飯塚祐紀七段の癒し系ボイスが話題 「古くて新しい」雁木囲いを解説/将棋・ABEMAトーナメント
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 ベテラン棋士の癒し系ボイスが超早指し戦におけるオアシスとして話題を呼んだ。将棋界の団体戦「第5回ABEMAトーナメント」の予選Cリーグ第1試合、チーム広瀬とチーム豊島の対戦が5月28日に放送された。この日の解説を務めたのは飯塚祐紀七段(53)。トップ棋士たちが繰り広げる超スピードで難解な将棋を的確丁寧に解説した。耳に心地良い優しい声は「安らぎボイス」「落ち着くお声~」とファンに大好評だった。

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 予選Cリーグ第1試合第2局は、チーム広瀬・三枚堂達也七段(28)が先勝の勢いそのままに“連投”となった。まずは星を並べたいチーム豊島は、深浦康市九段(50)が立ち上がった。先手の深浦九段の囲いは「雁木」に。三枚堂七段も同じく、相雁木となった。深浦九段の雁木といえば、2021年10月31日に放送されたNHK杯将棋トーナメント対藤井聡太三冠(当時)戦。95手で藤井三冠を仕留め“地球代表”の名を世にとどろかせた。

 歩内銀に構えた深浦九段に対し、三枚堂七段は歩越し銀の形に。三枚堂七段の指し手がわずかに止まると、控室の広瀬章人八段(35)が「経験がないから考えちゃうよね」とフォローを入れる様子も見られた。解説の飯塚七段は、諸説ある中から「雁木は雪国において積雪下での通路を確保するための庇部分を指すもので、6七銀、5七銀の下に金が構えている姿が雁木を思わせるところからその名がついた」と紹介。「将棋の歴史から見ると初期から指されている形で、江戸時代前期に活躍した強豪・檜垣是安(ひがき・ぜあん)が指して広まった」と続けた。昭和後期から平成の後期まで下火となっていた戦型だが、2010年代後半から再評価され公式戦での採用率が急増。2017年の竜王戦七番勝負第2局で羽生善治棋聖(当時)が採用して勝利したことでも注目を集めた。聞き手を務めた甲斐智美女流五段(39)も「一時まったく見かけなかったのに不思議ですよね」と実感を込めたように、現在では主流戦法のひとつとして確立されている。

 一周回って新しい、そんな戦型を極めたのが深浦九段だ。飯塚七段も「攻防にバランスが良い。固めるというよりは盤面を大きく使った戦い方に特徴がある。古くて新しい、現在は一周回って新しい形です」と評価する。互いに厳しい攻めを繰り出し、三枚堂七段は得意の桂馬を躍動。一時は逆転かと思われたが、上部脱出を図った深浦玉を捕まえることができず、145手で深浦九段が勝利した。

 早指しかつ難解な将棋を、飯塚七段は将棋の歴史を交えて丁寧に解説。耳に心地よい優しい声も相まって、ファンからは「安らぎボイス」「勉強になります」「すごく落ち着くお声~」と多数のコメントが寄せられていた。

 ◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
ABEMA/将棋チャンネルより)

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