いかついのに優しい。俳優の玉木宏は、この相反する要素を映画『極主夫道 ザ・シネマ』(6月3日公開)で演じる元極道の専業主夫・龍に持ち込んだ。2018年に結婚し、今では一児のパパ。プライベートの充実が役柄に、そして仕事に活きているのは間違いなさそうだ。玉木自身も「心の余裕が生まれた気がします」と自認するところだが、劇中で子供たちを見つめる玉木の眼差しと表情を見れば、その言葉の意味もわかる気がする。

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 累計550万部突破のコメディコミックを原作にした連続ドラマの劇場版。結婚を機に極道の世界から足を洗い、一児の父として専業主夫業に邁進している龍(玉木)が、地上げ屋抗争、隠し子騒動、はたまた恋愛バチバチバトルに巻き込まれる。原作リスペクトを念頭にした玉木の鍛え抜かれた肉体美と、真剣なのに何故か滑稽に見える熱演が笑いの掛け算を生んでいる。

 「撮影に臨む気持ちはシリアス作品でもコメディ作品でも全く変わりません。特に本作では、結果としてコメディになったという意識でいました。それぞれのキャラクターたちは自分の思う真っ直ぐな道を生きているだけ。それが一般常識とは嚙み合わず、客観的に見たら面白いという構造。笑いを取りにいくのではなく真剣に。真っ直ぐ生きる龍を演じました」と真面目に向き合った。

 とはいえ「泣かせるよりも笑わせる方が難しい」とはよく知られた言葉。玉木自身も撮影中「これが結果として面白いものに見えているのだろうか?という不安が常にあった」という。その不安を払拭してくれたのは、監督の笑い声だった。「監督が誰よりも現場で大きな声で笑ってくれる方なので、その笑いが僕らにとってのバロメーターでした。客観的に見てくれている監督が笑っていればOKだろうと信じていました」と振り返る。

 緊張と緩和と振り切れたサプライズ。その三位一体によって笑いが沸点に達する。冒頭シーンのゴキブリ大騒動はまさにこの方程式をなぞっている。悲鳴を上げる美久(川口春奈)のもとに何事かと駆けつけたのは、なぜか上半身裸の龍。悲鳴の原因は一匹のゴキブリであることがわかるのだが、あろうことかそのゴキブリは龍の乳首に…。まさかの展開に爆笑必至だが、このシーン誕生には驚きの事実があった。

 「CGに変える前提で撮影現場ではおもちゃのゴキブリを付けました。最初はスタッフのみんなも気を使って『胸の上あたりで構いません』と言ってくれたけれど、それだと画的にも面白くない。それで僕が『乳首を噛まれていた方が面白くないですか?』と提案して、あのような形になりました」と明かす。

 当然の如く、乳首ゴキブリは初体験。しかし「24歳くらいのころに渋谷で待ち合わせをしていたら、急に腕のあたりが痒くなって。なにかゴソゴソするなと見てみたら、一匹のゴキブリが僕の腕を歩いていたという衝撃体験は経験済み。ゴキブリが体につくのは…かなり気持ちが悪いです」とまさかのゴキブリ秘話まで教えてくれた。

 玉木渾身の笑いのセンス同様に感じ入るのが、父親としての優しい眼差し。龍ファミリーに突然預けられた謎の子供・リュウ(渡辺雄大)の無邪気さに目を細める玉木の表情には、役を通り越した何かがある。「他人のお子さんを見て可愛いと思う感情は独身時代からありましたが、いざ自分が家庭を持って子供が生まれたりすると、自分の子供と接する実体験がある分、心境は違いますね」とすっかりパパの顔だ。

 子育ては親育てだとも言われるが「子育てに苦労はつきものですが『まあいいや』と思えることが増えてきたというか、感情が高ぶりそうになったときに自分の中でブレーキを掛けられるようになった。心の余裕のようなものが生まれた気がします」と自らの変化を実感している。

 子供のおかげで触れる世界が増えたことにも感謝。「例えば子供と一緒に公園に行って、ほかのお子さんを連れている親御さんたちと仲良くなったりして。仕事とは離れた場所で子供を持つ親として色々な方々と会話ができるのは、自分にとってのリラックス時間にもなっています。今はすごく心が落ち着いています」と柔和な表情を浮かべる。

 『のだめカンタービレ』『あさが来た』そして『極主夫道』と、自身の代表作を更新してく玉木。プライベートも充実して、まさに“最強主夫”ならぬ“最強俳優”か。「お仕事でいただく役もプライベートでの趣味や出来事も含めて、無駄になるものはないと思う。木の年輪のような積み重ねが存在感に繋がっていくと思うので、元気な先輩たちの背中を見ながら自分を磨いて精進を続ければ、きっとまた面白い役や作品に巡り合えると信じています」と声を弾ませている。

取材・テキスト:石井隼人、撮影:You Ishii

ヘアメイク: 渡部幸也(riLLa)、スタイリスト: 上野健太郎

『極主夫道 ザ・シネマ』 

 コワモテながら泣く子もダマる最強の主夫力であらゆる家事をこなし、ご近所トラブルを解決してきた元極道・龍が史上最大のピンチに直面!保育園を狙う極悪地上げ屋に対峙することになった龍の元に集まったのは、元レディース総長、ドスの効いた保育士などクセ強すぎな面々。チーム戦、隠し子騒動、龍を巡って勃発する恋愛バトル……すべてにケリをつけるため、龍は“ある決戦”を開幕する!ドラマ版に続いて玉木宏が龍を演じるほか、川口春奈、志尊淳竹中直人、稲森いずみ、滝藤賢一ら鉄板のレギュラーが総出演!さらに吉田鋼太郎松本まりか安達祐実らが演じる“濃いキャラ”たちが大渋滞。

 『極主夫道 ザ・シネマ』は全国公開中

ⓒ2022「極主夫道 ザ・シネマ」製作委員会
 

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