人気アニメ『ドラゴンボール』シリーズとして劇場版21作品目となる最新作『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』が、6月11日に待望の劇場公開を迎える。キービジュアルのど真ん中には孫悟飯と、その師匠でもあるピッコロが大きく描かれている。テレビアニメから33年に渡り演じ続けている古川登志夫にとっても、実に感慨深い。「やっとスポットが当たってうれしいです。ずっと家政婦のようでしたから(笑)」。ファンなら誰もが知る名キャラクターながら、永遠の脇役でもあったピッコロが、ついにセンターポジションに。古川はどんな思いで、この作品に携わったのか。
――最新作でついにピッコロがメインに据えられました。
古川登志夫 最新作というのは、常に最高の進化形なわけですよね。台本を見てもそう思いました。原作者の鳥山明先生が全面的に関わっていらっしゃる本だし、文句なしにこれが最新作で最高クオリティーだと思います。ピッコロに関しては、ビジュアルで解禁されていますけど、ちょっと変容していくところがありますね。それも今までなかったことです。悟空はもちろん、ベジータにしてもどんどんと進化していくじゃないですか。ピッコロはそれがなくて、今回が初です。そういう意味で、自分としてはうれしかったですね。ベジータは人気キャラでずいぶん活躍しているんだけど、今回はピッコロにスポットが当たったのはうれしかったです。やっとですね。ずっと家政婦のようで「本当にZ戦士なのか」と思っていましたから(笑)。特に悟飯とピッコロのエピソード、師弟関係というのは『ドラゴンボール』全体のお話の中でも非常に大きなファクター、インパクトのある話です。『ドラゴンボールZ 復活の「F」』の時も、ちょこっと戦ったんですけど、その時も大変うれしかったですが、今回は大変です。悟飯との共闘も見せ場です。
――今回、収録した際のエピソードがあればお願いします。
古川登志夫 今回僕がうれしかったのは、マコさん(野沢雅子)と一日中、朝から晩まで2人だけでできたことですね。コロナ禍だから収録も1人ずつというのが多いんでしょうけど、たぶん監督が「一緒に録った方がいい」と思われたんじゃないでしょうか。4本ぐらいマイクが入るスタジオの端と端、ソーシャルディスタンスを取りつつやりました。さっきも、インタビューの後にマコさんと2ショット写真を撮ったんですけど、これを昔の若い頃、この世界を目指した頃の自分に見せてやりたい、聞かせてやりたいですよ。マコさんは、それくらいの方ですから。2人だけで何時間も同じスタジオで仕事ができるのは、本当にうれしかったですね。
――野沢さんから影響を受けることはありますか。
古川登志夫 常々影響されています(笑)。同じ時空間を共有させていただけるだけで幸せです。学ぶことは全てです。背中を見て学び取って、です。自分を褒めてあげたいですね。「お前、よく頑張ったじゃないか」と。昔の自分からしたら、夢のまた夢ですよ。
――今から33年ほど前、アニメに初めてピッコロ(当時はマジュニア)が登場しました。
古川登志夫 僕のドラゴンボールが始まった時、音響監督さんから「今回は君が今までやってきた明るい、高い声じゃなくて、低い声を使ってほしい」と言われたんですよ。「もっと低く、もっと低く」と。そうしたらだんだん息声でしかないくらい、低くなってしまって。「これでしかできない」と言ったら「それでやろう」ということになりました。最初の頃はずっと欲求不満で(苦笑)。パーッと晴れないじゃないですか。そういう苦労した思い出はありますね。低くていい声の人がいるのに「なんで僕なんですか」と(笑)。低い声の人を使えばいいじゃないですかって感じでね。でも「高い声の人がやったらおもしろいんじゃないの?」っと言われて、「えーっ!」って言っていましたね。
――地声が高い人が低く出しているからこそ、異星人らしくなったんでしょうか。
古川登志夫 そういう狙いもあったかもしれないですよね。戦う時は出せるんだけど、普通のセリフはぼそぼそ言っているから欲求不満で(苦笑)。感情を乗せにくいもので。
――最後に世界的に評価される『ドラゴンボール』シリーズの魅力をお願いします。
古川登志夫 原作からしてそうですが、少年漫画の王道というか夢や冒険、友情、愛がいっぱい詰まっている作品です。国境も宗教も民族も全部乗り越えて、一足飛びに理解できちゃう、だから世界で人気になるのかなと思います。
(C)バード・スタジオ/集英社 (C)「2022 ドラゴンボール超」製作委員会