「体がもがれていくような」性暴力を受けPTSDに…被害女性が伝えたいこと「あなたは絶対悪くない」
女性の14人に1人が性暴力に...被害女性の思い
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 15年前、長崎市の幹部から性暴力を受け、さらに別の幹部にウソの情報を拡散されたとして女性記者が市を訴えた裁判。

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 5月30日、長崎地方裁判所は女性記者の訴えを認め、市に対し、約2千万円の損害賠償を支払うよう命じた。

「つらく苦しく、呼吸もできず、自分の足で立とうにも体に力がうまく入らなくて、倒れこむこともしばしばありました。何年もそんな状態が続きました。それでも、ゆっくりともに歩んでくださった方々がいたおかげで、今日の良き日を迎えることができました」

 事件は2007年、入社して数年だった女性記者に起きた。長崎の平和祈念式典をめぐる夜回り取材で、市の幹部から性暴力を振るわれたのだ。市が調査を始めると幹部は自殺。

 さらに今度は市の別の幹部が「(女性と加害者が)複数回、関係を持っていた」「自分も誘われた」などのウソの情報を広めたのだ。

「どんどん私の知っている事実と関係ない話が週刊誌、タブロイド紙、スポーツ紙にも、またインターネットにも出ていて、それが止められない状況になりました。いわれもない話がどんどん膨らんでいく、自分という存在がバラバラにそがれていく、体がもがれていくような、そういう感じがしました」

「体がもがれていくような」性暴力を受けPTSDに…被害女性が伝えたいこと「あなたは絶対悪くない」
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 こうした二次被害もあって、女性はPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症。長く苦しむことになる。長崎市に対して、謝罪をするよう何度も求めたが、性暴力を認めず謝罪もしなかったため、提訴に踏み切る。

「自分が記者であって、証拠も持っていて、何が起きたかも自覚していて、すぐには言葉にできなかったですが、それを整理して言葉にして、自分自身がその仕事を堂々とやっていけるようになるためには、避けるべきではないと」

 そして、判決は「女性が同意していなかったことを認識していたものと認められ、故意による違法行為」と下した。また、「長崎市の幹部が流したウワサ話が虚偽だったことについても認め、市には二次被害を防止するための義務があった」と指摘した。

 長崎市長は判決を受けて、「主張が認められた部分もあります。一方で、主張が認められなかった部分もありますので、これから判決文を十分に精査して対応を検討してまいります」とコメントを出した。事件から15年、女性はいまも取材記者としての仕事ができていない。

「これは報道業界の中で起きた事件とそれに対する裁判ですが、誰に起きてもおかしくない被害だと思います。どの業種の人も何歳の人であったとしても、被害にあわない、絶対大丈夫ということがない社会ですから。その中でいろいろな業種の方に、こういうことができるんだということをぜひ身近に感じていただきたいです」

 内閣府の調査によると、女性の約14人に1人は性的暴行などをうけた経験があるという。また、加害者との関係は、「全く知らない人」が11.2%。一方、「元交際相手」や「職場の関係者」など知人は68.8%にも上る。つまり、ほとんどが知人による犯行ということだ。

 このデータでもわかるように、性暴力の被害で苦しい思いをしている人たちは、たくさんいる。しかし、女性の6割、男性の7割はどこにも相談していないという。そんな被害者たちに、原告の女性は、こう伝えたいという。

「あなたは絶対悪くないということです。被害にあったあとに、周りから最初にかけられる言葉が、『あなたのほうがもっと気を付けていたらよかったんじゃないか』という類の言葉をかけられることが多いです。でも、暴力はあなたが誘発したものではないし、あなたが望んだ結果ではないのだから。そばに寄れる女性が1人2人増えていけば、それは力になる。この裁判の結果のニュースとともに、あなたにそのメッセージが届けばいいなと思っています」

(『ABEMAヒルズ』より)

【相談窓口】
性的暴行などで悩みを抱えている方は、匿名でのチャット相談が可能な「cure time」(月・水・土 午後5時~9時まで)や発信場所から最寄りのワンストップ支援センターにつながる「#8891」(年中無休24時間対応)などに相談を。

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