2代目「振り穴王子」の襲名式だ。将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」の予選Cリーグ第2試合、チーム山崎とチーム広瀬の対戦が6月4日に放送され、この第局で青嶋未来六段(27)が松尾歩八段(42)との相穴熊戦で快勝。振り飛車と穴熊、通称「振り穴」を巧みに使いこなしての快勝譜に、周囲の棋士から絶賛を浴びた。
青嶋六段は居飛車、振り飛車どちらも指しこなすオールラウンダーではあるが、三間飛車・四間飛車といった振り飛車を積極的に活用し、今回のABEMAトーナメントでも第1試合・チーム豊島との戦いでは個人3連勝を果たしていた。活躍ぶりに目を細めるリーダー広瀬章人八段(35)は振り飛車穴熊で初タイトルを獲得したことから、当時「振り穴王子」と呼ばれたが、後輩の「振り穴王子」っぷりには驚くばかりだ。
居飛車党の松尾八段も穴熊の名手で「松尾流穴熊」という独自の囲い方をするが、本局は松尾八段が居飛車穴熊、青嶋六段が三間飛車穴熊、しかもどちらも松尾流の穴熊を使う「相松尾」という珍しい出だしとなった。両者ともに得意の戦型ということもあり、がっぷりと組んでの戦いになると思われたが、鋭く切り込んだのは青嶋六段。自玉の安全度を保ちつつ、松尾陣の守り駒を1枚、また1枚と剥がしていくと、決めに行くポイントでは勢いよく大駒を切り飛ばす局面も。チームメイトの三枚堂達也七段(28)が「ひやー!かっこいい!」、相手チームのリーダー山崎隆之八段(41)も「うぉ!かっこいい!敵ながらかっこいいな」と絶賛した。さらに解説していた振り飛車党・杉本和陽五段(30)にいたっては「こういう勝ち方は中毒性が高くて、振り穴の病みつきになりそうですね」とまで語った。
136手で快勝を収めた青嶋六段は「序盤で間違えてしまって、苦しい形の飛車交換になりました。終盤は結構自分の得意な展開で、王様が堅いままでガリガリ迫っていきました」と振り返ったが、元祖・振り穴王子の広瀬八段からは「振り穴王子といえば青嶋さん」、杉本五段も「振り穴王子の後継者は青嶋さんという感じ」というコメントが相次ぎ、ファンからも賛成多数。この異名、今回の大会に限らず公式戦でも活躍があれば、そのまま「新・振り穴王子」として使われそうだ。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)