将棋の渡辺明名人(棋王、38)が5月29日、岡山県倉敷市の「倉敷市芸文館」で行われた第80期名人戦七番勝負第5局で、挑戦者の斎藤慎太郎八段(29)を破ってタイトルを防衛、名人3連覇を達成した。対局後に行われた記者会見では、偉業を達成してもなお「自分の将棋は古い」と自己分析していることを明かし、さらなる探求心をのぞかせていた。会見の内容は以下の通り。
――今の心境をお聞かせください。
年明けからタイトル戦がずっと続いてきていたので、この名人戦が終わって一区切り。ホッとしている気持ちが強いです。9時間2日制の長丁場は名人戦だけの持ち時間なので、長い戦いだったなというところです。第5局を3勝1敗で迎えましたが、一つ落とすとすごく苦しくなってくるので、先後の兼ね合いもありますが、この5局目はそんなに余裕なく迎えていました。
――第5局の勝因はどこにありますか?
1日目から手が広い将棋でした。まずまず、大きく崩れずにまとめられたのが勝因なのかなと思っています。
――シリーズ全体を振り返り、防衛の理由はどこにありますか?
今季は序盤戦が自分のペースで戦える将棋が多かったので、それが去年との違いだったと思います。去年から取り組んできたことが出せたというのが勝因かなと思います。
去年の8月にパソコンを新しくして研究環境がガラッと変わった。それが一番大きいです。去年までの環境が全然ダメだった。それが分かったことで効率が良くなりました。より序盤戦でペースを取れるようになったことが顕著になったと思います。
――今期から休憩時間が変更になりましたが、実際に指してみての感想を教えてください。
去年はかなり煮詰まっていたところでの休憩だったので(夕食)休憩が昨年よりも1時間早くなったのは違いを感じました。本来、僕は(夕食)休憩いらない派なので。時間も短いので、がっつり休むわけではなく局面を考えていることが多かったです。
――今後の目標について教えてください。
タイトル戦に関しては名人戦で一区切り。名人戦の結果によって下半期のスケジュールが変わってくると思っていたので、少し休んでから考えていきたいです。
――今後にむけての手ごたえも感じていますか?
こればかりは自分のピークと、相対的に若い人がどれくらい出てくるかというところがあるので、第一線であとどれくらいやれるかはわかりません。自分の将棋のコンディションを保つようには取り組んでいきたいと思っています。
――来期のA級順位戦のゆくえをどう予想されますか?
当然、藤井さんが竜王を含む五冠を持っての登場なので注目を集めると思いますが「今から考えるのも」という気がします。今年は藤井さんがいるからといって、いつもと違った見方をすることはないと思います。
――現在の研究方法についてPC以外で、研究会の有無など変化はありましたか?
人と指すこともたまにあります。若い人と指すと自分の将棋の古さを感じる部分も多いので、どんどん若い人の将棋に寄せていくという作業は続けていくようにしています。ここ1、2年は、特に序盤の自分の感覚の古さを感じることが多いです。
――タイトル戦を終えて、これからやりたいことは何ですか?
野球観戦とかカーリング、サッカー観戦とかですかね。タイトル戦の最中、時間がなくて出来なかったことをやろうかなと思っています。
(ABEMA/将棋チャンネルより)