6月9日、10日の2日間にわたって開催される、UFCとの契約をかけたトーナメント『ROAD TO UFC』1回戦には、日本から4階級、7人の選手たちが出場する。その先陣を切るのはフェザー級の佐須啓祐だ。SASUKEのリングネームで修斗で活躍、世界タイトルも獲得したSASUKE。UFCとの契約をかけたトーナメントのオファーは、アメリカで聞いた。
「こんなタイミングでくるんだなと。しばらく試合がないということでアメリカで練習してたんですけど、そのキャンプ中に連絡がきて」
出場決定から試合までは1カ月半ほど。決して十分な時間とは言えないが、アメリカ修行中だったことがプラスに働いた。ひたすら練習漬けの生活を送っていたから「特に焦る必要もないかなと」。
UFCは常に憧れていた舞台。いつか自分もと考えていた。アメリカでUFCを見て、さらにその気持ちが強くなったという。アメリカでの練習では、たくさんのUFCファイターと手を合わせた。そこではさまざまな学びとともに、自分の強さへの手応えも掴むことができたそうだ。
「今まで自分が培ってきた技術を組み合わせれば、勝負できることもあるなと感じました」
たとえばそれは、柔道の足技だ。アメリカはレスリング大国。MMAのテイクダウンもレスリングが軸になっている。そういうところに、柔道の足技は効果的だった。
「僕は柔道では全然、成績残せなかった。インターハイすら出てないし高校まででやめちゃったんですけど。それでも僕の長所はそこ。うまくMMAにはめることができれば通用するなと」
6月に1回戦、準決勝は9月、12月が決勝。SASUKEにとっては、師匠である弘中邦佳(マスタージャパン代表)をセコンドとしてUFCに連れていくチャンスでもある。
「プロとしてお金はほしいです(笑)。でもファイターとしては闘ってお金をもらう、闘って評価されるというのがベスト。それが美学というか、哲学というと大げさですけど。知名度を上げる、YouTubeで収入を得るというのもいいと思うんですけど。弘中さんはUFCに出ていて、僕はそこに憧れた。僕もUFCに出て評価されて、そのことで生活していきたい」
師弟でのUFC出場というロマン。“強さ”で食っていくというまっすぐな思い。修斗の試合でも感じられた格闘技へのひたむきを、いよいよ世界にぶつける時が来た。
SASUKEと同じくフェザー級トーナメントに出場するのが松嶋こよみだ。修斗からパンクラス、さらにONEとキャリアアップ。ONEでも世界の強豪を相手に闘ってきたが、ずっと「目標はUFC」と言い続けてもいた。試合は久しぶり。ONEとの契約を更新せず、次のチャンスを待った。一度は「無理」と言われたというUFCへの道。だが30歳になる今年、ようやく夢への入り口に立つことに。
「前回の試合から1年以上。試合がなかった分、しっかり練習を積むことができました。ONEで闘ってきた経験も活かせると思います」
すでに“世界”を体感していることは、このトーナメントでも松嶋の強みになる。試合がない期間の練習は、相手の対策ではなく自身の全体的なレベルアップに費やすことができた。特に打撃の「破壊力や鋭さ」が上がった感触があるという。UFC参戦への思いの強さもある。
「年齢的にも、UFCへのチャンスはあと少し。そう思ってONEから離れる決断をしました。そのタイミングでチャンスがきた。もう自分のためのトーナメントじゃないかと思うくらい。ここで勝たずにいつ勝つんだという気持ちです」
普段は物静かな男が、今回ばかりは燃えていることを隠さない。1回戦で対戦するのは韓国の強豪ホン・ジョンヨン。簡単な相手ではないが、だからこそ「自分の力がしっかり出せる」と松嶋は言う。お互い勝ち上がれば準決勝で対戦するSASUKEについても、特に意識はしないそうだ。誰と何戦目で当たろうが、UFCと契約するためには優勝する必要がある。
「ここに“世界最強”の場がある。それがUFCで、僕はそこを目指して格闘技をやってきました。チャンスが少しでもあるならUFCを目指していきたいと。それが僕が格闘技をやる意味かなと思ってます」
人生をかけてのチャレンジ。経験を積み、機は熟した。SASUKEも松嶋も、あとはその力を爆発させるだけだ。