「コメント欄は責任追及がしやすい」「メディアは政治が悪用しないよう監視を」侮辱罪の厳罰化、期待と残る課題は?弁護士に聞く
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 13日、「侮辱罪」について「拘留または科料」としていた法定刑の上限を「1年以下の懲役・禁固、または30万円以下の罰金」に“厳罰化”した改正刑法が可決・成立した。

【映像】佐藤弁護士、深澤弁護士に聞く

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 2020年にネット上の誹謗中傷を受けたプロレスラー・木村花さんの自殺を機に改正論議が高まったものだが、花さんの母・響子氏と会見に参加したレイ法律事務所の佐藤大和弁護士は「一定程度の抑止力はあると思うが、実際のところ誹謗中傷対策としては不十分なところもある」と話す。

 ネット上のトラブルにも詳しい深澤諭史弁護士も「私も不十分だと思っている。罰則がどんなに重くなっても被害は回復しないし、罰金として取られたお金が被害者への賠償金に反映されるといった民事的な方向、また、加害者の特定がしやすくなるような改正をすべきだと思っている」とした。

 『ABEMA Prime』のゲストたちからも、様々な疑問点が出た。

■“批判”と“誹謗中傷”の境界線はどうなるのか

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 また、“何が誹謗中傷にあたるのか”という問題もある。「BlackDiamond」リーダーのあおちゃんぺが「批判と誹謗中傷の境目はどこにあるのか」と尋ねると、佐藤弁護士は「私が子どもたちに説明をする時には、“誹謗中傷”は相手の人格を非難・否定すること、虚偽の事実を言うこと。そして社会的評価を貶めること。逆にそうではないものは“批判”であって、問題ないと言っている。ここと一緒にしてしまい、批判なのに誹謗中傷だとしてしまうと、表現の自由が奪われてしまうことになる」とした上で、次のような見解を示した。

 「これは池袋暴走事故の被害者遺族・松永拓也さんも会見でおっしゃっていたことだが、ガイドラインを作っていくべきだと思う。皆さんも驚かれるかもしれないが、Aという裁判官は誹謗中傷と判断したが、Bという裁判官は批判と判断するケースもある。そのくらいグレーゾーンが広がっているので、これはダメで、これはセーフだという線引きをはっきり示す必要がある。また、名誉棄損罪と侮辱罪の違いだが、これは具体的な事実を適示すれば名誉毀損罪になっていくが、逆に抽象的だったり、事実を適示しないものは侮辱罪にカテゴライズされる。そして相手側が業務を妨害する意思を持っていれば、偽計業務妨害罪に問われる可能性もある」。

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 さらに深澤弁護士は「事実であっても成立する名誉毀損罪に対して、偽計業務妨害罪が成立するためには嘘や計略を用いて、他人の業務を妨害する危険を生じさせたということが必要になる。また、似たような罪で商品やサービスについて嘘を述べてビジネスの妨害をする信用毀損罪というのがあるが、ネットでは適用例が非常に少なく、基本的には民事訴訟で解決するか、ひどい場合は名誉毀損罪になると考えられる」とした。

 フリーアナウンサーの柴田阿弥は「世論がワッと動いたからといって規制を強化するのは慎重になった方がいいと思っている。例えばデモに参加して政治家の批判をしたら逮捕されるかもしれない、といった意見もある。そういう“空気”が出てくれば表現の自由が萎縮して、何も意見が言えなくなってしまう。運用上、そういうことは起こり得ないのだろうか」と懸念を示す。

 これに佐藤弁護士は「そもそも侮辱罪の立件数は非常に少ない。私も被害届、告訴状を何度も警察に持って行ったが、そう簡単には動いてくれない。そして侮辱罪の厳罰化によって権力者、政治家が悪用するのではないかという懸念だが、そこにメディアの力が必要になってくる。メディアがしっかりと監視することによって悪用させないことができるのではないか」と回答した。

