロシアの象徴のように考えているのは怖いし、冷静な判断をどこか欠いてしまったところがあるのではないか。また、ロシア正教もプーチンに対する影響が強く、今回の侵攻も、ある意味で宗教戦争の一面も持っていると思う。

 からプーチンはおかしくなってしまったのではないかという説もあるが、私はそうだとは思わない。数年前、プーチンがテレビ番組のインタビューに”ロシアのない世界に何の意味があるのだ”と発言をしていたのを聞いてゾッとした覚えがある。金正日が“北朝鮮がない世界はない方がいい”と言った時にもゾッとしたが、北朝鮮はソ連が作った国なので考えが似ているのかもしれない」とも話していた。(ABEMA/『NewsBAR橋下』より)
 

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