先月27日、東京都の小池知事は定例会見で、北朝鮮のミサイル攻撃があった場合を念頭に、都内の地下鉄の駅や地下道あわせて109箇所を緊急一時避難施設に指定したと明らかにした。
【映像】ほとんどが小中学校や福祉施設…都内の『緊急一時避難施設』(地図あり)※2:44ごろ
なぜ、このタイミングなのか。テレビ朝日社会部で都庁担当の油田隼武(ゆだ はやたけ)記者に詳しく話を聞いた。
まず、緊急一時避難施設について油田記者は「ミサイル攻撃などあった際に、おおむね1~2時間程度逃げられる場所で、爆風などの被害を軽減するために避難できる施設のことを指します」と説明。実際に都でも、堅牢なコンクリートの建造物や地下街、駅舎、地下道などが指定されているという。また、これらは国民保護法によって知事と政令市市長が指定するもので、指定されると内閣官房「国民保護ポータルサイト」上に施設名が出るようになる。
今回、東京都では地下鉄の駅や地下道あわせて109箇所が緊急一時避難施設に指定されたが、実はこれら以外にも以前よりすでに3355箇所が指定されている。実際に地図を見てみると、緊急一時避難施設のほとんどが社会福祉法人や小中学校だ。一方で地下施設は少なく、188箇所(新たに指定された109箇所を除く)だった。
避難できる地下施設が少ない理由について、油田記者はこう話す。
「都内に地下なんてたくさんあるだろうと思われるかもしれませんが、都内のほとんどの地下は民間企業が持っています。都に取材すると、簡単に『緊急一時避難施設の指定を受けます』とならないこともあり、管理者にすれば、例えば人が集まって来てぎゅうぎゅう詰めになったりして、窓が壊れたりしたら補償が受けられるかなど、保護法上義務がなくても、避難民がケガをしたらどうしたらいいのか、といった理由で指定を断ることもあるそうです。ただ都は『今は社会福祉法人や小中学校が多くても、いずれ民間施設にも(緊急一時避難施設に)指定させてほしい』が本音で、指定に前向きな都内のビルオーナーさんや、地下施設の管理者の方がいれば、ぜひ東京都の総合防災部へご連絡いただきたいそうです」
油田記者が取材した公安関係者によると「北朝鮮をめぐる状況はひっ迫感が増している」という。また、ロシアのウクライナ侵攻などもあり、首都キーウで人々が地下に避難する映像が流れたことで「都庁内の動きが加速したのでは」と油田記者は話す。
一方で、実際に北朝鮮がミサイルを打った場合、Jアラート(全国瞬時警報システム)から10分以内で日本に飛んでくるとみられている。どのような判断で緊急一時避難施設を目指すべきなのか。そもそも近くに地下鉄の駅がなかった場合はどうすればいいのか。油田記者は「避難するのは指定された場所に限る必要はない」と述べる。
「都に取材して『5分以内に行けるなら、家から外の避難施設に行った方がいいのか?』などと聞きましたが、これは『何とも言えない』という回答でした。先日、都は首都直下地震の被害想定をまとめましたが、着弾地点もどのようなミサイルかもわからない中で『地震よりも想定がしづらい』が本音のようです」
その上で、今回の緊急一時避難施設について油田記者は「都に指定されたからと言って『ほかの建物より必ず堅牢』ではありません。ですが、都がコンクリート造かどうかなどを調べ、一定の基準を必ず満たしている避難場所です。また、行政が計画を練る上でも、こうした避難施設の指定は意味があります。どの程度の猶予があるかわからない中、それでももし(ミサイルが)飛んで来たら避難をして、少しでも被害を減らす必要があります」とコメント。
また、緊急一時避難施設にすぐに逃げ込める状況ではない場合、油田記者は「内閣官房のホームページにある『弾道ミサイル落下時における避難の必要性について』のガイドラインが参考になる」と説明。同ホームページでは、近くに建物がないときなど、ケースに応じた避難方法が紹介されている。
「避難施設に逃げ込んだから確実に大丈夫というわけではないが『少しでも軽減できるように』という意味で一度、避難場所への地図を確認したり、緊急時にどのように避難したらいいのか考えてみてほしい」(油田記者)
(「ABEMA NEWS」より)