■相手を最も追い詰められるのは、やはり「裁判」だ

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 一方、「誹謗中傷の開示請求、IPアドレス1件突き止めるのに6万、携帯会社に裁判を起こして本人を特定するのに50万、でも書き込みをした犯人から取れる金額は20万が相場。書かれた方が損するじゃん。法律ガバガバかよ」。そうツイートしていたあおちゃんぺは、「相手のことを晒したら、今度はこっちが訴えられることになると思う。何をするのが最も相手を懲らしめられる方法だろうか。やっぱり裁判だろうか」と問題提起。

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 佐藤弁護士は「こちらが晒してしまえば、逆に名誉毀損で訴えられてしまい、裁判が2年くらい続いてしまうことになる。基本的に“晒し行為”は泥沼にしかならないのでやめたほうが良い。しっかりと専門家を入れながら、SNSの運営会社に報告・削除依頼をしつつ刑事罰を問うていくのが一番いい。

 また、今年10月から制度改正されていくことになっているが、たしかに弁護士費用など、被害者側の負担は非常に大きい。相手方がお金を持っている方であれば示談の可能性もあるし、損害賠償を支払ってもらえる可能性もあるが、全員がそうとは限らない。やはり被害者側が“泣き寝入り”に近い形になることもあるだろう。そこは厳罰化もさることながら、インターネット上の誹謗中傷罪を作っていくことが大事だと思う」。

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 深澤弁護士は「弁護士をやっていると“本当に腹が立っているので、懲らしめたいのだが”とよく聞かれる。やはり最も懲らしめるのは裁判が一番だ。“この期日に法廷に出頭するよう”にという裁判所からの書類が家に届くとびっくりするし、その時点で責任追及されていると感じる。遠回りのようでいて、最も責任を強く追及できる方法だと思っていただければと思う。ただし、誤解されている方が非常に多いのは、裁判が公開だからといって、不用意に公にすることでトラブルになるケースがしばしばある。そこは気をつけていただきたい。

 また、弁護士が依頼を受けたくないと思うことはないと思う。ただ、賠償金をどれだけ取れるかによって"儲け"が決まってくるし、被害者にやる気はあっても負けてしまえばトラブルになると考えることはあるだろう。実際、悪口というだけではなかなか裁判所は認めてくれず、“うちの客は底辺ばかりだから、正直動物のエサでも食わせておけばいいや”みたいなことを書いたレストランの店長が勝ったというケースもある」と明かした。

■「実はコメント欄は責任追及がしやすい」

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 リディラバ代表の安部敏樹氏は「厳罰化によって総数は減るだろうが、最終的には差し押さえようとしてもお金がない、というような“無敵の人”対策の問題になっていくのではないか」と指摘する。

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 深澤弁護士は「私も“無敵の人”の相手をしたことがあるが、繰り返していれば最終的には捕まって社会から隔離されてしまうことになる。むしろ“微妙な投稿”をする人たちの方が厄介で、ここでは言えないような、放送禁止用語のようなことを書いても開示が認められないケースもある」。

 佐藤弁護士は「加害者の特定には時間がかかるが、投稿やアカウントの削除についてはそこまで時間がかからないので、どんどん申立をしていく。それによって力を奪っていくということだ。一方で、事業者もプロバイダーも協力的ではなく、弁護士が個人を特定し、裁判で名誉毀損だという判断まで持っていかないと、被害届や刑事告訴を受理してくれない。確かに改正プロバイダー責任制限法によって、発信者情報の開示手続きは従来の2分の1以下の労力でできるようになると言われているが、これは裁判所の運用が被害者寄りになるかどうかだと思う」。

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 eスポーツチームαD代表の石田拳智氏は「ABEMAのコメント欄もひどい。他の人が言っているから自分も大丈夫だ、という思考の人はかなり多いと思う」と苦言を呈する。

 深澤弁護士は「コメント欄は責任追及がしやすい。私も色々な場所で誹謗中傷されている人に対しては、“まずコメント欄から攻めよう”と提案している。書いてくれた人に感謝しなくてはいけない(笑)。今も書いている方は、ぜひお気をつけください」と呼びかけた。(『ABEMA Prime』より)

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